2025年12月6日、韓国メディア・京郷新聞は、韓国で「嫌中運動」が広まる中、済州島(チェジュ島)では「中国人なしでは経済が成り立たない」との声が相次いでいると報じた。

記事によると、近年、韓国本土では極右・保守系団体を中心に「チャイナ・アウト」などのスローガンを掲げる嫌中運動が拡大しているが、済州島(チェジュ島)ではそのような主張はほとんど見られないという。

理由は中国人観光客が地域経済を支える生命線になっているからだ。

記事は「済州市内の東門市場や繁華街であるヌウェマル通りでは、中国語の看板が並び、観光客向けの店の店員が日常的に中国語で応対している」とと伝えた。記事によると、昨年済州を訪れた外国人観光客の約7割以上が中国人で、今年も同様の割合が続いている。タクシー運転手やホテル関係者からは「嫌中どころか、むしろもっと来てほしいというのが本音」「最近中国人観光回復する流れの中で、地域経済全般に肯定的な効果を与えている。中国人観光客が経済に及ぼす影響は大きく、それを否定する人はいない」などの声が上がっているという。

記事は、嫌中運動で代表的に批判されている政策として、昨年9月末に施行された「中国人観光客のビザなし入国」があるとし、「済州島では02年から、ビザなし入国制度が施行されている。それにより、過去には中国資本による不動産投資の急増や、一部観光客によるマナー違反が社会問題化した時期もあった」とし、「デモは行われなかったが反対の声はかなり大きかった。しかし、これはビザなし入国制度施行による問題点が明らかになり、制度が改善する過程だったと島民は考えている」と伝えた。

また、「中国人を必要としているのは、観光の面だけではない。特に深刻なのが労働力不足で、農業や漁業の現場では中国人を含む外国人労働者なしでは作業が回らず、現場を支えているのは外国人労働者だという現実がある」と伝え、済州島の住民の「本土では簡単に『出て行け』と言うが、ここでは現実的に不可能だ。観光も農業も外国人なしでは成り立たない」との意見を紹介した。

さらに、専門家の「無秩序な受け入れではなく、治安や生活圏保護のための制度整備が必要だ」との見方を紹介した上で、「生活する空間に観光客が入ってくると、反発が起こる可能性はある。

その反発と嫌中感情が絡み合うと、嫌悪が合理化され、危険な方向に進むこともある。制度を施行する過程で発生した問題について、政府がきちんと取り組まなければならない」と指摘した。

これについて韓国のネットユーザーからは「韓国は中国人が来なくなると、誰が店を支えるのか考えた方がいい」「ソウルの人たちも嫌いと言いながら、結局はお金だけは求めている」「観光客が来なければ、まず地方の商店が潰れるだろう」「感情ではなく、現実を見て話すべきだ」「結局、経済と感情は別物ということか」「嫌中を煽っても、観光業は守ってくれない」などの声が上がった。

一方で、「土地より、金もうけが大事なのか」「中国人観光客に依存しすぎているのも問題だと思う」「済州島は韓国人に対して不親切だから韓国人観光客が減ったのに、改善するのではなく、次は外国人頼りか」「済州島でも中国人が嫌いな人は多い」「中国人が多いから余計に韓国人は行かなくなる」などの声も見られた。(翻訳・編集/樋口)

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