2025年12月2日、中国のQ＆Aサイト・知乎に「『鬼滅の刃』から見る日中アニメ映画のビジネスモデル」と題したコラムが掲載された。
コラムは、「劇場版『鬼滅の刃』の爆発的なヒットの背景には、日本のアニメ界が数十年にわたり築き上げてきたアニメ産業の高度な商業化の蓄積がある。
そして、「日本のアニメ産業は『リスク分散と共同出資』の運営モデルを熟知している。『鬼滅の刃』の制作においては、漫画家・吾峠呼世晴氏と集英社が原作漫画を提供し、ソニーミュージック傘下のアニプレックスが鋭い感性で商業価値を確立した。そしてアニメ制作会社・ufotableの技術は語らずにはいられない。彼らは『特殊効果』や『デジタル作画』を駆使し、多彩な映像を何層にも重ねてることで、目を見張るような視覚効果と動画表現を生み出したのである」と述べた。
また、「特に主人公・竈門炭治郎（かまどたんじろう）の『ヒノカミ神楽』のカットにおける浮世絵の大波とCGのリアリティーが融合した表現は圧巻だ。これらの技術への愛情と研鑽によって観客は単なる華麗な戦闘画面だけでなく、登場人物たちと『心を通わせる』感情の温度を体感するのである。また、無限城編をテレビアニメの大ヒット中に公開したことで、人々の心を機微に『つかむ』という商業運営的戦略に成功した」と言及した。
一方で、「日本の長期的・体系的な体制とは異なり、中国アニメ映画の商業化は単発ヒット型の色合いが強いが、近年は急速に体系化へ向かっている。15年には、古典的題材と現代映像技術を融合した『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』が大きな話題となり、市場の信頼を一気に押し上げた。
さらに、「制作側は、広く知られる神話的キャラクターを単なる原作再現にとどめず、現代的な価値観を付与することで幅広い観客層の共感を獲得した。マーケティング面では、試写による口コミ形成とSNSによる大規模拡散を組み合わせ、ファン層を超えた全国的ヒットを実現した。また、中国の巨大な自メディア圏は、作品の知名度を急速に増幅し、シリーズ化や長期作品の運営を推進するエコシステムとして機能している。近年の『白蛇』シリーズや『新神榜』シリーズは、その象徴的な例である」とした。
コラムは、「日本のアニメ映画は初めから強大であったわけではない。その歴史は、各時代の潮流が少しずつ積み重なって現在に至ったものであり、その典型例がジブリ作品である。宮崎駿監督を中心とするジブリ作品は、監督固有の哲学と美学を色濃く持ち、日本アニメを芸術的高みへ押し上げた灯台のような存在であった。『千と千尋の神隠し』に代表されるように、ジブリの世界観は独創性と職人性に満ち、誰もが到達できる境地ではなかった」と言及した。
一方で、「『鬼滅の刃』は、ジブリが築いた高い技術水準と品質意識を、『ジャンプ系』の大衆的人気と巨大市場に有機的に結合させた。作品は映画的な技術と大規模作品運営の双方を兼ね備えたことで大きな成功を収めた。これは、日本のアニメ映画産業が芸術性と商業性を両立させる新たな『黄金の道』を見出したことを示している」と述べた。
その上で、「日本のアニメ映画が世界で受け入れられた理由は、文化を強引に輸出するのではなく、国内の文化素材を世界の舌に合う酒として『醸造』する高度な技術にある。NetflixやCrunchyroll などの国際配信プラットフォームは、現代の『黒船』ともいえる存在だが、その到来は衝撃ではなく機会であった。地理的障壁を打破し、コンテンツを直接届ける『デジタル海峡』を構築したのである。テレビアニメ『鬼滅の刃』はまず主流メディアで世界的なファンを獲得し、続いて劇場版を展開する戦略をとった。まさに『地方から都市を包囲する』ような世界戦略を実現したのだ」と論じた。
また、「同作が国際的に広く共感を得た理由は、大正時代の和風世界や鬼殺隊という特殊な設定の奥に、兄妹の絆、個人の成長、さらには敵側の悲しい過去といった、普遍的で人類共通のテーマが織り込まれている点にある。刀、和服、浮世絵といった日本的モチーフは異国情緒として機能しつつ、感情表現は国境や言語を超える普遍性を持つ。日本の制作者は、この『文化的個性』と『普遍的感情』を自然に橋渡しする術に長けているのである」と評した。
そして、「中国のアニメ映画は国際化の段階ではまだ発展途上であるが、独自の戦略を形成しつつある。基本的な方向性は『まず国内市場を深耕し、その後アジア文化圏を中心に拡大する』というもので、海外展開においても視覚的な魅力だけでなく、家族関係や自立といった東洋的テーマを中心に据えることで文化的理解を得やすくしている。さらに、中国アニメ『深海』に見られるように、水墨画風の意匠と三次元粒子表現を組み合わせた新しいビジュアル言語の創造は、中国アニメが国際市場と対話するための重要な試みである」と結んだ。（翻訳・編集/岩田）
