2018年に開催したワンマンライブはすべて「即完」。2019年1月にはメジャーデビューAL『Sympa』を発表。
高い音楽的偏差値を持って新たなポップスを生み出す4人組は、順調な勢いで音楽界と聴衆の「壁」を壊しにかかっている。ここでは現在発売中のRolling Stone Japan vol.05に掲載された常田大希(Gt.Vo)、勢喜遊(Dr, Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo, Key)のインタビューをお届けする。

ブレイクの一端を担った「映像」

ーKing Gnuにとっての2018年は、高い評価を伴いながら知名度と動員数をものすごいスピードで上げていった1年だと思うのですが、自分たちとしてはどう感じていますか?

常田:まあ、飛躍の1年でしたね。

新井:うん、そうですね。

ー自分たちのなかでは想定の範囲内か、それとも予想以上かでいうと、どちらですか?

常田:個人的には、全然、こんな感じかなってくらいです。勢いが出始めてから着実にやってきたかなと思っています。

ー勢いが出始めたなって、どれくらいのタイミングで感じました?

常田:1stアルバム(『Tokyo Rendez-Vous』、2017年10月リリース)が出た、ちょっとあとですかね。

新井:アルバムを出した後、横浜でのインストアライブの日が台風で、俺らは「(お客さんが)20~30人来てくれたらいいほうじゃないか」って言ってたら、200人くらいいたんですよ。それがわりと一発目の「えー!」って感じで。

勢喜:感動した1個目だよね。

常田:そのあと9月に、「Vinyl」という曲でKing Gnuにとって3本目のミュージックビデオ(以下、MV)を出したんですけど、それからちょっと経ったときのライブですごく熱量が増えたし、曲を知っている人が増えたなって思いました。4月に1本目のMV(「Tokyo Rendez-Vous」)を出したときもちょっと増えたんですけど、アルバムに向けてMVを出していってたので、それが実ったというか。


ーKing GnuのMVは1本目からずっと、常田さんが主宰するクリエイティヴ集団「PERIMETRON」が作っていて、作品性においても、出すタイミングという面でも、かなりこだわりを持ってやってきていますよね。

常田:PERIMETRONは俺が立ち上げたというのもあって、「兄弟チーム」じゃないですけど、スクラムを組んでやってる感じはありますね。King Gnuのことだけをやっているわけじゃないんですけど。

ーこの特集の次のページに出てもらってるTempalayのMVとかも作っていますよね。YouTubeでのヒットが、King Gnuのブレイクの要因のひとつを担っているのではと思うのですが、いかがですか?

常田:どうなんだろうね?

井口:聞いてみたいね、読者のみんなに。どこでKing Gnuを知ったのか。

勢喜:友達とかにも「なんでKing Gnuってそこまでいったの?」って聞かれるけど、答えられない。

常田:タイアップだと変わるなっていう印象はあるけど、それはあくまでボーナスチャンスみたいな。積み重ねでしかないですよね。

ー映像に対する考え方について、まず「出すタイミング」に関して聞くと、通常、アーティストがMVをYouTubeなどで公開するタイミングって、CDの発売前、もしくは発売日当日とか、基本的には作品の発売日合わせで考えることが多いと思うんですね。でもKing Gnuは、アルバムリリース後も定期的なスパンでMVを出し続けてきましたよね。

常田:やっていてすごく感じるのは、曲の消費が早すぎるということで。
「この曲を出したら、次は新曲」みたいな感じで、「いや、この作品を売ってくれよ」って揉めたこともあったりして。1曲に対する消費スピードがあまりにも早すぎるから、MVひとつにしても、大切に、丁寧に出したいと思っていますね。

ーアルバムを出しても、聴かれるのはリリースした週だけ、ということに陥る場合も多々ありますもんね。

常田:そうそう。なのに、すぐに新曲書けとかそんなん、ねえ(笑)。

ーMVを作るときは、PERIMETRONの方たちとKing Gnuの4人が集まって話したりするんですか?

常田:いや、ここ3人に対しては、できたものを「どうだい?」って言って見せて、「おお、いいね」みたいな。聴衆側の目線で見せることがほとんどですね。

新井:俺なんか、メンバーチェックのタイミングを逃して、一般公開のタイミングで見ることがありましたから。「Flash!!!」とかそんな感じ(笑)。

ーそうなんですね(笑)。常田さんはPERIMETRONのメンバーに対して細かくディレクションするんですか?

常田:最近は言うようになりました。1年前とかはわりとざっと見て、提案に対して口出すだけという感じだったんですけど、最近は構成から口出すようになりました。
だからここ最近のほうがクオリティが上がっていると思います(笑)。

ー確かにそれは結果にも表れていて、2018年9月に出した「Prayer X」はもう200万回再生を超えてるし、「Flash!!!」のMVも130万回再生。「Flash!!!」は個人的にも今年見たMVのなかで衝撃的だったもののトップランクに入ります。

常田:ああ、ありがたい。というのも、俺は2017年に出した「Vinyl」のMVが最初気持ち悪くて気に入らなくて。

ー常田さんにとっての「気持ち悪い」ってなんですか?

常田:最初はもっとサムイ演技のカットとか、説明的なカットが多かったんです。もともと(井口)理が歌うカットはなかったし。もしかしたら説明的なほうがわかりやすくて一般層には届くのかもしれないけど、単純に、美学に乗らないカットはなくしたいから、俺は「公開したくない」ってゴネて。そのあと3回追撮して、最後の最後に半ば強引に理を地下の遊歩道で撮って、公開したっていう(笑)。最近は「この予算だとそれは無理がある」みたいなことも大体わかってきて、予算内でクオリティを上げられるところにしか手を出さない、っていうのをすごく考えていますね。

ーミュージシャン本人が、MVのバジェットまで考えてディレクションできるって、今のネット・動画時代において相当強いですよね。

常田:音楽も映像も、ここ1~2年でちゃんとステップアップしてる感じはありますね。
でも、最近すごく考えるのは……MVは、あくまで広告で。音楽を売るための映像であることを意識しなきゃいけないなとは考えているんですよね。自分の表現だと言って落とし込むのは、このフォーマットにおいて正しいとは思わない。でも、かといって、たとえば「Its a small world」のMVは、もっと明るい映像をつけたほうが売れると思うんですけど……理も、笑顔でね(笑)。

井口:白いシャツ着てね(笑)。

常田:いい匂いさせてね(笑)。そんな感じの映像のほうが人気は出るんですよ。

ーでもそうしないのは、美学があるからで。

常田:そうなんです。せめぎ合いですね。「そうしたほうが売れるのはわかってるんですけど」っていう。それは、音楽にしろアートワークにしろ、全部にあります。


ー今後PERIMETRON以外にMV制作を頼む可能性もありますか?

常田:どうかなあ。できれば金は仲間内に落としたいというのがあって。

ーああ、すごく大事なことですよね。

常田:うん、そういう気持ちはありますね。むしろ、King Gnuの作品をきっかけに、他でもたくさん稼いでほしいし。

・続きは現在発売中のRolling Stone Japan vol.05で!

Edited by Daichi Yajima

King Gnuが語る「映像」と「音楽」の関係性

『Sympa』
King Gnu
アリオラジャパン
発売中

トラックはより一層従来のバンド音楽を逸脱していながら、しかし体感としてはさらにポップなものになっているのが素晴らしい。ヒップホップ~ビートミュージック色が濃いトラックの中で、「Sorrows」のようにヒロイックな疾走ナンバーから滲むロックアティテュードもまた、King Gnuの魅力だ。

King Gnuが語る「映像」と「音楽」の関係性

「Rolling Stone Japan vol.05」
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:株式会社ネコ・パブリッシング
発売中
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