中国科学技術大学精密・スマート化学全国重点実験室において、大規模言語モデルが科学研究における「スーパーサポーター」になり、AIロボットが「主力軍」になっている。自律的に実験プランを設計できるほか、24時間実験を続けることができるスマート科学研究インフラ「スマート科学者」が人工知能(AI)が科学研究パラダイム変革をリードする代表格の一つとなっている。

新華社が伝えた。

実験用作業台の前では、「スマート科学者」がロボットアームで試験管をしっかりとつかみ取り、液体サンプリング台、マグネチックスターラー、乾燥作業台を順番に回り、サンプルの重さを測り、かき混ぜ、遠心分離させ、乾燥させる作業を行っていた。

精密・スマート化学全国重点実験室の分散型実験室19カ所では、こうした「スマート科学者」110台が活躍している。こうしたロボットは、試薬の配置、サンプルの合成、性能特性評価といった一連の操作を正確に行った後、実験データをリアルタイムでスマートオペレーティングシステムに送信するなど、自律的に実験を行うことができる。

「スマート科学者」は24時間にわたり実験ができるほか、論文を読んだり、プランを考えたり、経験から学んだりすることもできる。

「スマート科学者」に「スマートブレイン」を構築するのは決して簡単なことではない。それは当初、科学研究チームが化学的問題を解決するために設計したのが始まりだった。2021年に誕生したロボット化学者「小来」には、2台のモバイルロボット、19のスマート化学ワークポイント、ハイスループットコンピューティングシステムが集約されており、精密操作を1日当たり2000回行うことができる。これは科学研究者5~6人の作業量に匹敵する。

火星で材料を調達して触媒を作り、酸素を生成するソリューションを研究開発するために、「小来」は関連する化学論文を5万本以上学習した。火星の隕石に含まれる複数の化学成分から考えられる配合の組み合わせは376万通り存在し、人間の科学研究チームが一つずつ検証すると、2000年以上必要となる。一方で「小来」であれば、「スマートブレイン」を活用することで、わずか6週間で最良の組み合わせを見つけることができた。

「AI+」が科学研究のイノベーションにエンパワーメントするという新たなアプローチが誕生したため、科学研究チームは、「小来」にロボットアームのほか、複数の生成タイプの大規模言語モデルを搭載した。そして、「ブレイン」と「アーム」を最適化した第二世代「ロボット化学者」が誕生し、「小臨」と命名された。

科学研究チームは現在、アップデート版の第三世代ロボット化学者の研究に取り組んでおり、さらに多くの分野の科学知識が「スマートブレイン」にレクチャーされ、「ロボット化学者」がさらにレベルアップし、さらに多くの学科や分野に精通した「スマート科学者」になると期待されている。

2024年、「スマート科学者」は、機械読解とロボットによる実験を通して、相変化断熱・防火材料を作り出した。これは新エネルギーの電池や消防服に応用され、耐熱性を備えている一方で、反対側の温度を安全な範囲に保ち続けることができる。この成果は今年の量産型テストや産業検証をクリアし、すでに産業において応用されるようになっている。

AIロボットが実験室の「主力軍」に―中国

また「スマート科学者」は、場所の限界を打破し、各分野のテクノロジーイノベーションを加速させている。「AICHEMクラウドプラットフォーム」を通して、各高等教育機関や科学研究院・所は、オンラインで「発注」し、実験室内の「スマート科学者」に実験を行ってもらうことができる。

実験室の朱濯纓(ジュウ・ジュオイン)特任教授によると、ロボットを通して、完全に独自の科学研究を行うことがチームの目標だ。ロボットは今後、文献を読むことで、全く新しい科学研究の方向を見つけ、人間がまだ足を踏み入れていない分野においてブレークスルーを実現する可能性もある。そして、化学を専門としているわけではない研究者でも、ロボットを活用して、「0」から新しい物質をクリエートできるようになるかもしれない。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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