アンソニー・ダニエルズと電話で話すと少し狼狽してしまう。特に回線に微かなノイズが入っていると、お馴染みのダニエルズの声がさらに機械的に聞こえてしまい、まるでC-3POと会話しているような錯覚に襲われるのだ。現在77歳のダニエルズは、映画でも、アニメでも、テレビゲームでも、C-3POが登場するものは何であれ、1977年来ずっとこのドロイドを演じ続けた(『マペット・ショー』や『セサミストリート』にも出演した)。
そして最近出版した著書『I AM C-3PO ― The Inside Story(原題)』内で自身の冒険を楽しく語っている。最初、彼は自分の成功を奇妙なファウスト的契約と呼ぶ。彼は世界でも最も成功を収めた映画に出演しているにもかかわらず、誰も自分の顔を知らない上に、演技中は金属の衣装に身を包み、高温と擦り傷に耐えていた。
しかし、年を経るごとに、彼は自分の運命をどんどん楽しめるようになっていることに気づく(そして、この本の中で彼が素直に認めているように、最初の三部作ではR2-D2の中にいたケニー・ベイカーと彼はウマが合わなかった)。デジタル版のみ掲載の米ローリングストーン誌のスター・ウォーズ特集の一環として、ダニエルズが12月20日公開の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』だけでなく、さまざまな話題について語ってくれた(この特集ではアダム・ドライバー、J・J・エイブラムス、ルーカスフィルム社長キャスリーン・ケネディ、共同脚本家クリス・テリオのインタビューも公開している)。
―あなたの本によると、あなたはこの映画でのC-3POへの期待をしたためた大胆で心を込めた手紙を、J・J・エイブラムスに書いたようですね。その手紙の中には、このキャラクターは「穏やかに通訳し、紅茶をいれられる平和な暮らしに憧れている」とも書いてありました。C-3POが冒険を楽しんでいるとは思わないのですか?
私が思うに、彼は人間と結びつきたいという欲望がとても強くて、何かの一部であると感じたいのだと思うし、この映画での彼はそれを実現しているね。人間が彼をぞんざいに扱うことが多いが、彼はそれを無視する。
―エイブラムスはあなたに返事を書き、新作でどれほどの演技を求められるか知ったら、あなたは大いに気にいるか、大いに嫌うかのどちらかだろうと伝えました。結果的に、あなたは大いに気に入ったのですね?
そうだよ。それと同時に、本当にとんでもない仕事量だった。J・Jはよくこう言っていた。「そうなったのは君のせいだよ!」って。それだけの価値のある役柄だったと思う。それに、私自身が(手紙を送って)注目を引くように仕向けたような物言いだけど、実はそうじゃなかった。ただ単に、最後の映画でC-3POのキャラクターを掘り下げるとか、彼の存在をもう少し評価してほしいと思ったんだ。そして、他の全キャラクターも際立たせながら、J・JはC-3POも引き立てくれたと思う。
―とても面白い事実が、これまで長い間C-3POを演じてきたのに、今作で初めて本当に腕を動かしたことです。
だろう? 変な話だよね。 今回は本当に特別だった。だって最初に撮影したシーンで、私は腕を動かさないといけなかったんだから。でも、このシーンのおかげで大きな自信が生まれた。だって、私は何かを見たあとに、それをつかんで、手に持つことができるんだから。これまでは動かしている振りを続けていたから、腕と手が動くという些細なことであっても、完璧な使役マシンとしての自信が生まれたわけだ。ほとんど人間みたいだってね。
―これまでよりもジェスチャーを増やしたい誘惑に駆られましたか?
ああ、もちろん。本当にそうだった。指差しをしてもいい場面では、欠かさずに指差ししていたからね。
―予告編でC-3POのセリフ「最後にもう一度だけ 友人たちに」を聞いて、彼の運命を心配した人も多かったのですが、あなたは本の中で彼が死んでいないことを明らかにしてくれました。
う~ん、J・Jは分単位で気が変わることで有名なのは周知だよね。この本を書いたのはけっこう前だったんだ。全部まとめるまで1年かかったから。そうだな、撮影のセットでは物事が流動的だったとだけ教えておくよ。
―では、予告のあのセリフに多くの人が心を動かされ、C-3POの死を予感して悲しんだと知って、どのような気分でしたか?
興味深いと思ったね。だって、セットであの場面を撮影していたときも、とても心に響く瞬間だったし、予告編であれを見たときも、あまりの感動に自分でショックを受けたほどだったんだ。
―今後、あの金属の衣装を身につける機会は絶対に訪れないと思いますか?
それに関してはとてもニュートラルに構えているよ。ただ、今回の映画のような状況で着ることはないと思う。でもC-3POのあのキャラクターは、この世から消滅してしまうにはとても惜しいものだ。だから、C-3POとしての私の人生はまだまだ終わらないよ。長年C-3POを演じたことは素晴らしい仕事だったし、本当に感謝しているんだ。私のような機会に恵まれる俳優は本当に稀だからね。
―現在のあなたの中に「あの衣装をもう着たくない」と思う部分があったとしても理解できます。あの衣装を着るために長年自制してきて、やっと好きにご飯を食べられるわけですし……。
うん、その通りだね。正直に言うと、映画と映画の間に大食いすることがあった。1キロ太るなんてあっという間だよ。いつも「容器いっぱいのアイスクリームのカロリーはいくつだろう?」とか、「ボトル1本分のワインのカロリーは?」とか考えていたし、セットの食べ物も魅力的だった。しかし、一方で、C-3POを演じるために自制を自ら求める自分がいたのも確かだよ。そうじゃなきゃ、自分が苦しむだけだからね。
―ルーク・スカイウォーカーがC-3POのお気に入りの人間だと本に書いていますが、その理由は?
キャラクターとしてのルークは最初からインパクトが強かった。純真無垢さがある一方で、彼なりのフラストレーションも抱えていた。トシ・ステーションに行って、パワーコンバーターか何かを買いたかった。マーク・ハミルがとても上手だったのがC-3POを自分の仲間・同志として扱ったことで、その空気が映画全体に流れていたんだ。
―全話の中で最も気に入っているセリフは、『ジェダイの帰還』の「私も困ってしまったのですが、ソロ将軍。あなたは、私のための宴のメイン料理のようです」ということですが、あの瞬間にハン・ソロにちょっとだけ仕返しできたからですか?
その通り。このセリフがお気に入りなのは、ハン・ソロがC-3POに対してちょっと威張っていたからなんだ。でも、もちろん、そういうダイナミズムは素晴らしいものだったし、おかげでC-3POには反発できる対象ができたわけだよ。
―ジョージ・ルーカスがC-3POを作り、R2-D2と絡ませた背景にどんな意図があったのかを考えたことはありますか?
あの関係はとても独創的なものだね。奇妙なカップルだもの。
―本の中で紹介していた、『ジェダイの帰還』のワンシーンで、ルーカスがひざまずいて、ビーッと音を出しながらあなたの演技を助けたという話は、これまで耳にしたジョージ・ルーカス逸話の中で最も愛情を感じたエピソードでした。
本当の話だよ。あの場面を今でも思い出せるくらいだ。奇妙で愛情に溢れた瞬間だったよ。
―新しい映画にはそれぞれ独自のファンベースがあります。「レイロ」と自称するファン、つまりレイとカイロ・レンが恋人になる運命と信じる人たちについてはどう思いますか?
(ため息ののち笑いながら)それは若い映画ファンに任せるね。私はセリフを覚えるので十分に苦労したし、誰が誰とくっつくかの方面には首を突っ込まないことにしたい。ところで、なんて呼ぶって? ライロ? そうだな、人によっては考えすぎることがあるからね。とにかく、力を抜いて楽しんでほしいな。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
12月20日(金)日米同時公開