SNSへの投稿によると、江蘇省蘇州市内で開催されたアニメ、漫画、ゲーム関連のファン参加型イベントで、中国で「かつての日本軍国主義を肯定する」と見なされた作品の登場人物に扮した参加者が、暴行を受けた。

ハンドルネームで「李先生はあなたの先生ではない」と名乗るユーザーがSNSのXへの投稿で、江蘇省蘇州市内で1日に開催された「Good Jump(グッド・ジャンプ)ACG新春年会」と名付けられたイベントでトラブルが発生したと紹介した。投稿によると、「僕のヒーローアカデミア」のキャラクターのコスプレをした男性が、会場に現れた直後に警備員数人に取り囲まれ、ウィッグと上着を脱がされた。すると男性は、紅軍(革命期の中国共産党の軍)の帽子をかぶり、周囲の人に向かって軍隊式の敬礼をした。これに激怒した別の来場者の一人が、この男性に駆け寄って地面に突き飛ばすなどの暴行を加えた。

日本で漫画として発表されアニメ化もされた「僕のヒーローアカデミア」が中国で問題視され主たる理由は、同作品の登場人物で、人体実験を繰り返す医師の名が「志賀丸太(しが・まるた)」だったことによる。「Good Jump ACG新春年会」で暴行を受けた男性は、この登場人物に扮していた。

中国では赤痢菌のことを「志賀菌」と呼ぶ。この呼称は、赤痢菌のラテン語学名が、発見者である日本人細菌学研究者の志賀潔氏の名を用いたShigella(シゲッラ)であることにちなむ。また、「丸太」は、日中戦争で細菌戦にもかかわり赤痢菌を使った人体実験も行った関東軍の731部隊で、実験の対象にした人を「マルタ」と呼んだことによるもので、「志賀丸太」は日本軍国主義を肯定して、犠牲者を侮辱する命名と見なされた。

「僕のヒーローアカデミア」の連載誌である少年ジャンプの2020年2月3日発売号で、次回からの予告が掲載されると、韓国人読者が新たな登場人物の「志賀丸太」の名に問題があるとする抗議を発表した。すると、中国大陸部のメディアも同件を報道した。中国の漫画掲載サイトや動画投稿サイトは「僕のヒーローアカデミア」の関連内容を閲覧できないようにした。

なお、同作品の作者である堀越耕平氏は少年ジャンプ発行元の集英社と共に、「志賀丸太」の「丸太」は、この人物が「丸々と太っている」ことに由来し、「志賀」は、作品中で別の主要な敵役である「死柄木(しがらき)」に関連付けたものと説明し、「過去の史実と重ね合わせる意図はなかった」と弁明した。なお、「志賀丸太」の名は、「殻木球大(がらき・きゅうだい)」に変更された。

「Good Jump ACG新春年会」で発生したトラブルで、「志賀丸太/殻木球大」のコスプレをしていた男性は、警備員によって会場から退去させられた。その後、警備員が再び男性を連行しようとしたが、男性は逃げたという。

中国共産党が運営する高級幹部を育成する中央党校の機関紙である学習時報は2日付第2面に「文芸やスポーツ分野における日本軍国主義の浸透を警戒せよ」と題する論説を発表した。同論説は、日本の芸能人やスポーツ選手の実名を挙げてそれぞれの「問題行為」を紹介し、さらに「これらの行為は、決して孤立した事例ではなく、日本の極右勢力が文化やスポーツ活動を組織的に利用して世論を操作し、侵略の歴史を美化しようとする具体的な兆候だ」と主張した。(翻訳・編集/如月隼人)

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