米ミズーリ州スプリングフィールドの自宅で48歳のブランチャードが死体で発見されてから数日後、ウィスコンシン州の自宅にいた娘のジプシー・ローズとボーイフレンドのニコラス・ゴドジョンが逮捕されたのだ。ブランチャード親娘を知っている人々にとってさらに大きな衝撃となったのが、ブランチャードがジブシーを車椅子に乗った病身のティーネイジャーのふりをさせていた、という事実だった。
そして今週、こじれた母と娘の関係とブランチャード殺人を引き起こす結果となった長年の秘密と嘘が再びニュースになっている。米国現地時間13日、ウィスコンシン州グリーンカウンティーにて、第一級殺人をめぐるゴドジョン被告の裁判がはじまった。2016年にジプシー・ローズは有罪を認め、第二級殺人の罪で10年の禁錮に処せられている。罪を認めた際、ジプシー・ローズはキリスト教系のデートサイトで出会ったゴドジョンに長年にわたって自分を虐待し続けてきた母親を殺害するよう仕向けた、と述べた。この事件を検証してきた専門家の多くは、ブランチャードが代理ミュンヒハウゼン症候群という、親あるいは介護者が他者の病気を誇張、捏造することで注目や同情を得ようとする精神疾患の持ち主であると判断した。
幼い頃から、ブランチャードはジプシーに自分が重度の障害者であると同時に慢性的な病に侵されていると信じさせ、不必要な施術を受けさせたり、薬物を摂取させたりした。その一方、ブランチャードは数々の慈善団体から寄付を巻き上げていたのだ。ブランチャードは、ジプシーは白血病、筋ジストロフィー、ぜんそく、脳障害によって知的能力が7歳児レベルであると主張していた。ジプシーは8歳から車椅子での生活を強いられ(脚に問題はなかった)、栄養チューブを通して食事を与えられ、髪を刈り上げられた。ジプシーが抱える様々な病状があたかも真実であるかのように、ブランチャードは次から次へと医師を欺いた。
スプリングフィールド・ニュースリーダー紙は、ゴドジョン被告の動機がジプシーを「助ける」ことではなく、カップルが一緒になるための唯一の障害物がブランチャードであったという検察側の主張を報じた。被告は殺害を実行する前に何度も熟考を重ねた、と検察は述べた。ショートメッセージやFacebook上のチャットなどのオンライン活動からも、1年前にジプシーが初めて殺人を持ちかけた時から被告が積極的に関わっていたことが明らかである、と主張した。
「たしかに、これはジプシーのアイデアです。でも、被告は6月10日に殺人を犯すつもりでした。こうしたメッセージからは、被告が楽しんでいた様子がうかがえます」。グリーンカウンティのネイサン・チャップマン副検事は冒頭陳述でこのように述べた。
ゴドジョン被告の弁護側の論点は、被告が殺人の実行犯であるかどうかではなく、刑罰が重すぎることにある。さらには、自閉症である被告には予謀なき第一級殺人を犯す能力がないと主張している。
「ニックはジプシーの望みを叶えることに喜びを感じていました」。公選弁護人のアンドリュー・ミードは言い、凶器として使われたナイフはジプシーが盗み出したものであると指摘した。
友達も少なく、一つの職歴しかないゴドジョン被告は、自由な時間のほとんどを「世界への出口」と自ら呼んだインターネットで過ごした、とミードは述べた。弁護側は、ブランチャードを殺害する前にレイプを試みたという警察によって録音された被告の供述内容の一部に対し、それが見当違いであることを指摘した(なぜなら、被告とジプシーは殺害後に現場の自宅でセックスを交わしたのだから)。最終的に裁判官は検察側の主張を聞き入れ、被告の供述の一部が予謀の証拠であると判断した。
裁判の初日、陪審員は現場に駆けつけた数人の警察官とブランチャードの検視を担当した検死官の証言を聞いた。ジプシーが検察、あるいは弁護側の証人として出廷するかどうかは、現段階では不明だ。