「俺が電気を止めれば、“小日本”は半分くらい停電するだろう。俺の資産なんて、家や車、港区のタワマンは大したことじゃない。本当の“見えない資産”はエネルギー、つまり蓄電だ。日本でエネルギーを握れば、相手を踏みつけることだってできる。最終的には本州や九州など四つの島すべてに蓄電ステーションを敷き詰めるのが目標だ」
中国のSNS上でこうした発言を行い、物議を醸しているのが、インフルエンサーの「東瀛小野亮」だ。動画は抖音(Douyin、中国版TikTok)や快手、微博(ウェイボー)など複数のプラットフォームに投稿され、拡散された。撮影されたのは、長野県上田市。蓄電所の竣工式の現場だ。本人はこの事業について「日本政府の支援を受けたプロジェクト」であり、「1口30万元(約700万円)」で中国に向けて投資を募っていると説明していた。
本来、こうした形で日本社会に貢献するのであれば評価される余地はある。しかし現在の日中関係は、国交正常化以降でも低水準にあると指摘され、さらに米国とイスラエルによるイランへの軍事行動を背景としたエネルギー不安も重なり、国際環境は極めて敏感な状態にある。そうした中で、「電力を通じて日本を支配する」とも受け取れる発言は、日中双方のネット世論に波紋を広げた。
翻訳され、拡散され、増幅される“言葉”
日本のネットユーザーは問題の発言を日本語に翻訳し、SNS上で共有。「警戒すべきだ」との声が広がった。一方、在日中国人社会の内部でも反発が見られ、多くの人が冷ややかな視線を向けている。
そもそも、個人や単一企業が「一国の電力システムを支配する」ことは、現実的にほぼ不可能だ。まして蓄電事業のみでそれを実現することは、専門家の間でも非現実的とされる。それでもなお問題視されたのは、発言そのものの象徴性と、その受け取られ方にある。
一部の在日中国人は、「現在のように両国関係が敏感な時期に、挑発的な言葉でナショナリズム感情を刺激し、日本をおとしめることで注目を集める行為は、民間レベルの対立を拡大させる」と懸念を示す。さらに、この種の発言が拡大解釈されることで、日本社会における外国人、特に在日中国人に対する警戒感を強め、結果として生活環境や社会的評価に影響を及ぼす可能性も指摘されている。
[注意喚起]!!!
— 大翻訳運動 (@daihonyaku) March 23, 2026
「その気になれば日本全体を停電させることもできる」
過去に中華料理店「西太后」への迷惑行為や、交通事故での逮捕歴が報じられた元在日中国人インフルエンサー・小野亮氏が、現在は日本国内の蓄電所プロジェクトを手がけているようです。… pic.twitter.com/6DwPLvXtt3
産業界からも懸念
今回の問題は、単なるネット炎上にとどまらない。エネルギーおよび蓄電分野の関係者からは、より現実的な懸念も上がっている。
現在、中国は蓄電産業においてサプライチェーンと技術力の両面で優位性を持ち、多くの中国系企業や中国人が日本市場で活動している。しかし「他国のエネルギーをコントロールする」といった言説が広まれば、それは潜在的なリスクとして受け止められ、業界全体の信頼性を損なう恐れがある。
信頼はビジネスの根幹だ。一度でも疑念が生じれば、投資判断や提携関係に影響が及ぶのは避けられない。結果として、今後の雇用や投資環境にまで波及する可能性も否定できない。
“炎上型インフルエンサー”の軌跡
「東瀛小野亮」(本名・汪正亮氏)は北京の幹部家庭に生まれ、2015年に大学卒業後に来日。都内の日本語学校を経て、来日1年足らずで池袋に「正亮貿易JAPAN」を設立した。貿易代行に加え、美容医療や富裕層向け観光サービスなど、多角的なビジネスを展開している。
顧客獲得のため、SNSでは高級車や高級腕時計、日本での消費生活、日本人女性との交際といった“成功者像”を強調したコンテンツを発信し、注目を集めてきた。
一方で、過去にもたびたび物議を醸している。日本人女性約100人とデートしたとの発言、飲酒運転による事故疑惑、タイで警察の制服を着用して撮影した動画、さらには「中国人お断り」と掲げた飲食店に現金を投げつけるパフォーマンスなど、その行動は常に議論の的となってきた。
また、「温泉でくつろぐ自分のために日本の社畜が働いている」といった、日本人を見下すような発言も繰り返されている。
在日中国人社会からの厳しい視線
在日中国人コミュニティーの関係者は、こうした言動について「長年にわたり強い疑問が呈されてきた」と指摘する。
「日本で生活する以上、居住国に対する最低限の敬意を持つことは当然の前提だ。もし日本国籍を取得しているのであれば、なおさら社会的責任は重い」
日中両国には複雑な歴史と現実が存在する。だからこそ、民間レベルでは相互尊重を積み重ねていくことが不可欠だ。挑発的な言葉で対立をあおることは、その努力を損ないかねない。
「発言」と「責任」の間
記者は本人にSNSを通じて接触し、取材を行った。
――現在の国籍について。
「その点については答えられないが、妻と娘は日本人だ」
――これまでの数々の炎上についてどう考えるか。
「すべて合法の範囲内での行動であり、その時々の自分の考えを表現したものだ。問題はないと思っている」
――日本人を見下すような表現について。
「労働する人は皆尊い存在であり、攻撃する意図はない」
――今回の“断電”発言について。
「人は何を言ったかではなく、何をしているかを見るべきだ。中国の資金を日本に投資することは両国関係にとってプラスになる。発言には注目を集めるための要素もあるが、最終的には前向きな意図だ。私は日本という国に対して感情を持っており、この土地でやりたいことを実現することで、両国関係を前進させたい」
— 中国動画 (@RC00547555) April 3, 2026
注目獲得の代償
今回の騒動が突き付けるのは、「発言の自由」と「社会的責任」のバランスだ。
過激な言葉は瞬間的な注目を生む。しかし、その代償として失われる信頼は、個人の評判にとどまらない。在日中国人社会全体のイメージ、さらには日中間の脆弱(ぜいじゃく)な信頼関係にまで影響を及ぼす可能性がある。
注目を得るための言葉が、どこまで許容されるのか。その境界線は、今改めて問われている。(取材/レコードチャイナ編集部)











