2016年末にキズナアイが活動をスタートして生まれたバーチャルタレント/VTuberは、今年に入って総数9000人を越え、ますます盛り上がりを見せている。

彼/彼女たちの活動は音楽面にも広がり、現在では様々なバーチャルタレント/バーチャルシンガーが大手メジャー・レーベルなどから次々に音楽作品をリリース。
昨年から今年にかけては、HMDを使って様々な場所からバーチャル空間内に観客が集うVRライブや、現実の会場を使ったリアルライブの本数も急増し、今年の夏には毎週のように大型フェスが開催された。そして、その多くのイベントに出演していたのが、自称世界初のバーチャルシンガー・YuNiだ。

YuNiは2018年6月にYouTube上に「歌ってみた」動画を投稿して活動をはじめると、2018年7月に公開した「シャルル」の歌ってみた(現在までに800万回以上再生)でブレイク。10月にYUCeと制作した初のオリジナル曲「透明声彩」でアーティスト・デビューを果たし、2019年にはYUCe、kz、la la larks、ヒゲドライバーが参加したオリジナル曲と、人気の歌ってみた動画を再録音した2枚組のデビューアルバム『clear/CoLoR』をリリースすると、元号が令和に変わる4月30日~5月1日には、自身が主催したVRライブ『さよなら平成カウントダウンライブ UNiON WAVE - clear -』も開催。透明感のある歌声と豊かな表現力で、音楽に特化したバーチャルシンガーの第一線を走り続けている。

そんな彼女が、10月5日に1stワンマンライブ『UNiON WAVE -evolve-』をVeats Shibuyaで開催。その翌日10月6日に、新曲「Beautiful World」をリリースした。この「Beautiful World」は、デビュー曲「透明声彩」や2ndシングル「Winter Berry」を手掛けたトラックメイカー/シンガーのYUCeがプロデュースを担当。「これまで」の感謝を胸に「これから」へと踏み出していくような、YuNiの第二章のはじまりを優しく彩る楽曲になっている。多忙だった夏と1stワンマン、そして新曲「Beautiful World」について、YuNiに聞いた。

―YuNiさんは今年の6月に活動1周年を迎えましたが、その時点では、自分の活動についてどんなことを感じていましたか?

あの時点では、「まだ1年経ってなかったのか!」って思っていました(笑)。それまでの短い期間の中でもいろんなことに挑戦させてもらったので、「えっ、まだだったんだ?!」って。
「もう1年」でもあると同時に、「まだ1年」でもあるな、という気持ちでした。

―活動をはじめて1年のうちに、初めてのVRライブや初めてのリアルライブ、アルバム『clear/CoLoR』のリリース、元号が平成から令和に変わる瞬間に開催されたYuNiさん主催のVRライブ「さよなら平成カウントダウンライブ UNiON WAVE - clear -」などがあって、そのカウントダウンライブの模様は、VR空間だけでなく、YouTube Liveでも1万8000人ほどが同時視聴していた他、『news zero』(日本テレビ系)でも一部中継されていました。改めていろんなことがあった、濃い1年間だったな、と感じていたんですね。

1年とは思えないくらい、いろんな経験をさせてもらいました! それに、「今年は積極的にいろんなイベントに出ていきたい!!」と思っていたら、夏以降は毎週何かのイベントに呼んでもらえるような状態になって――。そのこと自体を「すごく嬉しいなぁ」と思う一方で、YuNiとしては、来てくれる人たちのお財布のことを考えると、ちょっと申し訳ないとも思っていました。でもみんな、「これは行けないけど、こっちは行くよ!」って、好きなものを選んで来てくれて。いろんな人に会える機会が増えたことが、すごく嬉しかったです。

―実際、今年の8~9月は、本当に毎週のように大型フェスやイベントに出ていましたよね。8月18日に『Vアニ2019』(VRライブ/cluster)が、8月24日に『Vサマ!』(VRライブ/VARK)があって、8月30日にMCを務めるVR音楽番組『#ウタオウヨ』の第1回があって、9月14日にはよみうりランドで開催された『Vtuberland 2019』のホールイベントに出演して、9月22日に『DIVE XR FESTIVAL』(幕張メッセ)が、9月29日に『FAVRIC』(幕張メッセ)があって……。流石に「出過ぎじゃないですか?!」と思っていました(笑)。

中にはリハーサルの時期が重なっているものや、共演するみんなが似ているものもあったので、準備中はスタッフさんたちと一緒に「これってどっちだったかな……?」って混乱することもありました(笑)。でも、たとえば同じVRライブでも、『Vアニ』ではTVアニメ『賭ケグルイ』とのコラボレーションがあったり、『Vサマ!』ではVR空間の客席にダイブしたりと、それぞれのイベントごとに、内容も歌う曲も演出も全然違っていて。
『DIVE XR FESTIVAL』や『FAVRIC』は、幕張メッセのような大きな会場でのリアルライブでしたし、本当にいろんな経験をさせてもらった感覚です。

去年の夏からの「変化」

―去年の夏頃、まだ歌の動画だけをひたすらアップしているような活動をしていた頃と比べると、今年の夏はYuNiさんの体感としても随分違うものになっていそうですね。

ほんとにそう思います。去年の夏は、「まずは自分を知ってもらわないと何もはじまらない!」と思って、2~3日1本ずつ、歌の動画をひたすら上げていました。今となっては、「あのペースで歌を上げるのは大変だったな……」と思いますけど、やっぱりあの頃があったから、今年はイベントにたくさん出ることができて、毎週のようにいろんな人たちに会うことができているんだな、と思っていて。今はいろんな方との交流が増えて、今年からはMCを任せてもらう機会も増えてきたので、「どうやったら上手く会話が進められるだろう?」「ここは出るところかな? 引くところかな?」って、自分の役割を前よりも考えるようになりました。最初はほとんど個人での活動のようだったものが、この1年の間に、よりいろんな人たちとの活動になっていったんだな、って感じます。

―では、今年の夏に出演したイベントの中で、特に印象的だったものというと?

いろいろあるんですけど……たとえば、『Vアニ』は、いつものようにYuNiのオリジナル曲を歌うわけではなくて、みんなでアニソンを歌うイベントで、普段は選ばないような曲を選んだりもしたので、一番緊張していた気がします(笑)。演出自体も、『Vアニ』の方々と話し合いながらギリギリまでわがままを聞いてもらって、エアギターをする演出を加えてもらったり、『STEINS;GATE』のOP曲「Hacking to the Gate」では、(アニメの世界観に合わせて)時計感のある演出を強調してもらったりして……。すごく素敵なステージにしていただきました。YuNiは歌いながらジャンプしたりできるようなタイプではないので、それをカバーしてもらえるような、観る人が飽きないステージにしたい、と思っていたんです。

―『Vアニ』は、天神子兎音さん、樋口楓さん、富士葵さんなど、様々なライブで共演することも多い、仲のいい人たちがたくさん出ていたイベントでもありましたね。


いつメンみたいな感じでした(笑)。みんな他のイベントにも出ていたので、イベントごとに「このあいだ振り!」って話をしていましたし、プライベートでも一緒に遊びに行くメンバーなので、MCでのトークも全然不安がなかったです。企画を立ててくれたclusterさんも、私たちが仲がいいことを知ってくれていたので、「MCで喋ることは準備しなくていいですよね?」と言ってくれるような感じで。YuNiとは『Vアニ』が初対面だった湊あくあちゃんも、最初は「私、人見知りで全然喋れないんです」って言っていたんですけど、リハーサルの後にみんなでご飯に行って、そこで一気に打ち解けて。みんなで「あくあちゃん可愛い、あくあちゃん可愛い」って言っていました(笑)。

―他のイベントでは、バーチャル×ファッション×音楽を融合させた『FAVRIC』で実現した、肩とスカートの裾が緑に燃え続ける衣装でのライブも印象的でした。

YuNi、燃えていましたよね!(笑)。終わった後にみんなの感想を見ていても、「バーチャルだからこそできる衣装だった」と言ってくれている人が多くて、「よかったなぁ」と思いました。最初は、「世界初、VTuberがランウェイを歩く日」と言われても、私自身「どうするんだろう?」と思っていたんです。でも、会場も衣装も演出も、バーチャルならではの可能性を追求してくださったので、実際に出ていても、終わった後に客席から撮った写真を見せてもらっても、すごく綺麗な景色で感動しました。そういえば、あのイベントでは、衣装が普段よりシックだったので、最初は「ジレンマ」や「花は幻」のような、しっとりと聴かせる曲を歌おうと思っていたんですよ。でも、「YuNiちゃんには盛り上げてほしい!」と言われたので、(「透明声彩」と)「ウタオウヨ、ウタオウヨ」を歌うことにして。
その結果、幕張メッセのような大きな会場で、客席のみんなに「せーの!!」って言ってもらえたのも楽しかったです。逆に『DIVE XR FESTIVAL』では「ジレンマ」を歌わせてもらったので、それぞれ違うものになったのもよかったです。あとは、7月に、『THE MUSIC DAY』(日本テレビ系音楽特番)と連動した番組『裏配信★大魔王の部屋』で、(秋元康プロデュースのガールズバンド)ザ・コインロッカーズさんとコラボレーションしたのも印象的でした。YuNiはあのとき生まれて初めてアイドルの方たちと会って話したんですけど、すごく可愛くて、普段の喋り方よりも可愛いものを愛でるような口調になっちゃいました(笑)。

―ははははは。

そもそも、YuNiは人間のアーティストの方とコラボすること自体もあの日が初めてだったので、実際に同じ現場に集まって、「せーの」で音を出して歌えたのは感動的な経験でした。

―バーチャルとリアルとが垣根を越えて繋がる機会になった、ということですね。

そうですね。普段活動している中では、今はまだほとんどの場合がV(バーチャル)の活動をしている人たちとの共演で、お客さんもVが好きな人たちが集まってくれることが多いので。もちろん、それもすごく楽しいんですけど、きっとあの日は、普段Vのアーティストを知ることがない人たちにも、YuNiたちのことを知ってもらえたんじゃないかと思うんです。そういう場所には、どんどん出ていけたらいいな、と思っているので、来年はもっと人間のアーティストの方とのコラボレーションも増やしていけたら嬉しいです。たとえば、歌の動画を出しても、Vに興味のない人たちは、サムネイルを見た時点でクリックしてくれないこともあると思うんですよ。
でも、一度ちゃんと歌や音楽を聴いてもらえれば、その人たちがイメージしているような、萌え萌えしているだけのジャンルではないことが伝わるんじゃないかな、と思うので。そういう意味でも、いろんな種類のアーティストの方たちがいるような場所に出ていくことで、そのイメージを変えられたらいいな、って思います。そうやって、バーチャル/リアル関係なく、いろんな人たちと繋がっていけたらいいな、って。

1stワンマンライブにかける想い

―そして10月5日には、Veats Shibuyaで1stワンマンライブ『UNiON WAVE -evolve-』が開催されました。このライブはどんな気持ちで準備していったんですか?

タイトルの「evolve」は「進化する」という意味の言葉ですけど、YuNi自身がライブの面でもこれからいろいろな進化をしていくための、その最初の一歩になればいいな、と思っていました。YuNiとして活動をはじめてから、バーチャル/リアル問わずいろんな方のライブを観させてもらう機会があって、そこでライブについても、「もっとこうしたいな」って、いろいろなことを感じていたんです。それに、YuNi自身が観客として「ライブ、楽しいなぁ」と思う瞬間って、歌だけではなくいろいろな要素を通して、その人自身が楽しんでいる雰囲気が伝わってくるときだったり、ライブを観ている自分も体を動かして、一緒に盛り上がれたときだったりするので、今回は「みんなを疲れさせてやる……!」「その楽しさを、体に覚えさせてやるしかねえ!」って思っていました(笑)。ちょうど『UNiON WAVE -evolve-』の前にミオヤマザキさんのライブを3カ月連続で観たんですけど、そのとき、MCやパフォーマンスも含めて、お客さんを引き込む力に感動したんですよ。それで、今回はmio(Vo)さんがライブで言うような、『飛べー!!』という煽りも意識して加えました(笑)。

―ああ、言っていましたね! 普段よりアグレッシブにお客さんを煽る雰囲気で。

あの日は、アンコールのときだけ普段通りの雰囲気でライブをしましたけど、本編はずっとそういうことを意識していたんです。ただ、YuNiの場合、煽るにしても意識して声を出さないと、小さい子供が煽っているような雰囲気になるんですよ。
孫悟飯みたいな声になってしまって……(笑)。なので、どうしたらかっこよく盛り上げられるかを考えていきました。

―歌を聴かせるだけではなく、お客さんをライブに引き込んで、一緒に盛り上がるためにはどうすればいいかを考えた、ということですね。

そうですね。演出面も含めていろいろな要素で「魅せる」ということも、これまで以上に意識したいと思っていたので、今回はダンサーさんにも参加してもらいました。これもすごく楽しかったです。最初は、自分は歌に集中してダンサーさんに踊ってもらおうと思っていたんですけど、リハーサルをする中で、「一緒に踊りたい!」という気持ちが出てきて。それで、「ここで合わせたらかっこいいかも?!」というところは、YuNiも一緒に踊ってみました。ステージを大きく使えるように、思いきり回ったり跳ねたりもしたので、今までで一番、自分に酔っている雰囲気のライブだったかもしれないです(笑)。でも、そうやって自分自身が思いきり楽しむことで、みんなも気持ちを発散しやすくなるのかな、と思うんですよ。今後は、曲によっては自分の顔が見えなくてもいいので、映像や衣装も含めて、曲の魅力を一番伝えられる演出をもっといろいろな方法で考えていきたいとも思っています。

YuNiが語るバーチャルシンガーの使命


YuNiが語るバーチャルシンガーの使命


―曲の世界観を表現するために、バーチャルな環境を生かせることはやっていこう、と。今回で言うと、「ジレンマ」で分裂した2人のYuNiさんが登場する演出も印象的でした。

「分裂した2人の自分が一緒にステージに立つ」というのは、YuNiがバーチャルな存在だからこそできることですよね。これはもともと、アルバム発売日にYouTubeで公開した「ジレンマ」の予告動画のテーマが「2人の自分」だったので、その雰囲気を生かしたいと思って出てきたアイディアでした。それぞれに黒と白の衣装を着た2人のYuNiを通してひとりの人の中の葛藤を表現して、最後に光の自分がステージに残る、というものにしました。

―この日披露したカバー曲3曲は、どんな基準で選んでいったんですか?

まずはじっくり聴いてもらう曲として、「歌ってみた」動画が好評だった「帝国少女」(R Sound Design feat. 初音ミク)を選んで、もうひとつはアップテンポの曲として、いきものがかりさんの「ブルーバード」を選びました。この曲では「タオルを回したい!」と思っていたんですけど、当日会場がかなりぎゅうぎゅうだったので、代わりにみんなでジャンプすることにしました(笑)。それから最後に、キズナアイちゃんの「Sky High」(Yunomiによるプロデュース曲)を歌わせてもらいました。これは、きっとみんな当日まで予想していなかったと思うんですけど、みんなが大好きなアイちゃんの曲なので、「きたー!!!」って盛り上がってくれて。「選んでよかったな」ってすごく思いました。「Sky High」はダンス曲なので、振りを多めにして、YuNiもできるところは積極的に踊るようにしていきました。

キズナアイの存在

―アイさんとYuNiさんはupd8に参加する先輩/後輩ですが、今年はアイさんによる「透明声彩」のカバー動画が公開され、『A.I. Party! 2019 ~ hello, how r u? ~』では共演も実現しました。YuNiさんにとって、アイさんはどんな存在になっているんでしょう?

今年の6月30日の『A.I. Party! 2019 ~ hello, how r u? ~』のときに、初めてじっくりお話できたんですけど、実はそれからすごく仲よくしてもらっていて、いろんな悩みや相談ごとも聞いてもらっているんです。アイちゃんはめちゃくちゃ頼りがいがあって、本当に温かくて、まさにみんながイメージする「アイちゃん」という感じで……。好きです……!!

―告白みたいになってますよ(笑)。

(笑)。そもそもVの文化をつくって、広げてくれたのはアイちゃんなので、本当に感謝しているし、尊敬しています。でも、YuNiたちも頑張っていかないと、アイちゃんも安心できないと思うので、いつかYuNiもアイちゃんに何かを返せたらいいな、と思っています。

―『UNiON WAVE -evolve-』では、新曲も2曲披露されました。中でも10月6日に配信リリースされた「Beautiful World」は、どんな曲にしたいと思っていたんでしょう?

「Beautiful World」は、デビュー曲の「透明声彩」や「Winter Berry」をつくってくれたYUCeさんに楽曲をお願いしたんですけど、前回の「Winter Berry」が冬の曲だったので、今回は「別の季節の曲を書いていただきたいな」と思っていました。最終的に、「春」「夏」「秋」「冬」の4曲をセットにできたらいいな、と考えていて、今回はちょうどライブも秋だったので、まずはYUCeさんに「秋の曲をつくっていただきたいです」という相談をしました。

―それでストリングスを加えた、少し落ち着いた雰囲気の楽曲になったんですね。

秋って、どこかノスタルジックな雰囲気の季節ですよね。なので、そのイメージに合うような、「ちょっと大人っぽい曲にしてください」とお願いしました。YUCeさんは、デビュー曲の頃からかかわってくれているので、最初に曲のテーマを伝えて、作曲してもらった時点で、「流石YUCeさん。YuNiのこと、完全にバレてる……」って思いました(笑)。ただ、最初にYuNiから、「ファルセットを使わない(=最高音を出さない)曲にしてほしいです」と伝えていたこともあって、最終的にはもう少し、終盤にかけて盛り上がるような曲に調整してもらいました。レコーディング当日も、YUCeさんが「ここの音階、ちょっと変えていいですか?」と言っていろいろと調整してくれたり、英語の歌詞のパートで苦戦するYuNiを見て、英語がペラペラなYUCeさんが笑ったりする瞬間もあって……(笑)。スムーズに、楽しく作業が進んでいきました。そして、最後のコーラス部分では、YUCeさんもブースに入って一緒に歌ってくれて。これは本当に嬉しかったですし、「お客さんと一緒に歌える雰囲気にしたい」と言って、YUCeさんが出してくれたアイディアでした。『UNiON WAVE -evolve-』では、実際に会場でみんなが歌ってくれて、すごくいい思い出になりました。

―曲が終わっても、会場一体になってアカペラでコーラスを歌う様子が感動的でした。

あの部分は、実は完全にアドリブだったんですよ。みんなが一緒に歌ってくれる姿を見ていたら、「終わってほしくない!」と思って、とっさに続けてもらうようリクエストをして。あとで音響の方に、「もうちょっとで次の準備をするところだったよ!」って言われました(笑)。でも、目の前でみんなが声を合わせてくれたことが、本当に嬉しかったんです。

「ひとりの歌」から「みんなとの歌」に変わった

―もともと、デビュー曲「透明声彩」がバーチャルシンガーとしての「孤独」や「儚さ」を表現した楽曲だったことを考えると、「Beautiful World」の「もうひとりじゃない」という雰囲気は、アルバム『clear/CoLoR』以降のYuNiさんならではのような気がしますね。

そうですね。初期とは違って、この曲は「みんなで手を取り合おう」という歌詞になっていて、それは「昔よりも視野が広がった今だから歌えることなんだな」って思います。アルバム『clear/CoLoR』のときにもお話しましたけど、「透明声彩」や「Winter Berry」のような初期のオリジナル曲は、歌詞の中にYuNiだけしか出てこない、「ひとりの歌」だったと思うんです。でも、そこから活動を続けて、いろんな場所でライブをしたり、いろんな人に曲を聴いてもらう中で、アルバム『clear/CoLoR』の収録曲「Write My Voice」(YUCeとともにデビュー曲「透明声彩」のレコーディングをサポートしていたkzが楽曲をプロデュース)では、YuNiの曲の中に初めて「君」という歌詞が出てくるようになって――。今回の「Beautiful World」では、「それなら、今度は”みんなで歌える曲”がほしい!」と思っていました。この曲は、サビの前に「さぁ謳おう」という歌詞が出てきますよね。そう考えても、YUCeさんとの曲でも、今回は「ひとりの歌」から「みんなとの歌」に変わったというか。

―「繋いだ⼿と⼿で/いつかの夜に光を灯したら/明るい陽射しが降り注ぐ/優しい⾵を感じて/Beautiful World」というサビの歌詞にあるように、過去を振り返りつつ、穏やかな気持ちで新しい扉を開いていく今のYuNiさんの姿が伝わってくるような印象です。

YuNi自身も、YUCeさんが書いてくれた歌詞を見たときに、「こんなところまで来たんだなぁ」と実感しました。今はもう、「YuNiって自分だけのことじゃないな」「支えてくれる人たちみんなでYuNiなんだな」と思っていて、その気持ちが、どんどん強くなってきている気がします。もともと、活動をはじめた頃は、「本当にこれでいいのかな」とずっと不安を感じていたし、誰かに言われた痛い言葉だけが刺さってしまうこともありました。でも、そこを乗り越えたら、もっと違う景色が見えてきたというか。今は応援してくれているみんながいて、何かあったとしても「ひとりじゃない」って思えるし、「自分のことを見てくれている人たちがいる」という自覚が、前よりも出てきたような気がするんです。最近も誕生日にみんながハッシュタグを用意して盛り上がってくれて、1000件以上のメッセージをくれて、「こんなにたくさんの人たちが見てくれているんだ――」と改めて実感しましたし、「ウタオウヨ、ウタオウヨ」で初めてライブでコール&レスポンスができたときも、「みんな、本当に歌ってくれるんだ!」って感動して。そうやって、みんなが反応を返してくれたことで、「みんなに近づけたかな」「本当に繋がれたのかな」と思えるようになりました。

YuNiが語るバーチャルシンガーの使命


YuNiが語るバーチャルシンガーの使命


―聴いてくれる人たちとのコミュニケーションの中で、自分の変化を実感した、と。

そうやっていろんな経験をさせてもらったからこそ、来年以降は、まだこれまで行ったことのないところも含めて、「もっといろんな場所に出て行って、どれだけ受け入れてもらえるかを試したい!」って思っています。これまでVが好きな人たちとたくさん出会えて、そこでいろんな経験をして、いい思い出しかなかったので……。だからこそ、今度はそうじゃない場所にも出ていって、「もっと戦っていかなきゃいけない」と思っていて。たとえば、リアルで活動しているアーティストの方たちと一緒に曲をつくって、それをみんなで楽しめるようなライブを自分で主催できたらいいな、とも思ったりしているんです。受け身でいるんじゃなくて「自分で動いていかなきゃいけない!」と思うので、来年は、そういうことを目標にできたらいいな、って。そもそも音楽というのは、バーチャルもリアルも関係なく、いろんな人たちが楽しめるものですよね。だからこそ、これまで出会ってきた人たちのことを大切にしながらも、同時に、もっともっと新しい人たちに会いにいって、そのみんなで一緒に楽しめるような、自由な場所をつくれたらいいな、と思っています!

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