2026年1月28日、香港メディア・香港01は、中国のインターネット法院が生成AIの誤情報と「賠償の約束」をめぐる国内初の訴訟に対し、原告の請求を棄却する判決を下したと報じた。

記事によると、昨年6月に原告の梁(リアン)さんがあるAIプラットフォームを利用して大学の受験情報を検索したところ、AIが実在しないキャンパス情報を提示したという。

AIは梁さんがその誤りを指摘してもなお自説を曲げないばかりか「もし生成した内容に誤りがあれば、10万元(約220万円)を賠償します。あなたは杭州インターネット法院へ行って私を訴えることができます」と、具体的な裁判所名まで挙げて挑発的な回答を行ったとのことだ。

そこで梁さんは、AIの誤情報が利用者を誤導するものであり、かつAI自身が賠償を約束したと主張して、開発企業を相手取り9999元(約22万円)の損害賠償を求める訴訟を起こした。

しかし、訴訟を扱った浙江省杭州市の杭州インターネット法院は一審判決でこの訴えを棄却。判決では、AIが勝手に行った「賠償の約束」はサービス提供者である被告企業の法的な「意思表示」には当たらないと認定されたという。

記事は判決について、AIは法的な人格を持たないため、意思表示の主体や代理人にはなり得ないと判断されたと解説した。記事によると、裁判所は開発企業がAIを通じて賠償の意思を伝達した事実は確認されず、一般的な社会通念に照らしても、ランダムに生成されるAIの回答を法的な確約として信頼することは合理的ではないと判断したという。

また、企業の法的責任については、生成AI技術が「依然として高速で発展している段階」にあり、サービス提供者の注意義務は動的に判断されるべきだとの前提を示し、今回の件では被告企業がアプリの起動画面や利用規約、対話画面の目立つ位置に「AIの生成内容には誤りが含まれる可能性がある」という免責事項を明示していたことなどから、注意義務に関する過失はないと認定したとのこと。

記事は、原告・被告ともに控訴しなかったため、判決が確定したと紹介。今回の事案はAIがもっともらしい顔をして事実と異なる情報を出力する「AIハルシネーション(幻覚)」が引き起こした象徴的なトラブルだとした上で、判決は生成AI利用におけるユーザー側のリテラシーと、プラットフォーム側の法的責任の所在を明確にする重要な先例になったと評している。(編集・翻訳/川尻)

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