アメリカ時間22日、ヴァージニア州リッチモンドにあるストリップクラブSouthside Paper Moonのポップアップ広告が話題を集めた。二大ゲストが出演するという広告で、1人は2000年代初期にエスコート業を運営し、マネーロンダリングと売春斡旋で禁固4カ月の刑に服した「マダム・マンハッタン」ことクリスティン・デイヴィス氏。
対するは、ニクソンの腹心で右派の悪名高きロビイスト、そしてミュラー特別検察官の捜査絡みで証人買収、偽証、司法妨害で1月に逮捕・起訴された元トランプ陣営の顧問、ロジャー・ストーン氏だ。

この広告のスクリーンショットはソーシャルメディア上のあちこちで物笑いの種にされ、威張り腐っていたストーン氏が(かつては純資産額500万ドルと言われていた)ストリップクラブで、入場料25ドルのサイン会とは地に落ちたものだ、と大勢が揶揄した(もちろん保釈金で自由の身となったストーン氏には、好きなように生きる権利がある)。

Holy fuckin shit. This was a pop up ad on an article I was reading for a strip club in my town. Hes appearing at strip clubs. For $25 dollars. Lmao pic.twitter.com/4TNNF5Agxz— Matt (@WhoCare6969) April 22, 2019
だが、ストーン氏の出演で気がかりなのは、このストリップクラブが極右グループのProud Boysを歓迎しているという事実だ。暴力的なこのグループは、南部貧困法律センターからヘイトグループに分類されている。ストーン氏はProud Boysのメンバーではないと否定しているものの、事実上の護衛隊として彼らを起用したことがある。Proud Boysを「ボランティア」として雇ったという噂もあり、ストーン氏がInstagramに投稿したエイミー・バーマン・ジャクソン判事を銃で狙ったかのような暴力的な画像は、こうしたボランティアの1人が提供したものだと証言した。

地元住人は、彼のゲスト出演当日にProud Boysがリッチモンドのストリップクラブにが姿を見せれば暴力騒ぎが起きるのではないかと懸念し、断固反対の声を挙げている。昨年、Proud Boysの創始者ギャビン・マッキンズ氏のスピーチの後でProud Boysがニューヨーク市の反ファシズム運動家たちを襲い、メンバー10人が逮捕されたことを考えれば当然だ。

とはいえ、今回はストーン氏にしてはいささからしくない――ボブ・ドール氏やロナルド・レーガン元大統領のような堅苦しい家族観の保守派を含め、何十年も右派候補者の選挙戦で暗躍してきた自称「卑劣な詐欺師」が、ストリップクラブに出演して25ドルでサイン会とは。もっとも、彼はアダルト業界にもコネがあり、自分でも派手な性生活を謳歌していると豪語していたから、特別驚くことではない。

広告に登場していた「マダム・マンハッタン」ことクリスティン・デイヴィス氏とストーン氏は長い付き合いだ。デイヴィス氏が2010年と2013年、それぞれニューヨーク州知事選、ニューヨーク市会計監査官選に出馬した際、いずれもストーン氏が顧問を務めた。
また彼は、彼女の末息子の名付け親でもある(ストーン氏いわく、両者の関係はプラトニックだそうだ。2018年8月Instagramの投稿で、彼にデイヴィスの息子との血縁関係を尋ねたとされるFBI捜査官を非難した)。

昨年、FBIは2016年の大統領選に絡んでストーン氏に対する捜査を開始。Guccifer2.0というハンドルネームの人物とのやり取りを中心に捜査が進められた。ストーン氏と親しかったデイヴィス氏は、ミュラー特別検察官の捜査で召喚を受け、2018年8月に大陪審の前で証言し、ストーン氏に対するFBIの捜査を「魔女狩り」と呼び、さらに「ロシア介入に関しては何も知らない」と証言した。また、1月にストーン氏がフォートローダーデイルで逮捕されたのとほぼ同時期に、FBIの家宅捜索を受けていた。

デイヴィス氏とストーン氏にはもうひとつ共通点がある。2人ともレイニー・スパイザー氏が広報を担当しているのだ。アダルト業界ではベテランで、数々のアダルト出演者の広報を担当するほか、有名コメディアンやラジオ・パーソナリティ数名もクライアントに抱えている。ストーン氏とは長年の友人でもある彼女はローリングストーン誌に宛てたメールで、現在ストーン氏の広報を担当していること、Southside Paper Moonから出演オファーがあったことを認めた。

「ロジャー・ストーン氏はヴァージニア州リッチモンドのジェントルマンズ・クラブに出演します。今回の出演は、彼が長年、何度となく訴えてきた言論の自由、憲法修正第1条、そして表現の自由と通じるものです。
訴訟費用支援募金のために出演するのです」と彼女はストーン氏に代わって声明を発表した。なぜよりによってストリップクラブをブッキングしたのかという質問に対してスパイザー氏は、訴訟費用を募るにあたり「ジェントルマンズ・クラブに限らず、あらゆるところからオファーをいただいています」と答えた。「ただ、一般的にジェントルマンズ・クラブは、彼が支持する言論の自由、マリファナの合法化、LBGTQの権利に関心を示しているように思います」

View this post on InstagramStill true! This is what I will prove in my trial in November with your help. Get your #rogerstonedidnothingwrong T shirt or Sweatshirt or hoodie at 1776. shop #maga 1776.shop #trump 1776.shop Roger Stoneさん(@rogerjstonejr)がシェアした投稿 - 2019年 4月月23日午後3時26分PDT
たしかにストーン氏は以上3つの主義を公に支持してきたが、3つの主義を唱える人々の多くが、彼がかつてトランプ政権とつながっていたことを理由に、彼との関わりをきっぱり否定していることは注目すべきだろう。トランプ政権は報道の自由を容赦なく攻撃し、全国レベルでのマリファナ合法化を断固阻止し、反LGBTQ法案を推進している。

他の団体から出演依頼があったどうかについてスパイザー氏は言及しなかったが、ストーン氏が必要に迫られているのは明らかだ。本人も一度ならず公言しているように、彼は一文無しなのだ。「ロシア疑惑、共謀、あるいは反逆罪で起訴されるという無責任かつ誤った報道が2年間も続いたことで、ロジャー・ストーン氏は財政的に打撃をうけ、破産寸前に追い込まれました」と、彼名義の声明文が出された。「彼は、本格的に裁判で争うために必要な200万ドルを募金に頼るほかはないのです」。膨大な訴訟費用により、ストーン氏と妻はフォートローダーデイルにある月9500ドルの豪邸を出て、1ルームマンションに引っ越さねばならなくなった。また資金集めのために、直筆サイン入りの石、もとい「ペーパーウィエト」を自分のWEBサイトで販売するなど、知恵を絞り出さなくてはならなかった。それも「トランプ支持者、ネット戦士、ストーントゥルーパー(本人はロジャー・ストーン支持者をこう呼んでいる)にうってつけの贈り物」とのうたい文句付きで(ちなみに彼は、ミュラー捜査に関して一切公言してはならないという箝口令にも関わらず、「ロジャー・ストーンは何も悪いことをしていない」と書かれたTシャツまで販売している。「RAPE」の文字と一緒に、にっこり微笑むクリントン元大統領がでかでかと描かれたTシャツも絶賛販売中)。


彼の深刻な懐事情と、起訴内容の重大さを考えると(有罪判決になれば1~5年の禁固刑)、ストーン氏は明らかに苦境に陥っている。だとしても、彼のために涙を流す必要はあるまい。最近も懲りずに、自らを「神の使い」だとぬかしたのだから。Southside Paper Moonのマイク・ディキンソン企画部長は今度のストーン氏の出演料について、正確が額面を挙げることは拒んだものの、ニュースサイトDaily Beastに対してこう述べた。「かなりいい額をお支払いしている、とだけ言っておきましょう」
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