2025年11月20日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、中国の宇宙ステーション「天宮」で撮影された写真をめぐって「捏造(ねつぞう)疑惑」が持ち上がったとし、ファクトチェックの結果を紹介する記事を掲載した。

記事は、SNS上で近ごろ、中国の宇宙ステーション「天宮」で撮影された、テーブル上の静止した水入りコップの写真が拡散して注目を集めるとともに、「重力がほとんどない環境で水やコップが浮かないのは不自然」として写真の信ぴょう性に疑問を呈する声が相次いだと紹介。

ThreadsやX、Facebook、Instagramといった複数のSNSで「中国による捏造」に関する議論を巻き起こしたと伝えた。

その上で、ドイチェ・ヴェレが写真のファクトチェックを行ったところ「宇宙ステーションで水入りコップが静止しているのは合理的であり、捏造は見られない」という結論に達したと指摘するとともに、その根拠について解説している。

まず、今回拡散した写真は新しいものではなく、21年12月に中国が実施した「宇宙授業」ライブ配信中の1シーンだったと紹介。当時すでに「捏造ではないか」との疑問の声が出ており、香港ファクトチェック実験室や、上海報業グループ傘下の「明查」などのファクトチェック機関が「捏造はない」との結論を出していたと伝えた。

また、中国航天科技グループや、中国科協科学技術伝播センターなども22年6月に疑問への回答を行っており、コップがあらかじめテーブルに固定されていたこと、コップの水は表面張力の作用により飛散しないことなどを説明するとともに、宇宙飛行士がコップをテーブルに固定し、水が飛散しないよう器具を用いてコップに注ぐ「裏側映像」を公開して、疑惑を否定したことを紹介している。

さらに、ドイツ国内の専門家からも「捏造はない」との結論が出ているとし、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の広報担当者が「いかなる捏造の兆候も見当たらなかった」とコメントしたほか、ブレーメン大学「宇宙応用技術・微小重力研究センター」(ZARM)の研究者が微小重力下でも水がコップから飛散しない現象について詳しく解説したことを伝えた。

このほか、米国の専門家も水分子の「粘着作用」から写真で見られる現象の信ぴょう性を証明したほか、「中国の宇宙機関がこのような映像を偽造する動機はほとんどない」との見方を示していることを紹介した。(編集・翻訳/川尻)

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