華為技術(ファーウェイ)傘下の華為数字能源(ファーウェイ・デジタルエナジー)で太陽光発電業務副総裁とマーケティング最高責任者を務める鍾明明氏はこのほど、今後のスマート太陽光発電の10大トレンドおよび関連する白書を発表した。鍾氏は、太陽光や風力などによる「新エネルギー産業」は現在、まったく新たな歴史の入り口に到達しており、関連産業は一点突破型のイノベーションから、融合型イノベーションに向かうと主張した。

以下は、鍾氏の言うこれからの「10大トレンド」の概要だ。ただし鍾氏は業界人を念頭にこの「10大トレンド」を説いたようで、専門用語や専門的な表現をそのまま使った部分も多い。本稿では一般的な読者を念頭に、かなりかみ砕いた表現にした部分がある。

トレンド1:各分野の協調で予測可能かつ制御可能な安定電源が出現

将来の太陽光や風力発電、さらに蓄電の大型拠点は、五つの重要な特徴を備えねばならない。すなわち「安定制御が可能」「コスト制御が可能」「100%の独立運行」「発電、蓄電、電力網、施設運営、電力使用など、一連のプロセスのすべてを網羅するインテリジェント協調」「全ライフサイクルでの安全性と質の高さ」だ。これらにより、予測可能で制御可能な電力の安定供給を実現せねばならない。

トレンド2:電力網形成型の蓄電施設があらゆる場所に普及

電力網形成型(グリッド形成型)の蓄電施設とは、電力系統の安定を支えるために、電圧や周波数の安定維持に能動的に介入する蓄電施設だ。このタイプの蓄電施設が普遍的に存在することで、より安全、より柔軟、より効率的な新型の電力システムの構築が後押しされ、ユーザーのために成長し続ける経済価値が創造される。

トレンド3:各方面の協調で電力需給が「全体協調」に向かう

AI利用の電力需給運用技術を利用して、電源、電力網、ユーザー、蓄電の四大方面の深い連動と効率的な協調を実現する。

トレンド4:家庭用太陽光発電では「人工知能(AI)利用が前提」が急速に進む

家庭用の太陽光発電と蓄電システムは、従来の「AI利用で性能向上」から「AI利用が大前提」の状態に急速に進化する。AIのフル活用を前提にすることで、システムの設計、電力の利用体感、運用保守の水準や効率が大幅に向上する。個別の家庭にとって、電力網との関係がさらに改善されたシステムの設計が行われ、住人にとって最も快適で「お得」な電力使用と売電のプランをAIが算出してくれる。運用保守でも、AIが不具合の発生を予測してくれるので事前に対応できることになる。

トレンド5:「高密度の切り替え」で蓄電側も電力網もうれしい性能の向上

蓄電装置から出る電流は、一方向に向かう直流だ。電力網に送電する場合には、1秒当たり50回あるいは60回の周期でプラスとマイナスが入れ替わる交流にしなければならない。直流を交流にする機器はインバーターと呼ばれ、高周波対応型のパワー半導体素材による電子的操作で直流を交流に変換する。さらに具体的には、インバーターは直流電流の向きを極めて短い周期で刻んでプラスとマイナスを逆転させてその電流を合成することで、電力網が必要とする交流の波形を得る。電力網が理想とするのは正弦波と呼ばれる最も単純な波形だが、インバーターが直流をより細かく「切り刻む」と、より正弦波に近い波形を合成できる。

近年では高周波対応型のパワー半導体素材を用いることで、直流を「より細かく切り刻む」ことが可能になってきた。インバーターを中核として交流に変換された電流を電力網に送り込む装置が蓄電PCSだ。蓄電PCSが出力する交流の波形を最終的に整えるためのフィルターも内蔵しているが、インバーターが最初から「質の高い波形」を作ることでフィルターを小型化でき、蓄電PCS全体を小型化できる。また、直流から交流への変換時にはどうしても、熱として放出されるエネルギーが発生するので、インバーターを小型化するためには放熱技術の向上も必要だ。高周波素材の改良と放熱技術の向上で、蓄電PCSは、同じ量の電力を処理する場合に、容量などを40%以上減らせると考えられている。

ファーウェイが太陽光発電の10大トレンドなど発表、発電施設は「自動運転」へ

トレンド6:高電圧と高信頼性が、電力コストを引き下げる

蓄電池から蓄電PCSまでの直流、蓄電PCSから出る交流のいずれでも、高電圧化が進みつつある。電圧を引き上げた方が、コストを削減してエネルギー効率を向上できるからだ。特に注目されているのが、直流部分の高電圧化だ。このことを実現するためにはまず、蓄電PCSで用いられる部品を、高電圧に耐えられる仕様にせねばならない。

また高電圧化には大きな長所がある反面、安全確保がより重大な課題になる。この安全確保のための重要な思想が、「不具合が発生してからの補修ではなく不具合の発生を予測して事前に手当」だ。

漏電による出火が発生すれば、実際に故障した部分だけでなく、広い範囲の機器が損傷する。しかしAIが絶縁状態の変化などを事前に検知すれば、問題が出そうな部品だけをピンポイントで交換することも可能だ。このことで、施設のライフサイクルにおけるコストは引き下げられる。つまり、安全性を確保した高電圧化が実現すれば、新エネルギーの電力コストを大きく低減できる。

トレンド7:「蓄電システムの中核は電池」の考えから脱却

蓄電については、パワーエレクトロニクス(電力変換技術)をはじめ、クラウドとAIなどのデジタル技術を採用し、蓄電の最小単位のそれぞれのセルからシステム全体まで、高い精度と信頼度による監視と管理をすることが極めて重要だ。蓄電システムのより高い放電量、より高い安全、より長い寿命、極めてシンプルな運用を実現することは、既に蓄電の高品質化における基礎的な要求になっている。

トレンド8:グリッド形成技術体系が日に日に成熟

蓄電施設はグリッド形成技術の導入により、電力網安定の「受動的な追従者」から「主体的な構築者」へと転換しつつある。グリッド形成技術は、特定の特殊な要求に対応するための「点の技術」の導入から、システム全体での深い融合という新段階へ向かっている。その三大支柱は「高性能ハードウェア」「グリッド形成アルゴリズム」「知能化(スマート化)」だ。これらを垂直方向では深め、水平方向では交差と融合を進めることで、あらゆる環境、あらゆる稼働状況、あらゆる時間帯におけるニーズに安定対応する能力を構築していく。

トレンド9:AIエージェントが発電施設を自動化

AIエージェント、すなわち「自ら考えて行動するAI」が、太陽光発電施設などを「自動運転化」する。従来のシステムは「Aという状況ならばBをする」という固定されたルールに従ったが、AIエージェントは複雑な環境変化を学習し、最適解を自ら突き止める。このことが発電施設に「深い力」を与えて、「異次元の管理」を実現する。さらにクラウドによる広域環境についてのデータ処理、現場に設置されたエッジサーバーによる遅延なき反応、各種デバイスが「目や耳」なりデータを取得してさらには「手や足」になって操作を行うなどで施設の自動運転を支えるようになる。

トレンド10:「数値化」による蓄電施設の安全性向上

蓄電の安全性について、従来は単体の部品やサンプルの安全性を考慮していた。しかしこれからは、システム全体の中での安全性や全ライフサイクルを通じた安全性が求められる。さらに、数値化された指標を通じて安全基準を明確にし、さらに設置場所の環境や重要度に応じて安全要件が等級分けされることになる。これらにより、「この施設の場合には、どこまでが安全と断定できるか」という境界線をデータで明確に示し、不具合の兆候を逃さず制御することで、業界の懸案であった「経験にも大きく依存した安全管理のあいまいさ」が根本的に解決される。(翻訳・編集/如月隼人)

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