※この記事は2018年9月25日に発売されたRolling Stone Japan vol.04に掲載されたものです。
川上洋平、ロックのスタンダードを更新するリアリスト
「世界的なロックスターになりたい」――[ALEXANDROS]の川上洋平はバンド結成以来、このともすると虚勢にすら聞こえかねない途方もない夢を掲げ続けてきた。しかし、彼が瞳を輝かせながら語り・創り・奏でる音楽が2018年の今、時代にこれだけ求められるのはロックンロールの幻想、ロマンチシズムへの憧憬というような甘ったるい理由がすべてではない。約20年以上という、人一人の人生に置き換えても、決して少なくないまとまった時間を表現活動に注ぎ込み、着実に淡々と歩みを紡いできた[ALEXANDROS]の音楽を人々は切実に希求している。暗く澱んだ海の向こう側、微かに、しかし確かに輝く灯台の光にも似た心のともし火のように。
2018年秋、[ALEXANDROS]は2年ぶりのニューアルバムをリリースし、海外での活動を本格化させる。今回、ニューヨークでレコーディングを敢行し、ほぼすべて現地で書かれたという収録曲は世界基準のロックンロールの最新型でありながら、どこかオリエンタルで日本的な情緒も湛えた先鋭さとポップネスが同居する傑作である。
ーまず、2018年8月16日にZOZOマリンスタジアムで行われた「VIP PARTY 2018」について伺いたいんですけど、初のスタジアム・ワンマンだったわけじゃないですか? でも、驚くほど、皆さん、ステージ上で落ち着いていたように見えて。以前にイベントなどでプレイしたことのある会場とはいえど、バンドとしては記念碑的なライブだったと思うんですよね。
もちろん興奮みたいなものはありましたけど、4曲目の「Shes Very」を演奏しているときぐらいに、「あ、俺たち、まだまだ道の途中なんだ」ってことに気づいたんですよね。ヒロ(磯部)が「東京ドームとか、もっとデカいところでやりたいですね」とかMCで妙に冷静に語ってましたけど(笑)。スタジアムで今この瞬間やってるって感慨を、この先に何かが待っているっていう気持ちのほうが追い越していったんです。
![[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FRollingStone%252FRollingStone_30792_b3b7_2.jpg,quality=70,type=jpg)
Photo by 河本悠貴
ーセットリストは、インディーズ時代から今に至るまでのバンドの歴史を振り返っていくような内容でした。必然的に新曲群がライブのクライマックスで披露される構成になっていましたよね。
正直、ちょっとだけ不安だったんですけどね。「ワタリドリ」を披露したときと同じぐらい新曲の「LAST MINUTE」で自然に歓声が沸いたので、安心しました(笑)。
「まだまだ、道の途中なんだ」という気づき
ー秋にはその新曲が収録されたアルバム『Sleepless in Brooklyn』がリリースになることが発表されましたね。先に何曲か新曲の素材を聴かせていただきましたが、「アルペジオ」も「Your Song」も、本当に素晴らしい楽曲で。これ、お世辞でもなんでもなく最高傑作になりそうですね。
まだ、最終調整中なので完成しないとなんとも言えないですけどね。でも、今の時点で既に作ってる自分たちすら興奮するような曲やサウンドができてきているんで、期待に応えて、想像を超えるアルバムになってるんじゃないかと思います。
ー「新次元」や「異次元」という言葉が相応しいものなんじゃないかと思います。それでいて、ロックンロールの新たなワールド・スタンダードを立ち上げている楽曲ばかりな気がします。
今回、東京ではなくニューヨークで楽曲を作っていたので、それが影響しているんじゃないかな。別の世界・次元の音が鳴ってるなって自分でも思いますね。洋楽しか聴いてこなかった自分が、一人のリスナーとして聴いても大丈夫なサウンドを作ろうというのは、ずっと考えていましたね。
ーロンドンやベルリンあるいは、アメリカの中でもロサンゼルスやシカゴではなくて、敢えてニューヨークという場所にした理由はあるんですか?
確かに「ロサンゼルスのほうがいいんじゃない? 盛り上がってるよ」って言われたりもして、考えたんですけど。ロックンロールが盛んな西海岸みたいな土地柄だと、影響されすぎてしまう気がして。それよりは、ジャンルレスに音楽が盛んな場所で作ってみたいなって思ったんですよ。ニューヨークはいろんなジャンルの音楽が共存しつつも、滞ってたり、過激に進化してたりって感じが面白いなーって。
ーでも、洋楽オリエンテッドというか「まんま」のサウンドではないですよね。先鋭さと、ポップネスみたいなものが同居しているなと思いました。既に出た「KABUTO」や「Mosquito Bite」とかもそうですけど。
確かに、それに関しては特に意識しましたね。「Mosquito Bite」は、ブログにも書きましたけど、リフの感じはもっとファンク寄りだったんですよ。でも、バンドで合わせたらしっくりこなくて。ロックンロールの定型のようなリズムやビートに乗せたら、ロイヤル・ブラッドやクイーンズ・オブ・ザ・ストーンエイジのようなムードが出てきたんです。サウンドはささくれてるけどハード・ロックではなく、リフが立ちすぎてるわけでもなく、スタイリッシュなところはきちんと残っている曲……感覚的な部分なので説明するのはすごく難しいんですけど(笑)。
ー確かにロックンロールなんだけど、ガレージやパンクの雰囲気もあって。でも、グルーヴはあるという曲です。「Mosquito Bite」は英語詞ですけど、今回のアルバム、日本語詞の楽曲も多くなりそうですね。海外での成功を目標として掲げているバンドとしては意欲的な挑戦だと思うんですが。
川上 海外でレコーディングをしてみて、気がついたんですけど、やっぱり僕らがこれまで日本で培ったこととか、個性は消しちゃいけないなって思ったんです。俺、実はくるりやはっぴいえんどやユーミンがすごく好きで。ああいう日本的なオリエンタリズムやオリジナリティを持ち合わせながら、普遍的な楽曲や構成やメロディ・ラインを持つ音楽家って、常々尊敬していて。自分もそういう部分をしっかり出していかないといけないなって思ったんです。
日本のバンドなんだし、完全に海外に寄せてもツマんない
ーそういう日本的な部分は敢えて「封印」していたと過去のインタビューでおっしゃっていましたよね。
海外という環境に身を置くことによって、自分の得意とするところがわかってきたんです。「LAST MINUTE」が、そのきっかけですね。あの曲は英語詞でずっと進めていたんですよ。
ー「VIP PARTY 2018」では、新曲の歌詞をスクリーンに投影していましたよね。あれって、今までなかったことなんじゃないかと。正直、驚きました。しかも、英語ではなく、日本語詞だけ。
初めてですね。単純に今の歳になって歌詞を聴いてほしいんだ、読んでほしいんだって思うようになったんですよね。一番時間かけてるし(笑)。日本語ってロックに合わないとか、メロディに乗せると英語で歌うのには敵わないって言われてますけど、字面にすると美しいし、一語一語のインパクトは英語よりもあるんじゃないかな、と思うんです。先ほど挙げた日本のアーティストの皆さんのように、メロディの譜割は少ないながらも、そのインパクトが活きている楽曲の作り方にはずっと憧れていて、自分もそういうロックンロールをやりたいなと。
ーでも、海外、特にアメリカは英語で歌われていない音楽に対して厳しいですよね。PSYの「江南スタイル」はヒットしましたけど、基本的に音やリリックに中毒性があって、アーティストのキャラクターも奇抜で……ってものじゃないとウケない。
英語詞よりも日本語詞を受け入れてくれる土壌っていうのもアメリカではあると思うんですよ。ある種のオリエンタリズムへの憧れというか。そういう部分をオリジナリティとして出しつつ、甘んずるところなく英語詞で真っ正面から挑戦していきたいなという思いもあって。活動していればいいバランスが見えてくる感じがするんですよね。日本のバンドなんだし、完全に海外に寄せてもツマんないよなって思うし。逆に「日本人です!」って過度にアピールするのも、それはそれでめちゃくちゃダサい。
![[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FRollingStone%252FRollingStone_30792_295a_3.jpg,quality=70,type=jpg)
Photo by OGATA for Rolling Stone Japan
ー先ほどの自分たちの「強み」の話につながってきますね。日本のバンドとして海外で活動していく上での指針がレコーディングを通して徐々に見えてきたんでしょうか。
そうですね。実際に海外の音楽文化に生でどっぷり触れたことによって見えてきたものがたくさんあったんですよね。以前は勝手にアメリカって国とかニューヨークって街は「人種のるつぼ」って言われるぐらいだし、いろんなものの垣根が取っ払われた場所だと思ってたんですよ。例えば、コンサートに行ったら人種のダイバーシティは様々だけど、みんな一つの音楽で盛り上がっているというようなイメージを持っていた。でも、実際は全然違う。サグいヒップホップのライブに行ったら、アフリカン・アメリカンの人たちが多かったし、イマジン・ドラゴンとかクイーンみたいなロックンロールのショーだと、やっぱり白人の人が多い。ってことは……。
ー自分たち海外でライブをやればアジア人が多くなることも、想像がつくということでしょうか?
そうなってもおかしくないし、現実を見るならその可能性のほうが高いと思うべきで。実際、日本のバンドがアメリカでライブをやると必ず「日本人ばっかりだった」って話が出てくるじゃないですか。昔は「絶対、俺らはそんな風なバンドにはなりたくない!」って思ってましたけど、やっぱり冷静に考えてみると、それも現実なんだよなって思って。究極的なことを言うと音楽って、地域密着型のカルチャーであるとも言えるから、本当は海外進出なんかせずに、自分たちの身の回りの人たちに楽しんでもらえればいいんじゃないかって思ったりもするんです……でも、やっぱり、洋楽への憧れから音楽を始めているので、世界中の人に聴いてもらいたいって思いは捨てられないんですよね。とは言いつつ頭でっかちでも仕方ないですから。とりあえず「これが俺らが作った最高にカッコいいサウンドだから」って聴いてもらうところから始まるのかな、と。
ー「日本のバンドが海外で活動をする」ということの意味合いもこの数年で変わりましたし。常識を[ALEXANDROS]が変える可能性は十分ありますよね。
確かに、それに日本の洋楽をめぐる国内の状況も大分、変わりましたからね。懺悔みたいになっちゃいますけど、僕らの1stシングルの「city」って実は当時流行っていたいわゆる「邦ロック」というものを思いっきり揶揄して作った曲なんです(笑)。「今、日本で流行ってるバンドって、こんな感じのサウンドで、こんな感じの歌詞だよね」っていう。10年ぐらい前の俺みたいないわゆる「洋楽厨」は当時の日本のロック・シーンに対して、そういうスノッブな見方をしていた。それぐらい洋楽のリスナーと邦楽のリスナーの間の分断は深かったわけですよ
ロックンロールにこそ未来がある
ーその空気感、よくわかります。例えば、洋楽アーティストのオープニング・アクトとして出てきた日本のバンドって冷遇される傾向にありましたよね。酷いとまったく拍手すら起きないなんてことも……。
そう! いや、だから、あの頃に勇気を持って海外のアーティストとライブをやっていた人たちのことはみんな尊敬してますね。THE YELLOW MONKEYとかNORTHERN BRIGHTみたいに前線に立って闘ってきた人たちがいなかったら、今のSUMMER SONICやFUJI ROCK FESTIVALにあるような「洋邦関係なく、音楽を楽しもうじゃないか」みたいな最高のヴァイブスって生まれなかったんじゃないかなって。僕らもプライマル・スクリームやカサビアン、ミューズとライブをやらせてもらったんですけど、オーディエンスは僕らが一般のリスナーだった頃と違って優しかったし受け入れてもらえた。これだけラディカルな変化が日本でもあるんだから、海外でそれが起きてもおかしくないですよね。
ー今、お話伺ってても出てくるアーティストがロックンロールだけじゃなくて、ブラック・ミュージックのアーティストも多くて。ロックンロールって音楽ジャンル自体がメインストリームとは言い難い状況にあって、その中で世界で通用する音楽をロック・バンドが作って、その上で成功するためにはどんなストラテジーがあると思いますか?
俺は逆にニューヨークでいろんなライブに行って、ロックンロールにこそ未来があるなぁって思いましたね。レイ・シュリマーみたいなヒップホップ・デュオが流行っている状況でも、ロック・バンドはまだまだ活躍できる。なぜなら、自分もそうですけど、ロックンローラーがそういう今流行っている音楽の要素も吸収していけば、どんどん進化できますからね。アークティック・モンキーズの『AM』ってアルバムとかロイヤル・ブラッド、ポスト・マローンなんかはそういう研究の最新の成果と言えるかもしれない。
ーリバイバルや伝統芸的な感じではなく、現行のポップ・ミュージックのコンテクストも取り入れて、温故知新の……あるいは斬新で奇抜な発想のロックンロールが生まれてくる可能性がある。と。
ミュージシャンとしては、ロックンロールって歴史の繰り返しの中でしか生き残れないジャンルになってしまったのかな、って思ったこともあったんです。2000年代に入ってスタイリッシュで賢い雰囲気だけが先行する音楽が増えて、例えば90年代後半のバカっぽくて無邪気なブリティッシュ・ロックのような感じ……まあ、オアシスとかなんですけど(笑)、そういう無限大のパワーが有り余ってる感じがロックンロールから消えてしまった。でも、それが最近また変わってきている感じがして。賢さが一回りして、もっと純粋にいろんな音楽を聴いてきたミュージシャンがロックというフォーマットに興味を持ち始めている気がして。リスナーもそうなんですよ、フラットになってきているから「ロックって私、聴かなかったけど、これはいいじゃん」ってEDMとか好きなギャルに思ってもらえるような音楽が作れる土壌になってきたかもなって期待しています。
ー今度のアルバムはその第一歩といってもいいアルバムかもしれないですね。
「Mosqutio Bite」のYouTubeのコメントを読むと「ノリ方がわからない」とか「テンポが遅すぎてダサい」「ロックンロールとして要素が足りない」とか書いてあるんですけど、こういうこと書いてくれるの実はすごくうれしくて。それって聴いてくれてる人には明確なロックンロールの形があって、それと合致していないから僕らの曲を気に入らないって思ってるわけですよね。「違うんだよ、これが新しいロックンロールなんだ!」って、いわば、宣言ですよね。「これが新しくてカッコいい最新型のロックンロールなんだ」って噛み砕いてもらえるようになったら、僕らがスタンダードになったってことで。そうなったら、マジで最高ですよね。
ー[ALEXANDROS]って、ずっと「世界的なロックスターになること」って目標を掲げてきてたわけじゃないですか。グラストンベリー・フェスティバルのヘッドライナーをやるとか、具体的なこともおっしゃっていましたよね。
そうですね。
ーでも、遡れば2008年にジェイ・Zがグラストンベリーでヘッドライナーを務めて。最近で言えば、ビヨンセがポップ・ミュージックの歴史を変えるような凄まじいライブをコーチェラのステージから全世界に叩きつけた。こういう傾向をみると音楽フェスでもロックンロール・バンドの存在感って薄くなっているじゃないですか。先ほどの話にも通じますけど、そう考えると「世界一のロックスター」って今、口にすると虚しく響くような言葉でもありますよね。
でも、ビヨンセもジェイ・Zもロックスターじゃないですか。ロックスターの定義っていろいろあると思いますけど、ギターかダンスかって表現のツールの部分は実はどうでもよくて。そのレベルまでいくと、ジャンルって存在しないに等しいんじゃないかな、と。実際、ビヨンセだってジャック・ホワイトやジェイムス・ブレイクとコラボした曲だってあるじゃないですか。「世界中の誰もが知っているアーティスト」って表現のほうが正確なのかもしれないですけどね。ロックっていう思想が入ってくると、どうしても誤解を生みがちなんですけど。もちろん、ロックンロールってカウンター・ミュージックだし、ジャンルとしては確かに衰退しているから……全体を底上げしていきたいって思いも、もちろんありますよ。
僕らは、実は現実主義者
ーその目標にたどり着けない未来を想像したことはありますか?
もちろんあります。僕らは理想主義を信奉しているようにみえて、実は現実主義者だから。でも、人間って突き詰めればシンプルなものが一番強いじゃないですか、現実的に考えても。「世界一のロックスターになる」という途方もない夢を心の底から信じている、という状態は実はとてもプラグマティックなマインド・セットなんじゃないかなって。現実主義って醒めてたり、自分たちには無理だって思うこととは違うと思うんですよ。たまにイベントとかに参加すると思うんですけど、ロック・バンドが、みんな醒め切ったマインドで音楽をやってるような気がして。「うちらは別に下北でちやほやされてれば……」みたいなのふざけんじゃねぇよって思うんです。EDMが爆発的に流行って消えていったように、そういう変化の波はどんどん早くなってる。「ロックなんか下火」って言われるほうが、逆に燃えるじゃないですか「中指突きつけてやろうぜ!」って思うんですけどね、なかなか仲間がいない……。
ー[ALEXANDROS]には孤高という言葉が似合う気がします。歌詞のことについても伺いたいんですけど。最近、日本のポップ・ミュージックの歌詞は殊更に共感を強化する応援歌の要素が強くなっているような気がして。[ALEXANDROS]の場合は、どのようなストーリー、あるいはメッセージを伝えようとしているのか、ということを伺いたいのですが。
今のいわゆる日本の「ロックスター」たちの書く歌詞って誤解を恐れずに言えば、正直なところ「説教くさいな」って思うんですよ。自分の言葉に陶酔しちゃってる感じがすごく苦手で。お客さんに「何歌ってんのか、全然わかんねぇよ、ふざけんな!」ってケンカ売られるぐらいの内容でいいんじゃないかなって(笑)。でも、自分勝手でやりたい放題なリリックこそが理想ではあるんですけど、自分が書くものが「そうだ」とは言い切れないところはありますよね。ステージに立ってるときや曲を書いているときは、自分のことを王様だって思ってるし、世の中に出す曲は全部「俺の言ってることを聞けよ!」って宣言そのものなんですけど、ファンの人の人生全部には責任負うことは正直できないですからね。今、つらい人や苦しい人もいる中で安易に「お前も夢を追いかけろよ!」とか、そんなことは軽々しく言えないですよ。僕はよく、ライブのときに「こんな曲なんか捨てちゃって、自分の人生を楽しんでください」ってMCで言ったりするんですけど、唯一、メッセージを掲げないバンドである[ALEXANDROS]が社会に、世の中に対して言うことがあるとしたら、そこかなって思ってます。自分の人生を主人公として楽しんでほしいという思いです。
![[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FRollingStone%252FRollingStone_30792_3dfc_4.jpg,quality=70,type=jpg)
Photo by OGATA for Rolling Stone Japan
ー[ALEXANDROS]の歌詞って、私小説的な趣のあるストーリー仕立てのものから、抽象的あるいは幻想的な歌詞まで幅広いレンジがあると思うんですね。でも、どこかで馴れ合いを拒否しているところがあると思う。「これは自分の物語なんだ」と、主張している部分が、どの歌詞にもある気がします。川上 SNSで個人がこれだけ発信する時代ですからね。みんな、自分自身のこと大好きじゃないですか(笑)。ブルーノ・マーズがステージで歌って踊ってるのを観るよりも、彼のライブに参加してる自分たちを撮ることの方が大事なんですから。それを自立って言い換えることもできるし。
ちなみに、ちょっとトリッキーな質問なんですけど川上さんが「恋愛」について、ほとんど書かれてないのはなぜなんですか? ニューアルバムに収録される「Your Song」も「アルペジオ」も、自分自身の闘いや音楽そのものへの愛情を歌っている歌で。ほかの収録曲がどうなのかわからないですけど、少なくとも今までのディスコグラフィーの中では幸せな恋愛の歌はほとんどない……微妙な話題ですが(笑)。
うーん……恋愛以上に書きたいことがあるからじゃないですかね。本当のところをいうと、あんまり興味がないのかもしれない(笑)。恋愛って意外と自分の中で昇華できちゃうんですよ。解決できないグチャグチャしたもののほうが歌にしやすくて。失恋について書いてきたのはそういうことですね。
ー川上さんが考える恋愛観とかやっぱり気になりますけどね。鋭い視点を持ってらっしゃるから。
メンバーにも書け書け言われるんですけどね。ファンの皆さんも「Leaving Grapefruits」みたいな失恋の歌を好きでいてくれますし書かなきゃいけないんだろうけど、家に一人で帰って、「うぅ……」って思うことは、やっぱり、自分がどうやったらここから這い上がれるんだろうなってことだから。
毎日、普通に生きているからこそ、音楽が作れる
ー書けたときには、何か揺れ動くことがあったときだと考えてもいいんですかね?
いや……っていうよりも、書けるんだったら、僕だって書きたいんですよ、恋愛の歌詞(笑)! こんなこと言ってると、俺がめちゃくちゃモテてて、うまくいってるから、恋愛を歌にする気はないみたいな言い方ですけど、そんなことまったく無いんです。いつか書けたらいいですよね、とは思います。
ー恋愛が必要ないのって、もしかして、10有余年の時間を一緒に過ごしているバンド・メンバーがいるからだったりしますか? 「一生、(バンドを)続けようぜ」ってグルーヴを共有していると以前、インタビューでおっしゃってましたけど。
いや、実は俺、今、それ全然ないんですよ。例えば俺の才能が枯渇したり、喉が使えなくなったりしたら容赦なくクビにしてくれていいよって本気で思ってますから。つまり、それぐらい[ALEXANDROS]っていう屋号を大事にしようって思うようになってきたってことです。そりゃこの4人じゃなきゃダメだって思ってますよ、でも、それを言っちゃうと、甘えになっちゃうじゃないですか。「俺はもう弾けない・歌えないから、代わりにこいつを連れてきた! [ALEXANDROS]を続けてくれ!」ぐらいの気概を持っているほうがいい音楽を作れると思うんですよ。
ーこの数年間、バンドを取り巻く状況が一気に変わっていったと思うんですけど、川上さんからみてメンバーの変化って気づくところってあります?
成長はもちろんありましたよね。でも、根本的なところは変わってないんじゃないかな。悩みどころですよね……根本的な部分を変えないとたどり着けない場所もあるけれど、それを変えてしまったときに失われるものや変えようと思っても変えられないものってありますから。偉そうにいってますけど、メンバーやスタッフに対してというよりも、自分自身に対して一番、悩んでます。変わるべきなのか、変わらないでいるべきなのかって。
ー良くも悪くも、[ALEXANDROS]が描く未来のその先を一番はっきりと見据えているのは、おそらく川上さんですもんね。
そうかもしれないですね。毎日、課題をクリアしながら、次に向かって挑み続けている感覚です。やっぱり36歳とかになって、ある程度、キャリアも積み上がってきて、スタジアムでやるバンドにまでなると、何かキツい一言を周りに言うのってとても勇気がいるんですよ。それは、ある程度、自分たちのいる場所に満足しているからで。そこで立ち止まって「一旦落ち着こう。俺たちはまだまだクソ。全然、たどり着いてない!」ってあらためて確認をすることが大事だと思うんです。気づかずにいたら、どんどんダサくなっていきますから。
ーさっきの恋愛の話じゃないですけど、やっぱり川上さんの場合、生きることの中心が音楽やバンドとコネクトしているんだなぁ、と。そういうものを取っ払ったときに、人生において一番大事にしているものってなんだと思いますか?
いや、でも俺、別に音楽が人生で一番大事なものだなんて思ってないですよ。
ーあ、そうなんですね……!
好きなものを食べて、好きな映画を観て……最近、ネコを飼い始めたんですけど、すごく可愛いんですよ! そのネコや家族を大事にすること、つまり俺が人生で大事にしていることは、ごくごく普通に生きるってことですよね。毎日、普通に生きているからこそ音楽が作れるわけですから。「NO MUSIC, NO LIFE」じゃなくて「NO LIFE, NO MUSIC」。音楽の前に生活がある。取っ払うまでもなく、生きることそのものが一番大切です。
YOOHEI KAWAKAMI(川上洋平)
[ALEXANDROS] のヴォーカル、ギター。神奈川県出身。2001年に大学でバンドを結成。[ALEXANDROS] のほとんどの曲で作詞・作曲を手がける。9歳~14歳までは中東の国で過ごし、インターナショナルスクールに通っていた。ブログで独自の映画賞”カワカミー賞”を選出するほどの映画好きで、年間200本鑑賞を目標としている。
![[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FRollingStone%252FRollingStone_30792_29dc_5.jpg,quality=70,type=jpg)
「Pray」
[ALEXANDROS]
※映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版主題歌
ユニバーサルJ
配信中
Sleepless in Japan Tour
5月18日 愛知県 ポートメッセなごや 3号館
6月15日 埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
6月16日 埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
・Asia Tour
Sleepless in Shanghai
6月21日 上海 MODERN SKY LAB
Sleepless in Beijing
6月23日 北京 Beijing Omni Space
Sleepless in Jakarta
6月28日 ジャカルタ To be Announced
Sleepless in Bangkok
6月30日 バンコク Moon Star Studio 1
Sleepless in Hong Kong
7月5日 香港 Music Zone @ E-Max
Sleepless in Taipei
7月7日 台北 Legacy Taipei
Sleepless in Kuala Lumpur
7月19日 クアラルンプール Bentley Music Auditorium
Sleepless in Seoul
7月21日 ソウル MUV HALL
[ALEXANDROS] オフィシャルHP
https://alexandros.jp
![[ALEXANDROS]川上洋平の信念 「世界一のロックスターになる」という途方もない夢](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FRollingStone%252FRollingStone_30792_a9b9_6.jpg,quality=70,type=jpg)
Rolling Stone Japan vol.05 掲載