中国は2026年末まで30日以内のビザ免除を45カ国以上に拡大し、「入ってから好きになってもらう」戦略を加速させた。一方、日本は26年度にビザ発給手数料を最大5倍に引き上げる。

1978年以来据え置かれた手数料の見直しだが、年間4000万人目前のインバウンド需要がピークを迎える中での値上げは、地域経済と旅行者の行動にどう作用するのか。

仮にストックホルムの若者が「春は京都、秋は上海」と旅程を考えたとしよう。この時、最初に検索するのは航空券ではなく入国条件だ。そこに表示されるのが「無料」か「1万5000円」かで、旅のルートは変わってくる。

日本政府は25年12月26日、26年度予算案で外国人向けビザ発給手数料を現行の約5倍に引き上げる方針を閣議決定した。1回入国は1万5000円、数次は3万円が軸となる。現行手数料は約3000円で、1978年から据え置かれていた。政府は「物価上昇によるコスト増」「虚偽や不備申請の抑制」を背景に挙げる。

対照的に、中国は日本を含む45カ国以上に対する一方的ビザ免除(30日以内)を26年末まで延長した。対象国には欧州広域、ブラジルやアルゼンチンなど中南米、サウジアラビアや湾岸諸国も並ぶ。25年11月にはスウェーデンも追加された。

ここで効いてくるのは「無料で入って、気に入ったら次も来てね」というサンプル設計だ。

中国国家移民管理局によると、25年1~9月の外国人出入国延べ回数は2013万4000回(前年同期比22.3%増)、うちビザ免除での入国は724万6000回(同48.3%増)で、外国人入国全体の72.2%を占めた。1~8月ではビザ免除入国が延べ1589万人(前年同期比52.1%増)に達していた。

もちろん、日本側にも事情がある。訪日需要は強い。日本政府観光局(JNTO)の推計では、25年11月の訪日外客数は351万8000人、1~11月累計は3906万5600人で過去最高を更新した。年間4000万人到達が視野に入る。

主要観光地の混雑や住環境への負荷の問題が顕著になることによって、当初掲げた「おもてなし」のスローガンが薄まってきた今、行政が何らかの「調整弁」を探すのは理解にたやすい。政府はオーバーツーリズム対策の一環として、出国税を26年7月に1000円から3000円に引き上げる方針だ。

ただし、ビザ手数料もそうだが、これらの措置は混雑する都市と空席の地方を画一的に扱う道具だ。渋滞税のように場所と時間に応じて設計されるものではない。従って「混雑の外側」にいる地域は値上げの副作用を先に食らうことになる。

旅行者が嫌うのは金額そのものより「不確実さ」と「手間」だ。

中国はビザ免除で摩擦を消し、日本は手数料値上げで摩擦を増やす。結果、ビジネス出張のように必然性が強い需要には影響はないものの、週末旅行や学生旅行のような気まぐれ要素を含んだ、いわば「気分需要」は目減りしていく可能性がある。本来、地域経済に必要なのは後者であることが多いのだが。

ビザを単なる値上げ装置にせず、混雑地域の分散、地方誘客、審査の迅速化とのセットで旅行者に「払ってもらう理由」を作っていく方法はないだろうかと思う。手続き料金の引き上げで旅行者を選別しようとしても、同時に「手続き体験」を滑らかにしていかないと、善良な旅行者が残ってくれるとは限らない。

ビザは国境の値札と見なしてきたものの、実は旅行という行動をデザインするユーザーインターフェイス(UI)といっていいかもしれない。中国はUIを簡素化して「入ってから好きになってもらう」方向に賭け、日本はUIの料金を上げて「来る人を選ぶ」方向に傾く。

いずれのアプローチが正しいかは、稼ぎたいのが「人数」なのか「質」なのか、そしてその指標をどこまで言語化できるかで決まる。2026年、旅行者は財布と地図を前に、日本と中国どちらの門をたたくだろうか。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

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