─バトルスは2002年にNYで結成されたあと、まだ無名の頃から日本で紹介されてましたよね。
天井:そうですね。Warzawaやsome of usに通っていたら、小林さん(※)が異様に推してたんですよ(笑)。最初に聴いたのはミックスCD。CD-Rのペラいスリーブケースで、その後に出るEPの曲と一緒にDJのコールが入ってて。
※小林英樹:吉祥寺Warzawa店員、Warzawa渋谷店店長を経て、Warzawa渋谷店撤退後は同じ場所で個人経営のレコードショップsome of usを経営。同店を閉店後、2008年に54-71のメンバーと共にレーベル「Contrarede」を設立。
─そんなの出てたんですか。
天井:彼らは2004年に初来日する前から、「なんか凄いバンドが来るらしい」と評判になってたんですよ。「でも音源はまだないんだよね」とか話してたところに、小林さんが「こんなのあるよ」ってCD-Rを教えてくれたんだったかな。

「DJ Emz Presents Battles Mixtape Sampler」
─2004年1月のバトルス初来日ツアーでは、1月7日に渋谷AX(現在は閉店)でマーズ・ヴォルタの前座を務めたのを皮切りに、オルタナ~ポストロック系のフェス「PEAK WEEK」への出演など全9公演が行われています。
天井:僕はマーズ・ヴォルタの公演で見ましたけど、あそこにいた人はみんな「バトルスのほうが良かった」と言ってましたね。とにかくライブのインパクトが大きくて、そこから一気に評判が広まった印象です。
─やっぱりライブは凄かった?
天井:言い表すのが難しいんですけど……人がやってるのに機械っぽいというか、(インストなのに)プログレとかジャズロックっぽい感じがしない。ループを使ったミニマルな音作りと、テクノみたいなエディット感。それを人力でやっているのが当時は斬新でしたね。そもそも、前情報で想像してたのとも違っていて。ヘルメットやドン・キャバレロのメンバーがいると聞いていたのに、バトルスの音楽はギターロック的なエモーショナルな熱っぽさがないんですよね。
─ドラムはダイナミックだけど抑制が効いているし、「マス・ロックの先駆け」と言われたドン・キャバレロの緻密さや緊張感を継承しつつ、音像やテクスチャーはもはや別物で。バンド・サウンドをデジタルな感性で再構築した、21世紀的なアンサンブルの先駆けでもあったのかなと。
天井:だから僕自身、最初からロックバンドの音楽として聴いてなかった気がします。とにかく新しいバンドが出てきたって感じ。
2004年1月10日、新宿LOFTで開催された「PEAK WEEK」でのライブ映像。対バンはNYのイーノン(Enon)、WRENCH、KING BROTHERS、Melt-Banana。
─「未来の音」みたいなイメージが強かったですよね。バトルスの登場によって、ポストロックも確実にアップデートされたはずですし。
天井:あの頃はいわゆる御三家、トータス、シガーロス、モグワイの活動もやや落ち着いて、ちょうどブームがひと段落した頃で。「最近、ポストロックって言葉を聞かなくなったな」というタイミングで彼らは出てきた。あとその頃ってちょうど、ハードコアを出自としたり経由したりして面白いバンドやシーンが登場する流れがあって。トータスやスリントなどのポストロック系も遡ればそうだけど、2000年代以降でいえばディスコパンク――NYのLCDサウンドシステムやザ・ラプチャー、それにWarpの同期と言える!!!とか。加えて、ジャッキー・オー・マザーファッカーやサンバーンド・ハンド・オブ・ザ・マンに代表される、その後のフリーフォークもそう。そうした気運を背景にしてバトルスも出てきた印象です。
ジョン・ステニアー(Dr)が在籍していたヘルメットの代表作『Meantime』(1992年)
イアン・ウィリアムス(Gt、Key)が在籍していたドン・キャバレロの代表作『American Don』(2000年)
デイヴ・コノプカ(Ba,Gt:2019年脱退)が在籍していたシカゴのマス・ロック系バンド、リンクスの1999年作『Lynx』
─バトルスも結成メンバーの4人中3人はハードコア/マスロック界隈の出身で、ジョンは68年生まれ、イアンは70年生まれと、当時のシーンでも世代的には少し上。そんな実力者たちが集まったスーパーグループのなかに、タイヨンダイ・ブラクストンという78年生まれと比較的若い、アカデミックな才能がいたのも大きかった。
天井:アフロ頭の天才肌で、フリージャズの巨匠ことアンソニー・ブラクストンを父にもつサラブレッド。V6のトニセン/カミセンじゃないけど(笑)、そういう世代のミックス感も面白かったのかなと、今になって思いますけどね。
タイヨンダイ(Gt,Vo,Key:2010年脱退)の2002年作『History That Has No Effect』の1曲目「Great Mass」
─「バトルスは初期のEP三部作こそベスト」という声は根強いですよね。この時点ですでに、インディ系の音楽ファンからはかなり支持されていたと記憶しています。
天井:「B+T」や「Hi / Lo」などマスロック的な人気曲もあるけど、「UW」みたいな実験的なエレクトロニック・サウンドやドローンだったり、ハード・ミニマル風の「Fantasy」とか、改めて聴くとメチャクチャな(笑)曲もたくさん入ってますよね。前後してリリースされたタイ(タイヨンダイ)の初期のソロ作品ともリンクするような内容で、まだ試行錯誤の状態というか、今のバトルスとは似て非なるアプローチも色々と試されていて。
─なるほど。
天井:「TRAS」と「TRAS2」や「TRAS3」、「IPT2」と「IPT-2」といった曲名からも窺えるように、ひとつのアイデアを元に様々なバリエーションを実践してみる、みたいな習作的な意味合いもあったんじゃないですかね。
2004年に別々のレーベルからリリースされた『Tras』『B EP』『EP C』の3作は、2006年のWarp移籍第1弾となった『EP C / B EP』で一枚に纏められた。
2005年、渋谷O-EASTで開催された来日公演
─そして、バトルスの代表作といえば、2007年の1stアルバム『Mirrored』。
天井:EPからここまでポップに化けるのかと。そこはやっぱりタイの存在が大きいのかな。独特のボーカル・エフェクトやヒューマン・ビートボックスも含めて、彼の個性がうまくマッチしたというか。
─タイの声を積極的に取り込むことで、リスナーの間口が広がった。
天井:メンバーも公言していたように、あくまで楽器的な感覚で扱ってる形ですが、やっぱり大きかったですよね。インストロックというと冗長になりがちだけど、タイの歌/声がフックとして表情やニュアンスをもたらしているというか。あとは何と言っても、「Atlas」の異様なポップさ。
─あのシャッフルビートが始まると、今でもライブで盛り上がりますよね。アルバム全体は改めてどうですか?
天井:EPの頃に比べると、カドが少し取れちゃった感じもしますよね。でも、広く知られる最初のきっかけとしては良かったんじゃないかな。このキャッチーさがバトルスの代名詞になったと思うし、「Tonto」「Snare Hangar」といった曲にはEPのストイックでミニマルな作りが継承されていて、全体としてはバランスが取れてるのかなって。「Atlas」だけ突き抜けてますけど(笑)。
─この年のバトルスは時代の申し子でしたよね。絶対にブレイクしそうな気配があったし、アルバムが出るとたちまち絶賛の嵐で。ここまでの歓迎ぶりも珍しい。
天井:NYの盛り上がりともリンクしていましたよね。タイ自身はブラック・ダイスやギャング・ギャング・ダンスがたむろしていたアンダーグラウンド・シーンとも密接な関係にあって。その一方で、Warpも転換点を迎えていて、!!!然り、マキシモ・パークやグリズリー・ベアといったバンド物を出し始めていた。そんなふうに、インディロックが盛り上がっていた時期に出てきたのは大きかった気がします。バンド物だから、それまでロックを聴いてた人もすんなり入り込めただろうし。
─「踊れるロック」のニーズも満たしていましたよね。ロックファンやクラブ/DJシーンに加えて、レフトフィールド寄りのコアなリスナーや批評家筋にも愛されていて。
天井:それこそ当時、スタジオ・ボイスが「次世代【オルタナティヴ・ミュージック】ランキング100!!」って企画で『Mirrored』を1位に選んだりしてましたよね。あと、当時はバカテク系(笑)のバンドも勢いがあったじゃないですか。
─もちろんライブの評判も相変わらずで。この年のフジロックでWHITE STAGEに出演して、期待通りの怪演を見せています。
天井:その2カ月後に開催されたジャパンツアーは軒並み完売で、チケットが売れすぎてダブルヘッダーとかやってましたよね(※)。そんな話、聞いたことなかった。『Mirrored』という作品自体も良かったけど、取り巻く環境も含めていい時代だったなと思います。
※東京は追加公演が完売したため、再追加公演として恵比寿LIQUIDROOMで1日2公演行われた。
─ただ、幸福な時代はそう続かなかったんですよね。タイが2009年にソロ作『Central Market』を発表すると、その翌年にバトルスを脱退。3人体制で再始動した2ndアルバム『Gloss Drop』(2011年)は、今だから正直に言うと、なかなか厳しい作品だったと思うのですが。
天井:確かに賛否両論ありましたよね。多数のゲスト・ボーカルを迎えたアルバムになったのも、やっぱり本人たちがどう説明しようが、タイの穴を埋めるためなのは拭いきれないところで。「サウンド面でタイが手がけた部分はそもそもあまりなかった」とジョンは話していたけど、結果的にタイトな制作期間を迫られたせいもあってか、悪い意味でバンドの生身っぽさが出てしまってますよね。良く言えばライブ感のあるサウンドなわけだけど、(EPと比べれば)過剰にポップで装飾的な方向へと振れたことで、デビュー当初のストイックな構築性が後退してしまった。それで戸惑うファンも多かったんじゃないかな。
─タイが抜けるまでは揉め事が絶えなかったそうですが、そういう緊張感によって保たれていたバランスもあったんでしょうね。
天井:結果的に、似たような出自の3人が残ってしまったので。ヒューマンエラーが起きづらくなったぶん、予測不能なスリルは薄れましたよね。
─ボーカルの人選はユニークなんですけどね。テクノポップの第一人者、ゲイリー・ニューマンに「My Machine」なんて曲を歌ってもらったり。
天井:ただ、それがバトルスに求められた曲だったかと言われると……(苦笑)。その一方で、「Ice Cream」や「Dominican Fade」で聴けるパーカッシブでトロピカルな雰囲気は『Gloss Drop』の魅力だと思います。バトルスのメンバーはKompakt(ドイツのエレクトロニック・ミュージック系レーベル)のファンで、「Ice Cream」で歌っているチリ出身のマティアス・アグアーヨや、あるいはブラジル出身のギ・ボラット(Gui Boratto)といったトラックメーカーへのシンパシーが、陽的なサウンドに反映されていますよね。
─そのギ・ボラットも参加した、同作のリミックス集『Dross Glop』(2012年)が秀作なんですよね。ザ・フィールド(ミニマルテクノ)、コード9(ダブステップ)、シャバズ・パラセズ(ヒップホップ)など同時代の異端児を集めつつ、ドイツ電子音楽の大御所であるクラスター(Qluster)も参加しています。
天井:ジョンはザ・フィールドの作品でもドラムを叩いてましたし、そういったシーンやジャンルを横断した嗜好性が、本人たちのサウンドにも落とし込まれていますよね。最新作にも通じる話ですが、視野が広くて歴史認識に長けたリスナー感覚も、バトルスのバックボーンとして重要なのかなと。
─その後も試行錯誤は続いているようで、2015年の3rdアルバム『La Di Da Di』は一転、全編インスト作品になりました。
天井:原点回帰作とも言われましたけど、タイトに音数を削ぎ落したって感じはしなかったですね。実際、制作にあたっては「ミニマリズム」がキーワードとしてあったらしく、「Dot Net」や「Flora > Fauna」みたいな初期のEPを発展させたような曲もある。ただ、タイが抜けて空いたスペースを3人のプレイヤーが自在に行き交うことで、EPにはない余裕やリラックス感が生まれていたというか。『Gloss Drop』ではそのスペースに音を詰め込むことに必死だったところも感じられたけど、トリオ編成のバトルスのスタイルをようやくつかむことができたのかなって。アフリカンなギターを聴かせる「Luu Le」だったり、レゲエっぽいオフビート感覚のある「Megatouch」もあったりと、曲調のバラエティもありますし。
─自然体で「らしさ」に満ちた、ベテランの貫禄も感じられる作品でしたよね。ただこれまでに比べると、同時代的なトピックが見出しづらいのも事実で。この年は他にもトータスなど、ポストロックを牽引してきた大物の新作リリースが集中しましたが、ジャンル自体の勢いが盛り返すまでには至らず。
天井:そこですよね。前作のようにゲストがいるわけでもないし、同時代性という横軸で何か語れるかというと難しい。
─前作では、良くも悪くも孤高のバンドになりかけていたんですが……最新作の『Juice B Crypts』は期待を上回る内容じゃなかったですか?
天井:うん、かなり楽しめました。デイヴも抜けて2人編成になったと聞いたときは、正直どうなるかと思いましたけど。ちなみに、今回のアルバムは初めて歌詞(対訳)が付いているんですよね。それは「ボーカル」への意識やアプローチが変化したことの表れなのかなと。
─というと?
天井:やっぱりタイが抜けてここまで、バトルスの複雑に構築されたサウンドの中で「ボーカル」をどう扱うかというのは課題であり、鬼門でもあったと思うんですよ。扱うか/扱わないかの選択も含めて。タイの声はあくまで「楽器」だったし、『Gloss Drop』もその感覚でゲストに歌ってもらっていた。それが今回は、きちんと「歌い手」として呼んでいる。歌詞が掲載されているのはその証だし、そこの違いは大きいと思います。ボーカル曲ではバンド側もこれまでより「オケ」として振舞っていますし。
─ボーカリストの人選もかなり大胆ですよね。「They Played It Twice」で歌っているセニア・ルビーノスも超人的な馬力を見せているし、次の曲「Sugar Foot」では、なぜかイエスのジョン・アンダーソンとコラボしているという。
天井:僕が最近インタビューしたところによると、ジョン・アンダーソンがソロアルバムを作る際、ジョン・ステニアーに参加してほしいと誘っていたそうで。でもスケジュールが合わず、逆にバトルスが何かやる時は誘ってくれよってジョン・アンダーソンからメールをもらって、それが数年越しでようやく実現したそうです。
─ジョン・アンダーソンってもう75歳なのに、まだこんなに声が出るんだって(笑)。楽曲自体もプログレ的で、ドラムもジェネシス時代のフィル・コリンズっぽいし、『Mirrored』の1曲目「Race : In」を彷彿とさせる部分もある気がします。
天井:言われてみれば、歌の感じがちょっとタイっぽいですね。同じ曲で台湾のエクスペリメンタルロック、落差草原WWWWのボーカリストが参加しているのも面白い。あと、シャバズ・パレセズが参加した「Izm」では、ジョンが律儀にブレイクビーツを叩いてますよね。昔だったら考えられない。チューン・ヤーズを迎えた最後の曲「The Last Supper On Shasta Pt. 2」もそう。サティっぽい不穏なピアノのコード……誰が弾いてるんだっていう。こんな事するようになったんだって(笑)。
─ほかにサウンド面で気になった点はありますか?
天井:今回はモジュラーシンセをたくさん使ってるそうで、浮遊感のあるコードや揺れるようなエレクトロニクスの音を効果的に使ってますよね。ジョン・アンダーソンの曲もクラウトロックというかステレオラブっぽいし、5曲目の「Fort Greene Park」も然り。後者はイアンが弾くメロウなギターソロにもびっくりしました。歌心のあるアルペジオで……もう2人しかいないから、贅沢にお互いの間合いを使っていて。この5曲目の始まりは衝撃でしたね。「こんな聴かせる泣きメロ弾くんだ!」みたいな。
─かつては最大3本あったのに、もはや1本だけになったギターがループしていく「Titanium 2」は、実にバトルスらしいドラムも含めて、今の彼らを象徴する曲でしょうね。新しいアイディアにも迷いがないし、自分たちらしさを見直す余裕も感じられる。
天井:その辺りはインタビューでも言ってましたね。3人だとケンカになるけど、2人だと役割もはっきり分かれているから、あまり衝突もないと。以前より作りやすくなったと言ってるのは、決して強がりではないと思います。それと、ジョンが話していて印象的だったのは、今作はミニマリズムの真逆で”マキシマム”だということ。「たった2人で作ったわりにものすごくいろんなことが起こっているという意味でもマキシマムだと思う」と聞いて、今作の充実ぶりを象徴しているなと腑に落ちましたね。
─あと、『Juice B Crypts』は前作から見違えるくらい、音がモダンになりましたよね。
天井:ここにきて、ようやく真っ当な外部プロデューサーと組んでいるんですよね。クリス・タブロンという人で、ビヨンセやニッキー・ミナージュといったポップ・ミュージックの有名どころから、ストロークスや!!!などバンド系、Warp所属のケリー・モーランみたいなエクスペリメンタル系まで、幅広くプロデュースやエンジニアリングを手がけていて。
─ロバート・グラスパーの関連作や、ジェイミー・アイザック、リトル・シムズ、カインドネスといったUK勢の話題作にも携わってます。
天井:ジョンも「若くておしゃれで今の時代のプロデューサー」と呼んでいるように、プロダクション/ミキシングの今っぽさは、クリス・タブロンの手腕が大きいんでしょうね。それこそ、さっき話した”ボーカルの扱い方”というところも含めて。彼はインド系ギタリストのラフィーク・バーティアによる『Breaking English』(2018年)のように、先鋭的なサウンドデザインを持つ作品にも関与している。
─そのラフィーク・バーティアが参加しているサン・ラックス(Son Lux)も、NYを拠点にしたポストロック・バンドということで、バトルスの後輩だと言えなくないのかなと。そういう若い世代とも潜在的にシンクロするような、横の繋がりも今回はしっかり感じられると思います。
天井:『Mirrored』のヒットから10年以上を経て、久々にいい風が吹いてる感じがしますね。
─そして、あとは2人でどんなライブを披露するのか。
天井:色々と難易度が高そうだけど(笑)。これまでデイヴが担っていた役割を補うため、ジョンもついにサンプリング・パッドを導入したとか。
─忙しいですね。あんなに高いシンバルも叩かないといけないのに(笑)。
天井:10月半ばにヨーロッパを回って、それから日本に来るそうなのでいい感じに仕上げてくるんじゃないですかね。
─サポートは断固として入れないというのも、逆に自信を感じさせますね。2人だけでもできると判断したからライブするんでしょうし。
天井:もちろん、今の編成では演奏不可能な曲もあるでしょうけどね。歌入りの曲をどうするのかも気になるし。そこも含めて、実際に目の前で答えを確かめるのが楽しみですよね。一体どうなるんだ、何が起きるのかっていう。
─最後に、何か言い残したことはありますか?
天井:そういえば『La Di Da Di』を出した頃に、(ギターやキーボードで構成された)リズムとかリフにメロディの情報を含ませる、といった話をジョンとイアンがしてたんですよ。「FF Bada」や「Summer Simme」みたいな曲を指していたと思うんですけど。で、そしたらタイも同じ年に発表した『HIVE1』について、「打楽器を、リズムを生み出すものではなく、メロディを奏でる声として捉えたかった」と語っていて。実際、『HIVE1』はスレイベルやウッドブロックなど種類豊富な打楽器の音色がエレクトロニクスとハーモニーを聴かせる作品で――両者が袂を分かって久しいけど、彼らがやりたい事って今も相通じるところがあるのかなって。
─無意識のうちにシンクロしている?
天井:そうそう。それに、『HIVE1』の鍵を担っていたモジュラーシンセを、今ではバトルスが積極的に使っている。お互いすれ違いながらキャリアを積んでるんだなって(笑)。
─その視点は面白いですね。タイは不在のまま、今もバトルスの音楽に働きかけている。
天井:そもそも、ループを駆使してバンド・サウンドを構築するスタイルの基礎を作ったのはタイですからね。その土台の上にバトルスがある。タイが残したものは、今でも大きいんだろうなと思いますね。イアンとジョンが聞いたら怒るかもしれないけど(笑)。
バトルスとブラック・ミディが共演したBoiler Room Londonの映像
<公演情報>

BATTLES
SUPPORT ACT:平沢進+会人(EJIN)
東京公演
2019年11月4日(月・祝)恵比寿ガーデンホール
2019年11月5日(火)梅田クラブクアトロ
2019年11月6日(水)名古屋クラブクアトロ
※全公演ソールドアウト
<リリース情報>

バトルス
『ジュース・B・クリプツ』
発売日:2019年10月11日(金)
WARP RECORDS / BEAT RECORDS
国内盤CD:2200円(税抜)
国内盤CD+Tシャツ:5500円(税抜)
ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子封入
=収録曲=
1. Ambulance
2. A Loop So Nice...
3. They Played It Twice feat. Xenia Rubinos
4. Sugar Foot feat. Jon Anderson and Prairie WWWW
5. Fort Greene Park
6. Titanium 2 Step feat. Sal Principato
7. Hiro 3
8. Izm feat. Shabazz Palaces
9. Juice B Crypts
10. The Last Supper On Shasta feat. Tune-Yards
11. Yurt feat. Yuta Sumiyoshi(Kodo)