2026年2月4日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレ(DW)の中国語版は、欧州の公共交通機関が新エネルギー車へと移行する中、中国製電気バス(EVバス)が圧倒的な低価格と信頼性を武器に急速に市場シェアを拡大させる一方、データ安全保障上のリスクが重大な論争となっていることを報じた。

記事は、コンサルティング会社マッキンゼーの報告を引用し、24年時点で欧州のゼロエミッションバス市場における中国製のシェアがすでに21%に達したことを紹介。

BYDや宇通客車が販売の大部分を占めており、運行事業者の約半数がこれら中国ブランドを熟知している実態を伝えた。

また、ドイツのバス会社ボッテンシャイン・トラベルのホルスト・ボッテンシャイン社長が、BYDのバスは価格面で欧州モデルより「はるかに安い」と述べ、バッテリーの性能面でも高い信頼を寄せていると報じられたことに言及。ほかの運行事業者も、BYDのバスがMANやダイムラーのモデルより約10万ユーロ(約1850万円)安く、欧州製が約60万ユーロ(約1億1000万円)に達するのと対照的な価格競争力を持っているとの認識を示したと紹介している。

中国製EVバスが欧州市場を席巻、安全性に懸念も―独メディア
宇通客車製のバス
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その上で、ドイツの運行事業者が30年までに市内でのディーゼルバス運行が原則禁止されるという「車両更新の必要」に迫られていることを指摘。こうした需要を背景に、ドイツ鉄道(DB)が昨年12月、ハンガリー工場で生産されるBYD製バス約200台を発注したほか、ベルギーの運送会社デ・レインもBYD製バス500台を調達し、オーストリア・ザルツブルクの路線バス事業者も宇通製バス34台の導入を決定するなど、価格面での大きな優位性を武器に中国メーカーによる欧州市場への浸透が加速していると分析した。

さらに、中国メーカーがEVバスを含む商用EV生産の欧州での現地化を加速しており、電動トラックメーカーの風路仕(ウィンドローズ)がベルギーのアントワープに現地組立拠点を設けるほか、奇瑞汽車(チェリー)がリバプールに商用車部門の本社を設立し、ドイツ国内の研究開発拠点を現在の約1100平方メートルから2000平方メートル以上へと大幅に拡張する計画であることを報じた。[]

記事はその一方で、急速な普及に伴う安全上のリスクを懸念する声も出ていると指摘。複数のドイツの政治家が、基幹交通インフラの安全性確保と遠隔操作の防止を強調し、当局の調達判断を批判したことを紹介した。また、以前にノルウェーの交通事業者ルーターが実施したテストにおいて、宇通客車の車両が遠隔操作可能でデータを中国に送信していることが判明したことから、理論上は「ワンクリックで停車させられる」というリスクが存在すると伝えている。

そして、今後について、重要な交通インフラにおけるデータ保護の徹底を求める声が強まる中、コストパフォーマンスを追求する現場の需要と国家安全保障上のリスク管理という構造的な矛盾が、今後の欧州公共交通政策における最大の焦点になるとの見方を示した。(編集・翻訳/川尻)

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