2025年12月18日、韓国メディア・朝鮮日報は、韓国政府が造船業における外国人労働者向けビザ枠の廃止を検討していることを受け、現場の造船業界から強い懸念の声が上がっていると報じた。

記事によると、韓国雇用労働部は19日に外国人材政策審議委員会を開き、「E-9(非専門就業)造船業専用クオータ」の存続可否を議論する予定だ。

この制度は、深刻な人手不足に陥った造船業界を支えるための一時的な措置として23年に導入され、現在、造船業界の外国人労働者の約80%が本制度を通して採用されているという。

記事は「現在、韓国の主要造船所では外国人労働者の存在が不可欠となっている」と指摘し、「造船の作業現場では、タイや東南アジア出身の労働者が溶接や塗装などの高強度作業を担っており、翻訳アプリを使って意思疎通を図る光景も珍しくない」と伝えた。韓国の造船業界における外国人労働者の割合は21年の5%から24年には18%へと急増しているという。

その上で、「政府はすでに人員は一定水準まで確保されており、今年のビザ枠消化率も低いとして、専用クオータを継続する必要性は薄れているとの立場を示した。また、労働組合や一部地方自治体も『外国人労働者の増加が韓国人雇用や賃金改善を阻害している』『地域経済への波及効果が乏しい』として廃止を訴えている」と説明した。

一方で、「業界の見方は異なる」として、関係者の「依然として人材不足」「外国人労働者がいなければ、膨大な受注を消化できない」との声を紹介。「韓国造船業界の受注残高は約135兆ウォン(約14兆2500万円)に達し、28年までの建造物量がすでに確保されている。これは特に韓国人が敬遠する3D(きつい・汚い・危険)作業を外国人労働者が担ってきたことで、産業全体が回復基調に乗ったとの認識が強い」との見方を示した。さらに、「業界は専用クオータが廃止されれば、外国人労働者が一般製造業へ流出する可能性が高いと警戒している」と伝えた。

そして、「来年は労働集約度の高いコンテナ船の建造が増える見通しで、人手不足の影響は一層深刻化すると予想されている。米韓造船協力プロジェクトを背景に掲げられる『K-造船ルネサンス』も、外国人労働者なしでは実現困難だとの声が強まっている」と結んだ。

このニュースに韓国のネットユーザーからは、「現場を実際に支えてきたのは外国人労働者。

彼らなしで造船業は回らない」「若者が来ない仕事を誰がやるのか、現実を見ていない政策だ」「受注残が山ほどあるのに、人を減らしたら結局海外に仕事が流れるだけ」「外国人がいなかったら韓国の造船の復活はなかった」「安全で待遇のいい環境を作りつつ、外国人と共存するしかない」「現場を知らない人間が机上で決めている」といった声が見られた。

一方で、「安い外国人労働力に頼るから、賃金も環境も改善されない」「韓国人の雇用を守るのが先ではないか」「外国人が増えても地域経済は潤っていない」「送金ばかりで地元での消費がないのは事実」「いくら仕事がきつくても、給料が高ければ働き手は集まる。外国人を入れてまで、給料を上げたくないのはやはり業界構造の問題」などの指摘の声もあった。(翻訳・編集/樋口)

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