BiSHが2019年7月2日と3日にわたり、「LiFE is COMEDY TOUR」のセミファイナルとファイナルをZepp Tokyoにて開催した。グループ史上最多となる全14カ所22公演を巡ってきたBiSH。
セミファイナル、ファイナル共にメンバーのハシヤスメ・アツコのソロデビュー曲を披露したり、ファイナルではBiSHが所属するWACKのアイドル育成プロジェクトWAggがオープニングアクトで登場したりするなど、満員の観客たちとともに盛り上がりを魅せたライブをレポートし考察する。

2019年4月よりはじまったBiSHのライブハウスツアー「LiFE is COMEDY TOUR」。約3カ月かけ全国14カ所21公演を行なってきた6人が見せたパフォーマンスは、BiSHが「楽器を持たないパンクバンド」であることを明確に示すものとなった。

本ツアーは、ハシヤスメ・アツコを中心としたコントがオープニングから約20分にわたり繰り広げられる異例の構成で行われてきた。全国を巡る中でハシヤスメのソロデビュー曲の振り付けを考えるというテーマが結実し、セミファイナル前日にはデビュー曲「ア・ラ・モード」のMVが公開。セミファイナル、ファイナル共に約20分のコントが繰り広げられ、他の5人をバックダンサーにソロライブを行なった。ファイナルでは、MVにも登場するマッチョ29のメンバーが登場。清掃員(※BiSHファンの総称)がピンクのサイリウムで会場を埋めつくすなど、コント流れにも関わらず会場が一体感を見せるという展開をみせた。

BiSHの生き様が「楽器を持たないパンクバンド」に投影された夜


上記部分だけ切り取ってみると非常に和やかなライブに思えるけれど、2019年1月3日にマイナビBLITZ赤坂で開催された「WACKなりの甲子園」で、WACK代表の渡辺淳之介は「WACK解体」という言葉を口にした。その言葉通り、同事務所の第2期BiSは解散し、GANG PARADEには新メンバーが加入、EMPiREとWAggもメンバーの脱加入など大きな変化が起きている。そんな中、唯一メンバーの脱加入がなく、6人での活動を続けているのはBiSHだけである。

諸刃の剣ではあるけれど、メンバーの脱加入というのはグループのカンフル剤になることがある。
特にアイドルグループの場合、メンバーの脱加入が物語になることが多いし、だからこその儚さや美しさがある。その点、BiSHは「楽器を持たないパンクバンド」であって、根本的な考え方が違っている。ベタな書き方ではあるが、バンドというのは同じ釜の飯を食うことによって結びつきが深くなったり、同じメンバーで続けていくことによって生まれるものも大きい。そういう意味で、今回のツアーはBiSHが名実ともにバンドのマインドを内包していることを示した重要なツアーになったに違いない。それは、セミファイナル公演のアンコール前にモモコグミカンパニーが行なった下記のMCにも表れている。

モモコグミカンパニー「4月から7月まで毎週のようにツアーをしていたので、本当にいろいろ考えることがあって。その間にたくさん取材も受けたんですけど、「BiSHって変わりがいないね」、「この6人だからいいね」って言われることがけっこうあったんです。ツアーの間、ずっと「なんでこの6人じゃなきゃダメなんだろう」、「なんで私じゃなきゃダメなんだろう」って考えていて。BiSHの曲を他の違う6人がもっとうまくキレイに踊ることはできるじゃないですか? でも、それじゃBiSHじゃない。なんでだろうと思ったときに、1人1人BiSHに人生を全身全霊でかけているからなのかなと思ったんです。未来はわからないけど、過去って消せないじゃないですか。1人1人、BiSHに苦しめられたり、BiSHに泣かされた期間も絶対にあって。
それでも6人ともまだBiSHでいて。そうやってBiSHに、嬉しいこととか、哀しいこととか、苦しいこととか、痛いこととかで、苦しめられたり、喜んだりしながら、BiSHと一緒に成長していった時間が1人1人にあるから、やっぱり今はこの6人に変わりはいないんじゃないかなって自分なりに考えました」

BiSHが特異な点は、6人それぞれの強みを最大限伸ばした活動が、グループの強さにもつながっているところだ。セントチヒロ・チッチはロックの精神的な支柱を担い、アイナ・ジ・エンドは歌もさることながらBiSHのダンスを支え、モモコグミカンパニーは歌詞やMCのような言葉でBiSHの在り方を示す。リンリンは瞬間的な狂気や耽美的な佇まいで魅せ、ハシヤスメ・アツコはコントといった武器を持ち、アユニ・Dは多くを語らずとも歌とダンスを誰よりも全力で行うなどカリスマ性を持っている。そうした多様性がグループとしてもっとも表れていたのが、ファイナルで魅せた「FREEZE DRY THE PASTS」だった。ステージ中央に椅子が置かれ、そこにリンリンが座り、その周りを5人のメンバーが囲う。立とうと思っても足がもたつき立てないリンリンと床に顔をつけながら歌う他のメンバーたちとの共存は、コンテンポラリーであり、演劇的であり、6人それぞれの個性があってこそ成り立つ一種の現代アートのようでもあった。

BiSHの生き様が「楽器を持たないパンクバンド」に投影された夜


そうした現在のBiSHが到達した楽曲もありつつ、「BiSH-星が瞬く夜に」の3連発や初期楽曲「MONSTERS」などで清掃員とともに盛り上がったり、「PAiNT it BLACK」、「stereo future」でマスに向けても伝わるくらいの堂々としたパフォーマンスを見せたり、「My landscape」のような唯一無二な存在感をも示すことができる。これは一朝一夕にできることではなく、これまでの1つ1つの積み重ねがあり、なおかつ6人全員がBiSHとはなにかということに向かい合った結果によるものである。

セミファイナル、ファイナルともに、モモコとチッチはMCで清掃員についての話をした。清掃員たちがいることによってBiSHはBiSHになっているのだ、と。

モモコグミカンパニー「他の公演もそうだったんですけど、BiSHが6人変わりがいないのと一緒で、みなさんにも変わりはいなくて。
私たちが見えないところで、苦しいときとか、嬉しいときとか、人生の時間をBiSHと過ごしてきたから、こうやって心を分かち合えるというか。みなさんにもBiSHと関わった過去があるから、やっぱり今日この空間はみなさんじゃなきゃダメだと私は思います。人生をおいしいところどりして笑ったり喜んだりするだけじゃ、やっぱり本物にはなれないと思うので、みなさんも変わりがいない自分の人生の苦しいところも痛かったところも全部抱きしめて、変わりのいない自分自身をもっともっと大切にしていってください」

BiSHのメンバーは、自分たちが誰かを救うということを言わない。むしろ私たちもあなたたちと一緒だという。

セントチヒロ・チッチ「今日このライブが終わってライブハウスを一歩出たら、私もあなたがたも自分の生活に戻るでしょ? そうしたときに現実に引き戻されて喪失感に襲われる瞬間があると思うんですけど、私もそうだし、メンバーもそうだから、1人じゃないと思ってください。そして今この瞬間が大好きだってことが伝わったら嬉しいです。私たちが何者になっていくかなんてまだまだわからないんですけど、誰に勝つでもなく、誰に負けるわけでもない、私たちにしかできない新しい道を切り開いていくので、みなさんもどうか自分だけの正解を、イエスをみつけて生きていってください」

どれだけ周りからの期待や存在が大きくなろうとも、1人の人間として自分へと、そしてグループへと向かいあう集合体であるBiSH。10月からは再び4カ月間に渡るホールツアー「NEW HATEFUL KiND TOUR」へと臨む。そのツアーを経て、BiSHという新しいバンドの形の輪郭がよりはっきり見えてくるのかもしれない。

BiSHの生き様が「楽器を持たないパンクバンド」に投影された夜


BiSH「LiFE is COMEDY TOUR」
セットリスト

2019年7月2日(火)Zepp Tokyo
1. BiSH-星が瞬く夜に
2. BiSH-星が瞬く夜に
3. BiSH-星が瞬く夜に
4. DiSTANCE
5. スパーク
6. OTNK
7. GiANT KiLLERS
8. DEADMAN
9. 遂に死
10. I am me.
11. MORE THAN LiKE
12. PAiNT it BLACK
13. stereo future
14. My landscape
15. 本当本気
16. プロミスザスター
17. オーケストラ
18. beautifulさ
EC1. BiSH-星が瞬く夜に
EC2. 優しいPAiN

2019年7月3日(水)Zepp Tokyo
1. DiSTANCE
2. MONSTERS
3. GiANT KiLLERS
4. DEADMAN
5. FREEZE DRY THE PASTS
6. 遂に死
7. PAiNT it BLACK
8. stereo future
9. FOR HiM
10. I am me.
11. MORE THAN LiKE
12. HiDE the BLUE
13. My landscape
14. SMACK baby SMACK
15. プロミスザスター
16. オーケストラ
17. サラバかな
18. beautifulさ
EN.1 ALL YOU NEED IS LOVE

<ツアー情報>

NEW HATEFUL KiND TOUR

2019年10月6日(土)埼玉 サンシティ越谷
2019年10月13日(日)熊本 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
2019年10月14日(月・祝)福岡 福岡サンパレスホテル&ホール
2019年10月18日(金)京都 ロームシアター京都
2019年10月22日(火・祝)静岡 沼津市民文化センター
2019年10月27日(日)香川 レクザムホール
2019年11月3日(日)愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール
2019年11月4日(月・祝)愛知 名古屋国際会議場センチュリーホール
2019年11月9日(土)愛媛 松山市民会館
2019年11月14日(木)東京 オリンパスホール八王子
2019年11月16日(土)山口 周南市文化会館Z
2019年11月17日(日)広島 上野学園ホール
2019年11月23日(土)石川 本多の森ホール
2019年11月24日(日)長野 ホクト文化ホール・大ホール
2019年11月29日(金)神奈川 相模女子大学グリーンホール
2019年12月4日(水)東京 東京国際フォーラム
2019年12月7日(土)北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
2019年12月13日(金)宮城 仙台サンプラザホール
2019年12月14日(土)岩手 盛岡市民文化ホール(大ホール)
2020年1月10日(金)兵庫 神戸国際会館こくさいホール
2020年1月11日(土)大阪 オリックス劇場
2020年1月18日(土)栃木 宇都宮市文化会館
2020年1月22日(水)東京 NHKホール
2020年1月23日(木)東京 NHKホール
※ダイブ・リフト・サーフ禁止

チケット料金/(税込)
【通常チケット】
S席 7000円(税込)
A席 3500円(税込)
年齢制限/ 未就学児童入場不可
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