音楽ストリーミングの成長のおかげで音楽シーンはかつてないほどグローバルになった。
だが、音楽ストリーミングサービスは自ら生み出した状況を完全に受け止めきれていないようだ。音楽に関するデータ分析を専門とするChartmetric社の最新レポートによると、Apple MusicやSpotifyなどの音楽ストリーミングプラットフォームは、メジャーな公式プレイリストの目玉として、いまだに北米アーティストを強く好む傾向にあるそうだ。時には、こうしたプレイリストの75%近くがアメリカ、またはカナダのアーティストによって構成されているのだ。
2019年上半期の世界の音楽消費を検証した今回のレポートは、Spotify、Apple Music、Amazon Music、Deezerのトップ30の人気プレイリストを対象とし、公式プレイリストにもっとも多く登場する国を分析する(ここでいう”国”は必ずしもアーティストの出身地ではなく、あくまでそのアーティストが”どの国への帰属意識を公にしているか”である)。
上記4サービスのなかでも、Amazon Musicがもっとも北米アーティストを好む傾向にあった。人気プレイリストの73.2%が北米アーティストで構成されていたのだ。この73.2%のうち、67.6%がアメリカのアーティストだった。次に多いのが10.3%を占めるUKアーティストで、南米アーティストにいたっては、たった2.2%だった。
Spotifyにおいても北米アーティストは多数派だ。北米アーティストは53%を占め、そのうちの48.5%はアメリカのアーティストだ。続いて、UKアーティストが12.9%、南米アーティストが11.7%。Apple Musicの場合は、49.7%が北米、12.4%がUKだ。
「グローバルな公平さという感覚をもっとも強く備えている」とChartmetric社が表現した音楽ストリーミングサービスがフランスのDeezerであるのは当然かもしれない。Deezerの場合、シェアとしては最大の33.8%が北米アーティストであるのに対し、20.5%が南米アーティストだ。その存在感は、他のプラットフォームと比べるとかなり大きい。さらには、UKが14.7%、と西ヨーロッパが9.2%と続く。
音楽ストリーミングサービスのプレイリストは、現代の音楽シーンをリアルタイムで反映していない——今回のレポートは、そう教えてくれる。北米アーティストがひいきされるのと同じように、地上波ラジオが女性ラッパーの楽曲を多くオンエアしているにもかかわらず、SpotifyのRapCaviarやApple MusicのA-Listなどのプレイリストでは、依然として男性ラッパーが圧倒的に多いのも事実だ。