2019年12月21日と22日の2日間にわたり、さいたまスーパーアリーナでLUNA SEAによるライブ「30th Anniversary LIVE LUNATIC XMAS 2019 さいたまスーパーアリーナ2days」が開催された。ここ数年クリスマスの時期に開催される大規模なLUNA SEAのライブは、毎年ファンが心待ちにしている一大イベントであるが、今年でデビュー30周年を迎えるLUNA SEAとSLAVE(ファンの総称)にとっては、特にスペシャルな2日間となった。
ここでは、2days公演の2日目の公演のライブレポートをお送りする。

定刻を少し過ぎた頃、会場が暗転。ここ数年はベートーヴェンの「月光」が登場SEとして使われることが多かったが、今回は賛美歌が流れるとともに天井から降りてきたミラーを用いて光の柱が描かれ、神聖な教会のような雰囲気を醸し出す。間もなく、白黒の衣装に身を包んだメンバーがステージに登場。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』の主題歌にもなり、活動30周年の今年にリリースされた「宇宙の詩~Higher and Higher~」からライブがスタート。十字架型のスクリーンには、銀河を駆け巡る光の映像が映し出され、壮大なスケールの幕開けとなった。と思えば、2曲目から打って変わり、イントロに合わせて火花も上がり、赤のビームとともに攻撃的なサウンドが印象に強い「The End of The Dream」や、間奏でかつての自分への遺書を読み上げるJの恒例のマイクスタンド投げなど、大盛り上がりの代表曲「ROSIER」とアップチューンを立て続けに披露。最初から爆発力のあるエッジなサウンドで盛り上がりを見せた。

LUNA SEA、誰一人欠けることなく聖夜に届ける30年の奇跡


この前半のライブを観て、「Sweetest Coma Again」など従来の攻撃的なサウンド、最新アルバム『CROSS』 収録の「悲壮美」や「THE BEYOND」など壮大な世界観を描いた楽曲のスケール、どちらの中でもRYUICHIの歌声は、今年初めに発表された本人の肺腺癌や、10月に報告した声帯ポリープの切除手術があったことを全く感じさせない。それどころか、「闇火」で歌唱するRYUICHIはむしろ、これまであまり見られなかった、全身を使って感情を剥き出しに歌う。一層力強さを増し、伸びと艶のある声は欠かせない唯一無二のものであることを体感させた。バンドを勢い付ける核でもあり、エンジンとなるような真矢のパワフルなドラミングとJの太く歪んだベースライン、INORANの彩りを添えるクリーンなアルペジオ、SUGIZOの時に凶暴に叫ぶように深くエフェクトが掛かり、サステインもあるギターサウンド。
時にはぶつかり合い”終幕”を挟んでいるものの、これらの強すぎるほどの個性が、それでも相互に絶妙に噛み合い続けてきた。だからこそ、一度もメンバーが変わることなく、LUNA SEAは未だに第一線で活動の30年目を迎えることができたのだと感じる。

先に供述した攻撃的なサウンドはもちろん、宇宙のような近未来的幻想がイメージされたステージングで披露したTM NETWORKのカバー「BEYOND THE TIME~メビウスの宇宙を超えて~」、「闇火」のような儀式的な世界観などLUNA SEAの魅力を存分に伝えたライブ中盤。真矢のドラムソロのコーナーでは、能の囃子方の太鼓と笛が奏でる和の世界に。能や和太鼓の世界に幼少期から触れていた真矢のドラムプレイが、和の世界へと要所要所でマッチしていく。大型コンサートで使用したのは真矢が世界初であるというPearlの電子ドラム「e/MERGE」のサウンドを織り交ぜた、手数の多い激しいドラムプレイへと変化していく。恒例のコール&レスポンスでは、「もっとこいよ! 俺たちの30年はこんなもんじゃねえよな!」と、いつもに増して熱のある煽りで会場からの声を誘う。最後には音玉が鳴り、かなりスペシャルなドラムソロとなった。

LUNA SEA、誰一人欠けることなく聖夜に届ける30年の奇跡


「お前らサイコーにかっこいいぜ!」と真矢が締めくくるとともにオケが鳴り響き、続いてJのベースソロへ。「スーパーアリーナ! 続いて行くぞー!」とJが叫ぶと、ステージスクリーンの十字架の下、四つ打ちのノリやすいドラムの上に、かなりファジーなベースサウンドと共にコール&レスポンスを繰り広げる。最後には「Merry Christmas」の文字が現れ、童謡「ジングルベル」のメロディを弾く場面もあった。ベースソロでテンションの上がったJは「クリスマスだし? 30周年だし? 俺はなんかテンション高えし! このままの勢いで次の曲コールさせてもらいます!」と、ファンの中でも人気の曲「JESUS」へ。
ドラム・ベースソロからの勢いもあり、会場からの悲鳴のような歓声も一層大きく響いた。

LUNA SEA、誰一人欠けることなく聖夜に届ける30年の奇跡


「JESUS」、「THE BEYOND」を披露すると、ここで、INORAN曰く「SUGIZOが機材を愛しすぎてしまった」故のギターの機材トラブルが起こり、メンバー全員でトークの間を繋ぐ。普段ならメンバーは一度ステージから下りるが、今回はスペシャルということで急遽トークコーナーへと移行した。真矢がメンバーのモノマネをするジョークあり、30年を振り返ったトークありで、J曰く「30年間で1度もなかった神回」だという。各々の楽器を鳴らしながら自己紹介するシーンでは、ギターが鳴らないSUGIZOが「ギャイーン!」と叫びながらエアギターを鳴らすシュールな場面もあり、会場からは歓喜の声が上がった。RYUICHIは、「一度壊れてしまった関係が、7年ぶりのステージで東京ドームに立てて、これか、これが血を騒がせるグルーヴなんだな、世界にはうまいバンドがたくさんあるけどLUNA SEAのグルーヴは世界のどこにも負けていない、パッと集まったミュージシャンには出せないグルーヴなんだよね。我々も約半世紀生きてきて、サウンドにも深み、熱がさらに篭ってきています。ということは、さらに若々しくパワーのあるサウンドを皆に届けられるのではないかなと思っています」と話した。

LUNA SEA、誰一人欠けることなく聖夜に届ける30年の奇跡


確かにステージの合間のメンバー間のコミュニケーションが増えてきている。筆者は、REBOOTしてからのLUNA SEAしか直接ライブを観たことはないが、映像で観てきた終幕前のライブよりもメンバー同士の絡みが確実に増えてきていた。本公演中にもステージ中にハイタッチやメンバー同士が歩み寄って一緒にプレイする場面が数多く見られた。これまでの30年、特に、一度は降ろしたLUNA SEAの幕が再び上がった2007年からの12年の間に、5人の絆は全盛期よりも更に強固になり、互いにサポートし合い、より理想的な関係を築けてきたのではないかと感じずにはいられなかった。
トラブルの場面ではあったものの、このメンバーが支え合って繋いだワンシーンは、SLAVEにとっても何にも代え難い素敵なクリスマスプレゼントになったはずである。

LUNA SEA、誰一人欠けることなく聖夜に届ける30年の奇跡


更に運命的に感じたのは、この後披露された楽曲、9thアルバム『LUV』収録の「BLACK AND BLUE」である。映画『ペルシャ猫を誰も知らない』に出演する情熱に溢れたイランのバンドに感銘を受けたSUGIZOが作ったというこの楽曲、「僕らもかつてはそうだったはず。30年近く前はね。かつて少年だった自分たちが望んだのが、今の状況のはずなんです。」とインタビューでSUGIZOが語った言葉を覚えている。30年の間に紆余曲折を経た末に、彼らが描いていた理想のバンドの姿を体現した楽曲がこのタイミングで演奏された。この出来過ぎた偶然に心からアツくならずにはいられなかった。トラブルを経ても、ライブの勢いは落ち着くどころか、会場もメンバーも更に盛り上がっていき、「STORM」、「SHINE」、「BELIEVE」と往年のヒットナンバーを出し惜しむことなく、最大級の勢いでライブ本編を終えた。

アンコールでは、赤と緑のライトに照らされたクリスマスカラーで場内が照らされる中、スマホのライトを点けたSLAVEによる「きよしこの夜」の合唱でメンバーが迎え入れられ、その光の中で「HOLY KNIGHT」を演奏。更に「White Christmas」の1フレーズを演奏した流れから、代表曲「I for You」を披露し、心に染み渡るようなバラードの世界で、さいたまスーパーアリーナは大きな感動に包まれた。RYUICHIから真矢にMCをバトンタッチすると、「今日のトラブルは俺たちの30年が試されたね。そして、その時間を俺たちが笑顔で過ごせたね。
これは俺たちが培った30年の結晶だと思います、いい時間だった!」「30年間皆が支えてきてくれて、誰1人欠けても今のLUNA SEAは無い。本当にありがとう! 最高だね!」と笑顔で振り返り、当日一番の拍手が沸き起こる。「もういっちょ盛り上がって行こうかー!」というRYUICHIの煽りから、INORANのイントロのリフが印象的な「TONIGHT」、そしてライブの締め括りの定番「WISH」とラストへ向けた勢いのまま走り抜ける。「WISH」で幕下ろしかと思いきや、最新アルバム『CROSS』の1曲目に収録されている「LUCA」を初披露。『CROSS』のプロデュースに携わったスティーヴ・リリーホワイトはこの曲のアプローチを蕾が開花していく様子に例えていたが、夜明けのような希望が満ち溢れた楽曲を最後に披露することにより、30年間を超えて、より輝かしく広がっていくLUNA SEAの未来への希望を感じさせ、ライブは幕を下ろした。

LUNA SEA、誰一人欠けることなく聖夜に届ける30年の奇跡


30年間変わらない激しさとエナジーに溢れたロックと、最新アルバムでより前面に押し出された、宇宙的に壮大なスケールを体現しているLUNA SEA。MCでメンバーが語った「誰1人欠けても今のLUNA SEAはなかった」という言葉が示すように、まさに奇跡に次ぐ奇跡が重なったからこそ存在しているバンドなのだと感じた。大規模のライブの度に悪天候に見舞われることから「嵐を呼ぶバンド」と称されるLUNA SEAだが、12月21日のライブでは間違いなく最高の感動の嵐を呼んだ。誰が見てもそう感じるライブだったと言える。

写真:田辺佳子、橋本塁、清水義史

LUNA SEA
「30th Anniversary LIVE LUNATIC XMAS 2019 さいたまスーパーアリーナ2days」

2019年12月21日(土)、22日(日)
=2日目セットリスト=
1. 宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~ ※12/18発売AL『CROSS』収録曲
2. The End of The Dream
3. ROSIER
4. DESIRE 
5. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
6. Sweetest Coma Again
7. BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~ ※TM NETWORKカバー
8. 悲壮美 ※12/18発売AL『CROSS』収録曲
9. 闇火
10. Dr.Solo & Bass Solo
11. JESUS
12. THE BEYOND ※12/18発売AL『CROSS』収録曲
13. BLACK AND BLUE
14. STORM
15. SHINE
16. BELIEVE

ENCORE
1. HOLY KNIGHT
2. White Xmas ~ I for You
3. TONIGHT
4. WISH
5. LUCA 
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