1980年代~90年代にかけての大都会ニューヨークの社交界やタブロイド・カルチャーに詳しい方は、トランプ家の人々による騒動についてよくご存知だろう。
そこで登場するのが、ローリングストーン誌のコントリビューターでもあるヴァネッサ・グリゴリアディス。マンハッタンの社交界の一員だった彼女は、ストーリーテラーとして正に適任といえるだろう。イヴァンカ・トランプ同様、ニューヨーク市の私立学校へ通った彼女は、イヴァンカの出身校であるチャピン・スクールで行われたフェンシングの試合に参加したことがあるという。さらに彼女のパーティー仲間には、トランプ家と共通の人々もいた。そんなグリゴリアディスが、ナイトクラブStudio 54の常連でトランプ家とも親交のあるニッキー・ハスケルとのインタヴューに臨んだ。グリゴリアディスは冒頭でハスケルに、自分のことを覚えていないだろうと発言しているが、ハスケルは彼女のことを覚えていた。「嬉しい!」とグリゴリアディスは言う。彼女はかつて、ハスケルの自宅で行われたパーティーに参加したことがあったのだ。
グリゴリアディスは、イヴァンカの子ども時代に起きた両親の離婚劇から、90年代ニューヨークのパーティーシーンにおけるIt Girl(話題の女性)、さらにホワイトハウスのウエストウイングに部屋を持つ唯一のファーストドーターとなるまで、トランプ大統領の長女の半生を追った。
イヴァンカ本人へのインタヴューこそ実現していないが、グリゴリアディスはイヴァンカの母イヴァナを含む非常に近い人々へのインタヴューに成功している。イヴァナからは、プロスキーヤーとしてのキャリア、両親にちなんで付けた子どもたちの名前、夫として或いは親としてのドナルド・トランプの人柄について聞き出している。イヴァナは息子ドン・ジュニアの名前を決めるにあたり、夫とかなり揉めたという。ドナルド・トランプは「もしもこの子が負け組になったらどうするんだ?」などという無駄な心配をしていた、とイヴァナは証言する。
グリゴリアディスによるインタヴューは、証言の切り貼りというよりも対談的なものだった。内部事情に基づいた内容で、タイトルが示す通りゴシップにあふれている。しかし彼女の情報源はニューヨーク社交界やジャーナリストらであり、彼女はただ自分が興味を持った話題に関して番記者的なレポートをすればよかった。彼女曰く、米国における1%の富裕層の欠点は、即ち今回の場合は、今日のイヴァンカ・トランプのような女性を作り出してしまうことだという。
イヴァンカがいかに今日の地位を築いたかもポイントだ。