香港メディアの香港01は15日、中国で高齢者のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染率が上昇しているとし、その背景について報じた。
記事によると、中国の複数の省で高齢者のHIV感染率が持続的に上昇しており、そのリスクはもはや若者だけのものではなくなっている。
中国疾病予防管理センターの統計によると、60歳以上のHIV感染者数は2015年の1万7400人から22年には2万7000人に増加。新規感染者に占める割合は25.1%に上っている。深セン市疾病予防管理センターが発表したデータでは、同市の23年の感染者の中で最高齢は87歳、性的接触によって感染した割合は全体の99.6%だった。
感染した高齢者の多くは安価な性取引の常連客であり、HIVの隠れた感染源となっている。中国のある県の疾病予防管理センター職員の趙(ジャオ)さんによると、現地での闇性取引の料金は20~50元で、主な客は配偶者を亡くした、あるいは一人暮らしの高齢男性だという。こうしたケースはほかにもあり、広州市で感染が確認された79歳の男性も病院の聞き取りに対して地下性取引を行い、避妊具を使用しなかったことを認めたとのことだ。
15~22年に新たに報告された50歳以上のHIV感染者のうち、性的接触によるものが9割以上を占め、そのうち商業的な性行為が原因だったケースは44.8%に上るというデータもある。また、男性感染者数は女性のおよそ3倍に達しているという。懸念されるのは高齢者層の避妊具の使用率が10%未満にとどまっていることだといい、「避妊する目的ではないから避妊具は使用しなくていい」「年を取れば感染しない」といった誤った認識を抱く人が少なくないそうだ。
HIV感染とエイズの違いに対する理解も浸透していない。記事は「HIV感染は原因、エイズは結果」だとし、「HIVとはヒト免疫不全ウイルスを指し、HIV感染者とは、感染後まだエイズの段階に進行していない人々を指す。
記事によると、一部の高齢者は学歴が低く、知識不足のほかに羞恥心も重なり、病状の悪化を招いている。中には「死んでもこの恥はさらせない」と治療自体を拒否する人もいるという。深セン市第三人民病院の盧洪洲(ルー・ホンジョウ)院長は「高齢の感染者の多くが感染発覚後に病状を隠したり、自己判断で服薬量を減らした結果、症状を悪化させ、最終的に命の危険に陥るケースが少なくない」と指摘。「高齢者は免疫機能が低下しているため発症に至るスピードが若者よりも速く、糖尿病などの慢性疾患を併発した場合、死亡率はその他の感染者の2.3倍に達する」とも言及した。
広東省疾病予防管理センターの李艶(リー・イエン)副主任は「エイズ予防の啓発を高齢者層にまで広げ、避妊具の使用率を高めるべき」としたほか、無料検査の対象を拡大し、高齢者の健康診断にHIV検査項目を組み込むことも提案。「高齢者は性行為を必要としないという社会的偏見を取り払い、感染者に対して心理的支援と治療を受けやすい環境を提供すべき」と訴えた。(翻訳・編集/北田)











