中国大手の検索・情報サイトの百度に、最近になり「欧州から消えた中国の団体ツアー」と題された文章が掲載された。筆名は「旅界風雲」で、既成のメディアとは別に、個人あるいはグループが活動する、いわゆる「セルフメディア」としての記事発表だ。

中国ではセルフメディアが発信した専門的な情報が、その分野に関心を持つ人に注目されることがしばしばある。以下は、投稿された文章の主要部分を再構成したものだ。

観光地から姿を消した団体旅行の「たなびく小旗」

私はフランスで休暇を過ごしていて、非常に興味深いことに気づいた。中国人の姿は少なくない。しかし、パリのノートルダム大聖堂、エッフェル塔、ルーブル美術館、ムーラン・ルージュといった場所から、中国からのツアー一行が掲げる「小旗」が完全に姿を消したのだ。

4、5年前であれば、欧州の主要な観光スポットでは、風にたなびく色とりどりの小さな旗が、中国人観光客の所在を示す座標軸だった。ガイドが先頭を歩き、拡音器によるしゃがれ声の指示が飛ぶ。同じ日除け帽子を被り、足早に歩く数十人の中国人が続く。しかし今、その極めて特徴的だった風景は消え失せてしまった。

欧州で消えた中国からの団体ツアー、その理由と副産物の「仁義なき戦い」

私はしばらく前に、ルーブル美術館で若い男女のカップルに出会った。新婚旅行中とのことだった。二人の手には分厚い紙のガイドブックはなかった。そして事前に計画を練り上げたような落ち着きが漂っていた。

私は、「初めての欧州で、ツアーには参加しなかったのですか」と尋ねてみた。

ネットの浸透が「団体旅行離れ」を後押し

男性は笑ってスマートフォンを振り、事前にSNSの小紅書(RED)で見つけた「行程管理型」のパッケージ・オーダーメイド・モデルを利用したと教えてくれた。ビザ申請に始まり、ホテル、航空券、観光スポット、入場券、ルート攻略まで、すべて背後で誰かが手配してくれる。料金は普通のツアーより高いが、男性は「許容範囲内です」と言った。

女性は「ルーブル美術館のような人気チケットも、全部事前に確保してくれました。毎晩、翌日の詳細な行程表が届くんです。何をすべきか、何に注意すべきか、どの角を曲がるべきかまで細かく書かれています」と説明した。こういったサービスは、旅慣れない人の「情報格差による不安」を解消してくれるわけだ。

団体旅行では、旅行会社が事前に航空券、ホテル、レストランを大量に一括購入することで、旅行商品の価格を引き下げる。このモデルは情報が乏しかった時代に、「きちんと旅ができるかどうか」の、旅行者にとってのいわば「生存問題」を解決した。そのため多くの人が利用した。しかし今日の海外旅行市場で利用者が求めているのは「質の高い体験」だ。

しかも、高等教育を受け、デジタル生活に慣れた今の若者にとって、団体ツアーは受け入れられない欠陥を持つ商品だ。

毎日早朝から深夜まで連れ回される。ガイドは拡音器を手に、まるで生徒を管理するように行動の1分1秒を管理する。旅程には「高級中華料理の食事」が組み込まれていることが多いが、中華レストランに行くのに往復2時間を費やしたりする。夜にホテルに戻れば疲労感があるだけで、旅先の情緒を堪能した満足感はない。

旅は精密に計算された「搬送工程」と化し、あらゆるプロセスは「見た、来た、撮った」という目標を疲れ果てながら完遂するためだけのものになる。若者は「旅の流れ作業の部品」になることを拒むようになった。そのため、個別の顧客のためにカスタマイズされた、海外旅行商品の人気が出た。

新たな旅行商品は、技術と専門的な分業によって、本来ならば煩雑なビザ申請、チケット確保、ルート計画を、顧客のために代行する。利用者は一定料金を支払うことで、一定の質が担保された自由を手に入れる。以前は、手間を省くためにはツアーに参加するしかなかったが、今では、ツールとプラットフォームを使いこなせさえすれば、自分だけの「旅のライフ」を享受できる。

私は、中国国内で観光客を海外に送り出す旅行会社は「冬の時代」を迎えると思う。集客や組織化という「仕事の中核部分」が、あらゆる部分で代替されているからだ。

対照的に、旅先現地の手配会社は決して取って代わられることがない。
欧州で消えた中国からの団体ツアー、その理由と副産物の「仁義なき戦い」

現地の中国系旅行業者間に「仁義なき戦い」が発生

ルーブル美術館のチケットを確保する人間は必要だし、セーヌ川沿いを走るメルセデス・ベンツを運転する人間も必要だ。実世界での実行という属性こそが、代替不可能性を決定づけている。しかし、旅先現地の旅行手配業は厳しい競争に直面している。

そして、生き残りをかけた違法行為も出現している。欧州現地の華人系手配会社によれば、中国国内の一部の大型旅行プラットフォームはコストを圧縮するため、短期観光ビザでドライバー兼ガイドを欧州に送り込み、安価な車両をレンタルして仕事を請け負わせているという。

大きな問題は、顧客を獲得するためには、何としてでも、そして少しでも「低料金」を実現せねばならないことだ。あの雲南省からのカップルは、15日間の欧州旅行で二人が支払った費用は約8万元前後(約180万円)と教えてくれた。一生に一度の新婚旅行であれば、許容できる価格かもしれない。しかし多くの中産階級の家庭にとって、一人4万元という単価は、依然として極めて高いハードルだ。

高額な料金を支払える顧客は、血眼になった旅行社同士の奪い合いの対象となり、カスタマイズされた体験を望みながらも支払い能力がさほどでもない旅行者は、資格のない運転手やガイドなどによる低価格商品を求めることになる。

そして、欧州にある中国系旅行会社の業界では、客争いの「共食い現象」も発生した。

その背景は、新型コロナウイルス感染症の影響が大きかった時期には姿が見られなかった中国からの「白タク運転手兼ガイド」などが欧州に再び出現したことだ。

会社同士の争いはエスカレートし、南フランスの駐車場では、他地域のナンバープレートを付けた車両を狙ってタイヤをパンクさせたり窓ガラスを破壊するといった過激な行為まで発生した。現地ではもともと、業界のしきたり、つまり文章化されてはいなくても、業界関係者として「してよいこと」と「してはならない」ことという「常識」があまりしっかりと確立されていなかった。競争が激化したことで、中国系旅行業会社同士が「仁義なき戦い」に突入してしまった感すらある。(翻訳・編集/如月隼人)

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