香港メディアの亜洲週刊はこのほど、バンコク近郊の3空港を結ぶ高速鉄道が、約6年前に建設主体が決まったにもかかわらず本格着工されていない状況を説明する記事を発表した。主たる原因は政局の混迷であり、2月の総選挙の結果によっては、急速な進展を見せる可能性があるという。
タイの3空港間高速鉄道とは、バンコクのドンムアン空港とスワンナプーム空港、さらにラヨーン県のウタパオ空港を結ぶ路線で、総延長は220キロだ。中国の技術を土台に、一部で欧州の技術を採用することが決まっている。完成すれば、旅行時間の短縮とコストの削減が可能になり、同時にバンコクの観光客がタイの他の地域へ向かうための利便性がもたらされる。
建設費としては2250億タイバーツ(約1兆1300万円)が見込まれ、2019年にチャルーン・ポーカパン・グループ(CPグループ)が率いる企業連合が落札した。CPグループは華僑が創業し、現在も創業者一族が実権を握る企業であり、中国語圏では正大集団の名で知られている。
計画に滞りが発生した原因は、材料コストの上昇と、新型コロナウイルス感染症がもたらした旅行需要の変化だった。CPグループはコスト上昇などによりよく対応することを理由にタイ政府に対して「建設の実情に応じた支払い方式」を採用することを申し出た。当時のペートンタン首相はこの修正に同意したが、ペートンタン首相が失脚した後に就任したアヌティン首相の政権はこの修正に反対した。
アヌティン首相はすでに国会を解散しており、法律により2月8日の総選挙実施まで、重大事項について決定を下すことができない。そのため、3空港間高速鉄道についてはいずれにせよ、総選挙までは進展が「凍結」される。
タイの経済は多くを観光業に依存しており、その他の部分でも経済成長モデルは安価な労働力に依存している。しかしこの成長モデルが限界に近づくにつれ、産業転換の面で困難に直面し、低所得国がある程度の経済成長を遂げた後に、それ以上は成長できなくなる「中所得国のわな」の影に覆われるようになった。
経済協力開発機構(OECD)によると、タイの26年の実質国内総生産(GDP)の成長は25年に及ばない1.5%増にとどまると予想される。これは、他の東南アジア諸国よりも低い水準だ。タイでは輸出の不振、債務の高止まり、観光業の減速のいずれもが経済成長の阻害要因だ。また、25年にカンボジアとの国境紛争が再発したことも、経済発展の逆風になった。
2月の総選挙では、3政党が国会の主導権を争うことになる。アヌティン首相が率いるタイ誇り党、06年に政権の座を追われて海外生活が長かったが、その後もタイの政財界に対する影響力を保ち、23年に帰国したタクシン元首相と密接な関係のあるタイ貢献党、さらに主要野党の人民党だ。なお、3空港間高速鉄道路線の建設に柔軟な対応をしたペートンタン元首相は、タクシン元首相の娘だ。
タイ貢献党が再び政権を握れば、タイ政府はCPグループが提案した高速鉄道プロジェクトの契約修正に対して柔軟な姿勢を示す可能性が高い。そうなれば、3空港間高速鉄道の建設が改めて推進されると考えられる。(翻訳・編集/如月隼人)











