人工知能(AI)動画生成技術はこの1年で、「動くかどうか」から「どれだけ本物らしく動くか」へと大きく進化しました。しかし2025年後半、業界が直面しているのは、より根源的な課題です。

物語を「続けられるかどうか」という点です。

SoraやPika、Runwayなどが高精度な単一ショット生成を披露する一方、市場では、真の壁は画質ではなく連続性にあるとの認識が広がっています。10話、20話と物語が進む中で、登場人物が同一人物として保たれているか、世界観が崩れていないか―。短編ドラマやアニメ、ブランドのシリーズ広告など、連続性を前提とするコンテンツでは、人物の一貫性、素材の再利用性、制作フローの連動性が、AI動画が実証段階を越えて商業化できるかを左右します。

こうした背景から、ツールプラットフォームの役割も変化しています。単なるモデル性能の展示ではなく、コンテンツ制作の基盤構築へと軸足が移りつつあります。AI動画の競争は「生成能力」から「持続的に創作できる能力」へと移行しているのです。

商湯科技(センスタイム)のAI動画ツール「Seko」を率いる王子彬氏は、「短編を数本作るだけでは収益性が低い」と語り、長編・シリーズ制作への転換が不可欠だと指摘します。投資回収を可能にするには、人物の一貫性や感情の積み重ね、世界観の連続性が基盤になるという考えです。

同社は2025年7月にSekoを投入し、最新版では単話生成から複数話制作へと重点を移しました。すでに20万人超のクリエーターが参加し、短編ドラマスタジオによる利用も進んでいます。自社モデルと外部モデルを統合管理する仕組みにより、複数話にまたがる一貫性を担保できる点が特徴です。

制作の現場では「AIで骨格を作り、細部は人が補う」ハイブリッド型が主流になりつつあります。推論コストも約5割削減され、導入障壁は下がっています。一方で、著作権やIP保護といった課題は残ります。それでも王氏は「技術の目的は創造力の解放にある」とし、AI動画が実用段階へ進み始めた現状に手応えを示しています。(提供/CRI)

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