2025年12月22日、韓国メディア・ヘラルド経済は、高額報酬をうたう東南アジアの求人広告に応じた韓国の若者たちが、現地で犯罪組織に拘束され、電話詐欺などの加害者へと変貌している実態と、その処罰をめぐる法的論争について報じた。
記事によると、韓国の若者が「高収入」を餌に東南アジアへ誘い出された後、現地で監禁や拷問を受ける事案が多発していることを受け、韓国政府は現地警察と協力した救助活動を進めているが、救出後の法的扱いをめぐって論争が起きているという。
韓国の国会立法調査処が発表した報告書「ボイスフィッシング犯罪のスキャム・コンパウンドへの進化」では、これら組織の構成員の多くが「加害者でありながら被害者」という二重の立場にあると指摘された。「スキャム・コンパウンド」とは、外部から遮断された環境で企業型の運営を行う、ボイスフィッシングなどの超国家的な犯罪組織の拠点を指す。
記事では典型的な事例として、SNS(テレグラムなど)を通じて紹介された高額バイトに応募したAさんのケース紹介。Aさんは「未経験でも月収1000万ウォン(約105万円)稼げる」などと謳うアルバイトに応募。現地到着後、パスポートを没収された上で監禁され、劣悪な環境下で犯罪行為に従事することを強要された。こうした場合、Aさんを「犯罪に加担した加害者」と見なすべきか、あるいは「人身売買の被害者」とすべきかの判断は困難になるという。
記事は、「現在、韓国国内ではこうした『自発的に入国した後に犯罪を強要された者』への処罰の是非について、議論が白熱している」とし、まず、「厳罰に処すべき」とする意見に言及。「韓国における電話詐欺の被害規模は天文学的な数字に達しており、国会の資料によれば、今年の被害額(10月まで)はすでに1兆566億ウォン(約1110億円)を記録している。また、SNS上の募集要項から『違法な仕事』であることを認識しながら入国した例も多いことから、徹底的に罰するべきとの声は根強い」と伝えた。
一方で、慎重派からは「脅迫や監禁、パスポートの押収といった状況を考慮せずに一律に処罰すれば、法的な救済の道が断たれ、犯罪組織から脱出する意欲を削ぐことになりかねない」との見方が出ていると指摘した。
記事は最後に、「超国家的な組織犯罪に対抗するためには国内の法整備が不可欠」とし、「加害者であり、被害者であるという立場の人の不法性をどのように判断すべきか、捜査現場におけるガイドライン作りや立法が急務である」と強調した。
このニュースについて、韓国のネットユーザーからは「『未経験で月収1000万ウォン(約105万円)』なんて仕事、まともなわけがない」「だまされる方も自業自得だ」「刺青だらけの若者が助け出される姿を見ると、純粋な被害者だとは思えない」「うまい話には裏があるのは、昔から当たり前」「今になって行く人は、自分でもある程度分かって行っているのだろう。
一方で、 「最初は欲に目がくらんで行ったとしても、実際に監禁・暴行があったのなら、その部分は考慮されるべきではないか」「どんな事件でも、犯行に至った経緯は考慮される。こういうケースでも同じように、被害者の面もあるなら、ある程度は減刑されても自然では」「韓国人が多く関わっていることで、電話詐欺も巧妙になり、被害も拡大している。救助策を設けることで、韓国人の関与を一人でも減らせるならその方が良い」「こういう『闇バイト』の恐ろしさを若者に周知し、出国を未然に防ぐ仕組みが必要だ」などの声も見られた。(翻訳・編集/樋口)











