カミラ・カベロ、アリアナ・グランデ、ロビンなど、ローリングストーン誌スタッフが選んだ今年の人気ポップアルバム20枚を一挙公開。
今年のポップシーンは、かつての人気アーティストの意欲的な復活作品と画期的な新人アーティストのデビュー作品で豊作だった上に、一部の新人アーティストたちはジャンルの既成概念を一変させるサウンドの作品を発表した。
ポップの新たなアイデンティティが浸透し始め、将来的な可能性が大きく広がった1年となった。今年のベスト・ポップ・アルバムはこれだ。

20位 The 1975『ネット上の人間関係についての簡単な調査』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

通算3枚目の今作でThe 1975はポップバンドとしての野望を見せつけた。ジャズ、ニューウェイヴ、ソフィスティポップ、ラジオ受けするフック、社会に対する辛辣な意見が詰まった新作『ネット上の人間関係についての簡単な調査』は、彼らにとって克服しがいのあるプロジェクトだった。そして、彼らの使命、すなわち我々の人間関係に影響するインターネットをこき下ろすことから1ミリも外れていない。それほどまでに大きなテーマのわりに、「Give Yourself A Try/ギヴ・ユアセルフ・ア・トライ」、「Sincerity Is Scary/シンセリティ・イズ・スケアリー」、「Its Not Living (If Its Not With You)/イッツ・ノット・リヴィング(イフ・イッツ・ノット・ウィズ・ユー)」などのフックには安堵と癒しを感じさせる、心地良く楽しい作品だ。

19位 バーブラ・ストライサンド『Walls』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

バーブラ・ストライサンドは、最新バージョンの”スター誕生”映画である『アリー/スター誕生』が話題になるのを耳にした。この映画に彼女の姿はないが、その代りとでも言うように、ストライサンドは政治的なメッセージを注ぎ込んだ強烈なアルバムでカムバックした。新しいオリジナル曲とスタンダード曲のカバーで構成されたこの作品は、政治の激変をテーマにしている。「嘘をつかないで!」などの楽曲は、トランプ大統領に対する公開レターの形式で書かれている一方で、ジョン・レノンの「イマジン/この素晴らしき世界」、レナード・バーンスタインの「テイク・ケア・オブ・ディス・ハウス」(これはミュージカル『ペンシルヴァニア通り1600番地』の挿入歌)などのカバー曲も、彼女の抗議メッセージにフィットするように変貌を遂げている。

18位 アン・マリー『Speak Your Mind/スピーク・ユア・マインド』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

イギリスの新鋭アン・マリーは、「2002」という今年最も奇妙なタイムトラベル曲でチャート1位を手にした。この曲は10代のノスタルジアを描いたもので、世界中でヒットを記録。
「やばっ、トラブル99個だって/「バイ、バイ、バイ」なんて歌っているうちに/私と一緒に乗って行きたいなら/連絡ちょうだい、ベイビー、もう一度」という歌詞には2002年らしさなどはないが、エド・シーランのギターと伴って、この曲の魅力は増すばかりだ。アン・マリーはキラキラ輝く魅力的なスピリットをアルバム『スピーク・ユア・マインド』の至るところに散りばめながら、「Ciao Adios/チャオ・アディオス」や「Bad Girlfriend/バッド・ガールフレンド」などは見事な辛辣さを見せつける。

17位 クリスティーナ・アギレラ『リベレーション』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

『ストリップト』に続く新作で、クリスティーナ・アギレラがリリースしたマグナム級の芸術作品は、幅広いボーカルレンジ、セックスの自由、感情の成熟が際立ち、彼女は飄々とジャンルの垣根を超える。『バック・トゥ・ベーシック』では20世紀半ばまでさかのぼり、『バイオニック』では未来のポップを探検したアギレラ。しかし、楽しい作品とは言え、テーマと混乱は本来のアギレラとは一線を画していた。6年振りの新作となった『リベレーション』は、彼女の再登場に最適な作品だろう。彼女の一番の楽器で音楽をリードしながらも今風のトレンドも取り入れる手法を見出している。仄かなセクシーさが匂い立つ「Right Moves/ライト・ムーヴス」や、強烈なラップポップのコラボが冴える「Accelerate/アクセレレート」、そしてデミ・ロヴァートとの癒しのデュエット「Liberation/リベレーション」は、業界の騒動を切り抜けた歌姫が遂に心と人生の平和を取り戻したようにも聞こえる。

16位 アレッシア・カーラ『ペインズ・オブ・グローイング』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

「着ているTシャツの前面と背面で魂をロックする」と、不機嫌な10代から自己実現を果たす大人へと成長中のアレッシア・カーラがアルバム『ペインズ・オブ・グローイング』で宣言する。19歳でトリップホップの内向的なアンセム「ヒア」がYouTubeで話題沸騰となったカナダの新星の3年後が現在だ。彼女の最初のヒットとなった「ヒア」では、トリッキーやポーティスヘッドなどの90年代テクノのディストピア的サウンドを背景に、最近流行りのパーティーに行くのがつまらないと嘆いていた。それ以来、誤った再スタートを数回繰り返したが、今作『ペインズ・オブ・グローイング』には、別れのブルース曲「Not Today/ノット・トゥデイ」から南国的な陽気さのR&Bチューン「Trust My Lonely/トラスト・マイ・ロンリー」まで、アーティストとしての成長がはっきりと現れている。


15位 チャーリー・プース『Voicenotes/ヴォイスノーツ』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

2016年のデビュー作『Nine Track Mind/ナイン・トラック・マインド』は面白みに欠ける作品だったが、今作『Voicenotes/ヴォイスノーツ』でプースは自身のシグネチャーとなるスタイルをやっと確立したようだ。プースの音楽は70年代のAMラジオ局で一時代を築いたソフトロックのサウンドを基調にしている。彼とジェイムス・テイラーのデュエット曲(「Change/チェンジ」)に何も感じないのなら、ホール&オーツの曲(「Slow It Down/スロー・イット・ダウン」)を聞くと良い。ヘイリー・キヨコ同様、プースもケラーニとのデュエット曲(「Done for Me/ダン・フォー・ミー」)で輝きを見せ、「If You Leave Me Now/イフ・ユー・リーヴ・ミー・ナウ」ではボーイズIIメンとコラボし90年代R&Bを称賛する。

14 リタ・オラ『Phoenix/フェニックス』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

この作品の制作には10年近くかかった。リタ・オラは何年間もアルバム制作をひた隠しにして、遂に『Phoenix/フェニックス』というアメリカでのデビュー作をリリースしたのである。レコード契約の地獄に陥ったオラはシンガーとしてのキャリアが頓挫していた。しかし、彼女に対する人々の興味が消えることはなかった。彼女はシングルをリリースし、コラボレーションを行い、女優として演技し、モデルもつとめ、タブロイド紙の常連となったのだから。ありがたいことに、デビュー作の音楽は彼女のペルソナとマッチしている。『Phoenix/フェニックス』はオラのスモーキーなソウルポップの歌声を輝かせる完璧なプラットフォームで、そこでシングル曲「Your Song/ユア・ソング」と「Anywhere/エニウェア」で聞かれるアップビートでラジオ局向けのパワーポップを流暢に披露している。

13位 BTS『Love Yourself: Tear』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

今年のBTSはアメリカのチャートのトップに躍り出て、K-popの新たな市場を開拓した。
大韓民国のボーイズグループであるBTSのアルバム『Love Yourself: Tear(英語タイトル)』はアメリカ国内で初登場1位を記録したのだが、これは彼らにとって最大のヒット・アルバムに留まらず、K−pop版「アペタイト・フォー・ディストラクション/Appetite for Distraction」(※ガンズ・アンド・ローゼスのデュー・アルバム)とでも言うべき強さを見せたのだ。BTSの特徴を一切損なわず(そして言語も変えず)、このアルバムでも全力で自分たちの音楽を見せつけている。そして、韓国のサウンドを受け入れるアメリカのファンは少ないと言っていた人々を見事に出し抜いた。熱々のR&Bバラッド「Singularity(原題)」から、耳を捉えて離さない奇妙なラテン風ヒップホップ曲「Airplane Pt.2(原題)」まで、BTSは異なるジャンルを縦横無尽に行き来する。

12位 トーヴェ・スティルケ『Sway』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

スウェーデンのポップ基準からしてもトーヴェ・スティルケの音楽はかなりスウェーデン色が濃い。10年前に若干16歳で「スウェディッシュ・アイドル」に出場したトーヴェ。彼女の3枚目のアルバム『Sway(原題)』は、ミニマルなシンセポップのスマッシュヒット「Say My Name(原題)」の波に乗ってリリースされた新たなスターのお披露目パーティーと言える。彼女の立ち位置はロビンの左側で、トーヴェのツアーメイトのロードとケイティー・ペリーの真ん中という感じか。『Sway』収録の「Mistakes(原題)」と「I Lied(原題)」では、プロデューサーのエロフ・ロエルヴが作った奇天烈なエレクトロ・ブループの上で、打ち砕かれた悲しみをかすれた歌声で歌い、最後はロードのカバー曲「ライアビリティ」で締めている。

11位 カイリー・ミノーグ『Golden/ゴールデン』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

カイリーがカントリーを歌うのか? もちろんだ。カントリー以外のスタイルはもうやったのだから。常に新たな音楽テリトリーを侵略する「Cant Get You Out of My Head/熱く胸を焦がして」でお馴染みのレジェンドは、ラインストーンで飾られたカウガールのディスコとも呼べるアルバム『ゴールデン』でナッシュビルを征服した。
これは、死と傷心に正面から立ち向かいながら、さっそうと50代に突入する彼女の自信が現れた意思表明とも言える。また、30歳になる時期にリリースしたカルト的人気を誇る『インポッシブル・プリンス』以来、最も私的な内容のアルバムだろう。バラッド曲「Musics Too Sad Without You/ミュージックズ・トゥー・サッド・ウィズアウト・ユー」のミノーグは哀愁を帯びているが、バンジョーがフィーチャーされたディスコ曲「Raining Glitter/レイニング・グリッター」ではかつてないほど明るく弾けている。

10位 キング・プリンセス『Make My Bed(原題)』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

クイアポップの新たなアイコンがキング・プリンセスだ。このブルックリン生まれの10代は「1950(原題)」という驚きのヒット曲を生み出した。レズビアンとしてのかつての禁断の愛を歌ったこの曲は、二日酔いのラナ・デル・レイのように感傷的に歌われていた。彼女のファンであるハリー・スタイルズは夏のツアー中、会場のスピーカーから「1950」を繰り返し流し、この曲の歌詞をツイートして、世間に彼女を知らしめたのである(彼女の恋人である女優アマンドラ・ステンバーグが「Talia」のMVを監督した)。『Make My Bed』は5曲が収録されたキング・プリンスのデビューEPだが、ポップ作品として十分な内容になっている。そして、キング・プリンスは音楽活動を活発に続けており、最近「Pussy Is God(原題)」という、読んで字の如くの内容のニューシングルをリリースしたばかりだ。

9位 ショーン・メンデス『ショーン・メンデス』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

20歳のショーン・メンデスは、遂に「大人になる」という若手ポップスターの通過儀礼に乗り出した。3枚目となるこのアルバムで、自身の浮世的な欲望をあからさまに表現するようになり、そこにR&Bタッチの実験的要素も加わり、大人のポップへと変貌を遂げている。しかし、彼の真骨頂はリスナーを誘うメンデス独自のメンタルヘルスの旅だ。
「イン・マイ・ブラッド/In My Blood」とカーリドとのデュエット曲「ユース/Youth」ではスタジアム・ロックの前座としてプレイする不安と無力感を歌っている。もちろん、肉体的な興味を表わす曲も展開され、アルバムのハイライト曲「ナーヴァス/Nervous」、「パティキュラー・テイスト/Particular Taste」、「ホエア・ワー・ユー・イン・ザ・モーニング?/Where Were You in the Morning?」では、これまでで最も自信たっぷりに陽気な歌声を披露しながら演奏している。

8位 マライア・キャリー『コーション/Caution』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

復活のクイーンが再び戻ってきた。『コーション/Caution』は”これぞ、マライア・キャリー”と呼べる最高傑作で、20世紀と21世紀を股にかけて活躍する歌姫らしい多種多様な楽曲が収録されている。プロデューサーにナインティーン85、デヴ・ヘインズ、ティンバランドを迎え、キャリーは他の追随を許さないユニークさをさらに強化する術を見つけたようだ。最高のソングライティング(「ア・ノー・ノー」は今年最高で最もお茶目な減らず口だ)と、彼女にしかできない歌い方(感情を抑えた「GTFO」と火を吹くようにエネルギッシュな「ポートレイト」を聞いてほしい)も健在だ。この作品は、マライア・キャリーが不滅のヒットメーカーだと世間に知らしめる辛口のリマインダーといえる。

7位 トロイ・シヴァン『ブルーム』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

今作『ブルーム』で、トロイ・シヴァンは他のポップ・シンガーと自分を隔てる可能性をやっと発見したようだ。このアルバムからは南アフリカ生まれ、オーストリア育ちのシンガー・アクター・ユーチューバーの繊細さが溢れ出ている。無邪気さの喪失、傷心、親密さの欠如、思春期から大人への狭間の不安感などなど。元気のいいタイトルトラック、心が痛む「Postcard/ポストカード」、心をとろけさせる「Lucky Strike/ラッキー・ストライク」では、シヴァンのかすれ気味のソフトヴォイスが力強さを見せる。このアルバムはスターダム前夜のスターの音楽だ。


6 ヘイリー・キヨコ『Expectations』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

ヘイリー・キヨコ自身が言っているように、今年は20GayTeen(※2018年の18[エイティーン]をGayTeenにしたキヨコの造語)だ。ファンは彼女を「レズビアン・ジーザス」と呼ぶ。彼女はファンのExpectations(期待)に応える。しばしの外遊のあと、キヨコは人気番組『レモネード・マウス』で高校生ロックスターとして過ごした古巣ディズニー・チャンネル時代の自分に戻ることにした。そう、今作『Expectations』で彼女は原点に戻っている。奇妙な三角関係を描いた恋愛ソング「Curious」とケラーニとのデュエット曲「What I Need」で、クイアの恋愛を明け透けに描く。この夏、キヨコはテイラー・スウィフトのレピュテーション・ツアーで、スウィフトと一緒に「Curious」を歌い、12月に2人で鳥肌モノの「Delicate」のアコースティック・バージョンを披露した。このポップ界の女神たちのスタジオでのコラボレーションを期待して待ち続けよう。

5位 シェール『Dancing Queen/ダンシング・クイーン』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

シェール以外にポップ界の超スーパーグループABBAの楽曲だけでアルバム1枚作ることのできるアーティストがいるだろうか? 映画『マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー』で、ヘリコプターを降りて歌う「Fernando/悲しきフェルナンド」で場面をさらった彼女だ。ABBAのカバー・アルバムを作るのは運命だったのだろう。「Dancing Queen/ダンシング・クイーン」では、今でも彼女のライバルとして君臨する巨大ポップ・フランチャイズABBAへ敬意を表している(因みに、今年はブロードウェイでもミュージカル『The Cher Show』がABBAのミュージカル『マンマ・ミーア』の直後に公開された)。70年代の離婚の悲哀を歌う「The Winner Takes It All/ザ・ウィナー」や「One of Us/ワン・オブ・アス」でシェールは輝きを放つ。次は『ボヘミアン・ラプソディ』の挿入歌でクイーンのトリビュート・アルバムを作って欲しいものだ。長年シェール版「伝説のチャンピオン」を待っているファンのためにも。

4位 ロビン『Honey(原題)』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

ロビンのどこがポップなのか? それはデビュー作『Body Talk(原題)』以来、ロードからカーリー・レイ・ジェプセンまで、無数のアーティストが世界を席巻したロビンのシンセポップの影響を大きく受けており、我々はこのスウェーデン人スターの音楽が常に身近にあることを意識せざるを得ないのだ。今年、彼女はこの上なくドラマチックに復活した。アメリカの人気ドラマ『Girls/ガールズ』のファイナル・シーズンで流れた「Honey(原題)」を公式にリリースしてほしいと、ファンが1年間懇願した結果の復活劇である。シングルとして「Honey」をリリースした彼女は、9曲収録のフル・アルバムまでリリースした。ポップらしいメロドラマ満載の魅力的な楽曲が、ダンスフロアを満たすゴージャスで催眠効果バツグンのシンセ・サウンドの海の上で漂っている。

3 レディ・ガガとブラッドリー・クーパー『アリー/スター誕生』サウンドトラック
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

2018年のポップ・ワールドは常軌を逸している。きっと今年はそんなふうに記憶されるだろう。レディ・ガガが70年代のソフトロックのファンタジーに舞い戻り、アーティストとしての自分の声を再発見した。彼女が歌う「カリフォルニアの金のように私の魂の奥底に埋没していた」の歌詞の通りに。一方、ブラッドリー・クーパーはロックスター的存在感を示し、ジェイソン・イズベルのバラッド曲「メイビー・イッツ・タイム/Maybe Its Time」で、エディ・ヴェダー的なジャケットが似合い、エディ・ヴェダー的な唸り声を出せると証明した。そして、ステファニー・ジャーマノッタ(レディ・ガガ)はディープ・エステファンのピアノバラッド曲を歌うことで、いかに高尚なアート・コンセプトで音楽を作っても、彼女をレジェントたらしめるのは自称マザーモンスターとしての自身の歌声そのものだと証明したのである。

2位 アリアナ・グランデ『スウィートナー』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

アリアナ・グランデのここ2年間は不運続きと言える。悲劇に見舞われ、失恋し、それらすべてがアルバム『スウィートナー』制作中だけでなく、完成後のプロモーション期間中にも起きた。しかし、彼女が2018年にリリースしたこの作品は、ファレルとマックス・マーティンの主流から外れたR&Bポップ的アレンジによって、酸っぱいレモンが極上のレモネードに変貌を遂げた。クラブで映える「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ/No Tears Left to Cry」、イモージェン・ヒープで埋めた「グッドナイト・アンド・ゴー/Goodnight n Go」は、グランデが最も冒険した楽曲であり、彼女自身の性格が反映している。ありがとう。こんな感じで今後もよろしく。

1位 カミラ・カベロ『カミラ』
ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20
今年リリースされた最もエキサイティングなデビューアルバムがこれで、今後の長いキャリアが期待される最高の土台が出来上がった。アルバム『カミラ』はカベロの主張がはっきりと表れている。芝居がかった素人臭さもなく、自身の歴史をきっちりと踏まえ、見事なまでにキャッチーだ。ヒット曲「ハバナ」がアルバム全体の空気感を決めていて、自身のポップな声色を最大限に活かすために敢えてトレンドを追いかけなかったことが如実にわかる。その代わり、『カミラ』にはロック、オールドスクールのラテンポップ、伝統的なシンガーソングライターらしさが詰まっており、若い女性アーティストとしての等身大の彼女がそこにいる。
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