ニューヨークのメトロポリタン美術館は、圧倒的な歴史的アート作品が集まる場所だが、今年4月8日からは、今までと異なるタイプの作品が展示されている。『Play It Loud: Instruments of Rock & Roll(プレイ・イット・ラウド:ロックンロールの楽器展)』には、ここ約60年のロック史に残る数々のギター、打楽器、キーボード、アンプ、そしてポスターまで、象徴的なものからあまり知られていないものまで集められている。ここでその一部を紹介する。
1. KISS ポール・スタンレーの割れた鏡のアイスマン・ギター

Courtesy of The Victoria and Albert Museum
ステージでの小道具を敬遠するタイプではないKISSのポール・スタンレーはミラーボールのようにステージの照明を反射する「ピックアップのところを強打したような鏡張りのギター」のアイデアを持っていた。アイバニーズ・ギターのジェフ・ハッセルバーガーがその任務を引き受け、手作りで鏡の破片を散りばめた。このギターは1970年代後期に使用されていたが1996-97年のキッスの4人のリユニオン・ツアーでも再び使用された。
2. ジェリー・リー・ルイスの金色の小型グランドピアノ

Courtesy of the Metropolitan Museum of Art
ステージ上のジェリー・リー・ルイスは時にピアノの上でジャンプするような、伝説になるほどの激しいミュージシャンであった。しかし、ルイスは家ではより繊細なモデルを好んだ。この1955年製の金色に塗られたピアノは1957年から2017年までの間、ルイスの自宅用として使われていた。
3. レイ・マンザレクの電子オルガン、ヴォックス・コンチネンタル

Courtesy of the Rock & Roll Hall of Fame
1964-65年頃に作られレイ・マンザレクが所有したこの40ポンド(約18kg)の”コンボオルガン” ヴォックス・コンチネンタルはザ・ドアーズのサウンドに不可欠なものであった。一般的なキーボードとは異なり、マンザレクは白と黒の鍵盤の色を逆にした。
4. セイント・ヴィンセントの『マスエデュケーション』エディション・エレキ・ギター

Courtesy of St. Vincent
この楽器展において最も新しい展示楽器の1つ、セイント・ヴィンセントのシグネイチャー・ギター”St. Vincent HHH『マスエデュケーション』スペシャル・エディション・ギター”は2017年に作られた。
5. ジェリー・ガルシアの「ウルフ」エレキ・ギター

Courtesy of Guernseys, New York
ギターの限界を超えるためにジェリー・ガルシアは1972年にギター職人のダグ・アーウィンにこの「ウルフ」ギターの製作を依頼した。キルテッド・メイプルとフレイム・メイプルで作られたこのギターは1973年から1979年までのガルシアのメイン使用のギターとなった。「ウルフ」はガルシアにとってMIDIを扱える初めてのギターであり、このギターで他の楽器のような音を出すことが可能になった。
6. エディ・ヴァン・ヘイレンのフランケンシュタイン・ミニ

Courtesy of the Metropolitan Museum of Art
特に「暗闇の爆撃」で目立っていたエディ・ヴァン・ヘイレンのハンドメイド・ギターのオリジナル版にはフェンダー型のボディにギブソン・ギターのネックとピックアップが使われていた。当初の1975年には白くスプレーでペイントされていたが4年後、赤のシュウィンのバイクの色にペイントし直された。1983年まで使われていた。
7. ジミ・ヘンドリックスの「ラブ・ドロップス」フライングV

Courtesy of Rock & Roll Hall of Fame
1967年から1969年にかけてのジミ・ヘンドリックスのメイン・ギターの1本であるこのギブソンのギターは『エレクトリック・レディランド』で、特に「見張塔からずっと」のソロ・パートで使われているものとして知られているものである。ヘンドリックスはマニキュア液を使って自分でこのギターをペイントした。
8. アクリル樹脂で固めたピート・タウンゼントの大破したギブソンSGスペシャル

Courtesy of the Metropolitan Museum of Art
1973年、アニー・リーボヴィッツとのローリングストーン誌の写真撮影中、ピート・タウンゼントはイギリスのイーリング・アート・カレッジで「自己破壊的芸術」を学んだ日々に立ち戻り、「ギターを破壊するための17のステップ」の記事の一部としてギブソンのギターを大破させたのである。その残骸から作られたこの立体アート作品は何十年もの間ローリングストーン誌の社内に展示されていた。
9. クラレンス・クレモンズのマークVIアルト・サックス

Courtesy of the Rock & Roll Hall of Fame
クラレンス・クレモンズの10を超える管楽器のコレクションのうちの1つであるこのマークVIアルト・サックスは1967年製のものである。クレモンズはこのサックスをEストリート・バンドのライブや『明日なき暴走』の「涙のサンダーロード」や「ジャングルランド」などのソロで使っていた。このサックスは彼の死後、Eストリート・バンドに加入した甥のジェイク・クレモンズによって寄贈された。
10. スティーヴ・ミラーの独特なベース

Courtesy of Steve Miller
楽器の熱心なコレクター、愛好家であるスティーヴ・ミラーは、この楽器展が説明するところの「木製の楽器に起こる歪みを避けるため」に、軽量なアルミ・チューブ製フレームのベースを考え出した。そうしてできたのがこの1995年製のF4Bベースである。ペグヘッドがないのに注目してほしい。
11. エルヴィス・プレスリーのD-18アコースティック・ギター

Courtesy of Jules Frazier
1942年製のこのマーティンD-18はエルヴィス・プレスリーが1955年にサム・フィリップスとサン・レコードの下で初期のレコードをレコーディングした時に使用したものである。今は”S”が剥がれ落ちてしまっているが、誰が見ても所有者がわかるようにプレスリーは(名前の)文字のステッカーを貼り付けていた。