シュガー・レイのギタリストであるロドニー・シェパードはスタジオに到着した時、トライしてみたい楽曲のアイデアが頭の中にあったと振り返る。
『Celebrity Big Brother』でマッグラスは番組内の投票で3位入賞を果たしたが、その翌日、シェパードからマッグラスに電話がかかってきた。「シェパードは俺に、『おい、あの曲でBMGと契約することになったぞ』と言ってきたんだ。『彼らはあの曲が好きらしい』とね。俺は信じられなかったよ」
彼が驚くのも無理はない。シュガー・レイは1990年代後半に数百万枚のCDセールスを記録し、2000年代前半に「フライ」や「エヴリ・モーニング」、「サムデイ」、「ホエン・イッツ・オーヴァー」といった楽曲で多数のラジオヒットを飛ばしたが、2003年にリリースした『レジャーでGO!』があまりヒットしなかったことから運勢が急降下し、ついには所属レーベルであったアトランティック・レコードの契約を切られてしまう。2009年にインディーレーベルであるPulse Musicからリリースされた彼らの最新アルバム『Music For Cougars~復活の常夏番長~』も振わず、チャートで80位より上に行くことはなかった。
その後10年、彼らは生き残るために必死だった。ドラマーのスタン・フラッツァーとベーシストのマーフィー・カージスはその渦中でバンドを離れ、のちに裁判で争うことになった。「俺たちは23年間も一緒にいたんだ。ただ、バンド結成以来、一番売れなかった時間を過ごしたわけだし、2人の脱退は大きな謎でも何でもないよ」と、マッグラスは言う。
マッグラスはシュガー・レイが7月26日にリリースする新作『Little Yachty』の反応が良いことを願っているが、このチャンスに対する見解は現実的だ。
バンドが自身の新作を『Little Yachty』と名付けたのには、こんな意味がある。それは彼らが、シュガー・レイとは90年代におけるヨット・ロック・
バンドであると感じているからだ。アルバムのほとんどは、パニック!アット・ザ・ディスコの「ハイ・ホープス」などを手がけたプロデューサー、サム・ホランダーと共に制作を進めた。「 今をときめく、情熱に耳を向けてくれるソングライターと一緒に制作をするのは、すごく楽しかったよ」と、マッグラスは振り返る。「アルバムは、シュガー・レイ流のモダンなサウンドになってい」
『Celebrity Big Brother』や『The Celebrity Apprentice』、『Celebrity Wife Swap』といった番組の撮影がない時には、マッグラスは90年代のノスタルジアを追い求める流行の波を乗りこなしながら数年を過ごしていた。2012年には、エヴァークリアやリット、ジン・ブロッサムズ、そしてマーシー・プレイグラウンドといったバンドとSummerlandツアーを開催。翌年の夏、マッグラスは1990年代をプレイバックするUnder the Sun ツアーをスマッシュ・マウス、ジン・ブロッサムズらと共に廻った。「小さなゴールに辿り着いたけど、ものすごく大変だった」と、マッグラスは語る。
2年前、彼はI Love the 90s ツアーと契約を果たし、TLCやノーティー・バイ・ネイチャー、ビズ・マーキー、モンテル・ジョーダンらとともにアリーナ各所でショウを行った。マッグラスはヒットソングを歌い、存分に楽しんだ。「そのツアーに参加したみんなが、”おい、俺たちはまだ生き残っている。まだ、ここにいる。こんなことができるなんてラッキーだよな。アリーナのステージで今夜ショウをやるなんて!”ってね」
I Love the 90sツアーは2017年になるとあまりの人気で、2つのショウが同時開催され、昨年は、ソルト・ン・ペパーによってラスベガスの定期公演が開催された。チケットの初動は良かったものの、その後売り上げは枯渇し、ラスベガス公演は数カ月で取りやめになった。マッグラスは「過剰にし過ぎていたんだ」と振り返る。「もう、飽和状態だった。”これが90年代だ!”と言って、人々に投げるだけじゃダメなんだ。特別感を演出しつつ、キュレーター的な役割も果たさないといけない。
彼はそのやり方について、アイディアがあると言う。「もう一度歯車を作り直す必要はない。俺たちの前に活躍していた人たちは、いつの時代もパッケージツアーがあって、今もそれは機能している。でも1990年代は、本当に様々な要素があった。R&Bやヒップホップ、ロックンロール、パンク、グランジ、そして俺たちのようなバンドもいたし、マライア・キャリーやクリスティーナ・アギレラ、ボーイバンドも……どんな組み合わせにしたらパッケージとして成り立つのか見極めるには困難だし、それを続けようとしたら、もっと難しいことだと思う。俺にはどうしたら良いのか考えがあるけど、それは言わないでおくよ。やってみたいことではあるけど、いろんなジャンルをまたいでしまうからね」
彼はシュガー・レイが最後にヒットを飛ばしてから、20年にわたり音楽の世界で生きていられることがとても幸せだと言う。「カート・コバーンが俺たちの世代だと思っている人もまだたくさんいるけど、それでもいいんだ。俺は今いる場所で幸せを見つける。そしてシュガー・レイのショウを観に来てくれたら、これまでのヒットソングをオーディエンスのために懸命に歌うよ」