2025年12月21日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、ドイツ政府の計画する電気自動車(EV)購入補助金が、図らずも中国メーカーに利する可能性があると専門家が懸念していることを報じた。

記事は、ドイツ政府が10月に来年からの実施を目指す新たなEV補助金案を発表したと紹介。

総額30億ユーロ(約5500億円)の補助金を投じることで低迷するEV販売を強力に後押しする方針で、デロイトの試算によると、この政策によってドイツ国内で年間最大18万台のEV需要が新たに創出され、2030年までに計75万台の販売増が見込まれると伝えた。

一方で、デロイトの自動車産業エキスパート、ハラルド・プロフ氏が「欧州独自のEV生産能力は現在の予測される成長を完全にカバーするには至っていない」と分析し、補助金の対象に製造地域の制限を設けるなどしない限り、ドイツ国民の税金を源泉とする巨額な購入補助金の多くが、中国からの輸入車を助成するために使われてしまうリスクがあると指摘したことを紹介した。

その上で、補助金案についてドイツ政府が社会的な公平性を保つための所得制限を盛り込む一方で、プロフ氏らが必要と認識している「域内製造制限」については現段階で草案に盛り込まれていないと伝えた。

記事は、中国のEVメーカーが現在、国内での過剰生産による在庫を抱え、輸出拡大による収益改善を急いでいると紹介。一方で、デジタル化への対応やコスト増に苦しむドイツの伝統的な自動車メーカーは、政府によるEV購入補助金が中国車に「参入障壁」を設置するのではなく、「レッドカーペット」を敷くことになるのではないかという危機感を強めているとし、今後ドイツ政府が消費の活性化と国内産業の防衛というジレンマの間で慎重な調整を図る必要性があることを示唆した。(編集・翻訳/川尻)

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