2038年のサッカーワールドカップ(W杯)を中国の粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア)が共同で招致を目指す動きが浮上している。実現には多くの課題があるが、中国メディアは「サッカーという世界最大の舞台で粤港澳が中国を代表して『決定打』を放てるのか。

今後の動きが注目される」と報じた。

中国通信社(CNS)によると、中国は五輪、アジア競技大会、ユニバーシアード、ユース五輪などの主要な国際大会の開催実績を積み重ねてきた。一方で、いまだ開催経験がないのがサッカーW杯だ。ここに来て、中国の招致をめぐる動きに新たな材料が出てきた。

1月末、広東省広州市の関係部門はW杯が世界で最も影響力の大きいサッカー大会であると強調。粤港澳大湾区が共同で招致を目指すことは地域の国際的な存在感を高め、都市群の連携発展を促す上で戦略的な意義が大きい、との見方を示した。

広州市は国家体育総局および中国サッカー協会の方針に沿いつつ、国の全体戦略に合致することを前提に、香港・マカオとの連絡や協力をさらに深め、地域のスポーツ分野の連携を推し進めていくとしている。

広州市政府弁公庁が25年7月に公表した「広州市スポーツ強市建設計画(24~35年)」でも「粤港澳3地域の大会運営経験と国際的資源を生かし、W杯の共同招致を推進する」と明記されていた。そこから半年余りを経て、担当部門が改めて対外的に言及したことで、関係都市が招致に向けた動きを具体化させる意向を示した形だ。

2038年のサッカーW杯、広東・香港・マカオの粤港澳大湾区に招致も―中国メディア
広州天河体育センター

CNSは「現時点では粤港澳大湾区に共同招致の意欲があったとしても、短期的に実現するハードルは高いとの見方が強い」とも言及。背景の一つに開催地の「大陸持ち回り」を挙げた。34年大会はサウジアラビアが開催地となった。

サウジはアジアの国で持ち回りの原則を重視すれば、中国は38年大会の招致が難しくなる可能性がある。

スタジアム要件のハードルも高い。国際サッカー連盟(FIFA)は要件を厳格に定めており、スペイン、ポルトガル、モロッコが開催国となる30年大会では使用可能なスタジアムが14会場必要で、開幕戦と決勝の会場は8万人以上、グループステージでも最低4万人の収容が求められる。粤港澳大湾区では専門的なサッカースタジアムの数がこうした要件に十分届いていない、との指摘がある。

CNSは「W杯のような巨大イベントを招致するかどうかは投資規模や財政負担、都市運営への影響などを含め、慎重な検討が欠かせない」としながらも、「大会には大きな投資が伴い、経済への波及効果が期待できるのも事実だ」と報道。「浙江省統計局は杭州アジア大会の16~20年の準備投資が杭州市のGDP(国内総生産)を約4141億元(約9兆1759億円)押し上げ、同期間のGDPの7.6%に相当すると試算したことがある」と紹介し、W杯の経済効果に期待を寄せた。(編集/日向)

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