「大好きだよ、私ちゃん、また明日」というフレーズが中国のインターネット上で大流行しており、「史上最高」のフレーズ、「インターネット上で最も偉大」なフレーズ、「今年最も心温まる」フレーズとさえ言われている。

これはあるゲームのキャラクターのせりふ「愛你老媽、明天見(大好きだよ、お袋、また明日)」をもじったもの。

「老媽(お袋)」の「老」を残して、方言で自分のことを表す「老己」に変え、「愛你老己(大好きだよ、私ちゃん)」にアレンジした。このフレーズはインターネット上の話題をさらい、上海市青少年研究センターが最近発表した「2025年度青年流行語トップ10」にも選出された。若者は昇進が決まったといううれしい知らせをネットでシェアする時に「大好きだよ、私ちゃん」と付け加えたり、ミルクティーが2杯以上でないと配達してもらえない時に「1杯は『私ちゃん』の分、もう1杯は私の分」と言い訳して2杯注文したり、大学院の受験に失敗した時に「大丈夫、それでも大好きだよ、私ちゃん」と自分を慰めたりしている。「ちょっと理解できない」と感じる人もいるかもしれないが、その背後には若者が自分の満足感や幸福感、「自己受容」を追求していることがうかがえる。

生活のリズムがどんどん速くなっている今の時代において、人々は仕事や勉強、生活上のストレスを抱えるようになっており、重要業績評価指標(KPI)や締め切りなどに振り回されている。そんな中、突然大流行した「大好きだよ、私ちゃん」というフレーズは、自分のことを上からじっと見つめている「もう一人の自分」との関係を、自分と同じ目線で横にいてくれる友達のような関係に変えてくれ、「もう一人の自分と折り合いをつける」ことで、その関係を感情のはけ口とし、ある程度ストレス解消につなげることができる。また、「また明日」という言葉はポジティブな感情の表現で、思わず口角が上がって笑顔になるフレーズだ。

「『私ちゃん』は、手元に100元(約2200円)あったらそれを本当に全て私のために使ってくれる唯一の人」だ。これまでずっと言われてきた「自分に優しく」や「自分を愛する」といったフレーズは、正論でありながら空論でもあった。そうした方がいいことは分かってはいても、どうすれば良いのか分からなかったり、そんなことができるのは何か成果を上げた時だけだと感じていたりする人も少なくないだろう。「大好きだよ、私ちゃん」というフレーズは、そんな状況を打ち破ってくれる。「自分を愛する」という抽象的な概念であり達成できそうもない道徳的目標を、ハードルが非常に低く、待つ必要もなく、いつでも実行できる「プチ実践」へと変えてくれるのだ。

「他の人に認められたい」から、「自分の本音にやさしくする」へと舵を切る。これが若者のメンタルに起こった大きな変化だ。これまで多くの人は他人の評価を気にして、社会的な「成功」の基準に沿って奮闘してきたが、「自分の気持ち」は大切にしてこなかった。しかし、「大好きだよ、私ちゃん」というフレーズのおかげで、多くの人が「折り合いをつける」ことができるようになり、意味もなく忙しなくするのはやめて、快適なリズムの生活を送れるようになっている。こうした変化は、ネガティブな「寝そべり現象」では決してなく、「自分に寄り添い、自分を認めてあげることこそが、人生において最も強い支えとなる」ことをはっきり認識したということだ。自分を励ます言葉を投げかけたり、心身をリラックスさせたり、自分の気持ちを大切にしたりすることは、どれも「自分を愛する」行動だ。ネット上の流行語はそのうち過去のものになってしまうが、「大好きだよ、私ちゃん」というフレーズに込められた「自分を大切にする」精神は、ずっと忘れずに心に留めておく価値がある。長い人生において、自分を大切にし、誠意をもって自分に寄り添うことができれば、複雑なこの世界の中でも心のやすらぎを得ることができるはずだ。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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