昨年9月からスタートしたこのワールドツアーでは、11月にブリング・ミー・ザ・ホライズンをスペシャルゲストに迎えた日本公演をすでに行なっているが、今回はサブタイトルからもわかるように11月の公演とは異なる特別なものになることが事前から予想された。
各日2万5000人、2日間で約5万人の動員を記録したこのライブは、とにかくすべてにおいて”破格”という言葉がふさわしい、まさに伝説級の2日間だった。ライブ初日、まず開演してから驚いたのは、ステージに設置されたスクリーンの大きさだろう。先の11月公演もかなりの大きさに驚愕したが、今回はその比ではない巨大さで、筆者が観たさいたまスーパーアリーナ公演のステージセットを全体的に1.5倍ほど大きくしたような印象を受けた。なので、オープニングに上映された映像の壮大さにまずは度胆を抜かれたわけだ。
ライブの序章といえるこのオープニングムービーでは、BABYMETALが持つふたつの側面……”LIGHT SIDE(光の世界)”と”DARK SIDE(闇の世界)”に触れられ、この日は”LIGHT SIDE”にスポットを当てた構成になることが明らかに。そして新作『METAL GALAXY』のオープニングを飾るインスト「FUTURE METAL」が爆音で流れ始めると、2万5000人のオーディエンスから一斉に歓声が湧き上がる。そのまま「DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)」へと続くと会場中にまばゆいレーザーが飛び交い、ステージにはSU-METAL(Vocal & Dance)とMOAMETAL(Scream & Dance)そして、サポートを務める”アベンジャーズ”のひとりがステージに姿を現し、アグレッシヴなダンスとSU-METALの力強くも伸びやかな歌声で観る者を魅了。「Elevator Girl」では上下に動くステージで、真剣な中にも時折笑みを浮かべるメンバーの姿に心を奪われる。さらに「Shanti Shanti Shanti」ではサイケデリックな映像を背に、息の合ったキレキレのダンスで会場の熱気をどんどん高めていった。

Photo by Taku Fujii
先にも触れたように、とにかく巨大なスクリーン(ステージの幅に合わせた巨大な長方形1枚と、その左右に設置された2枚の計3枚)に映し出される映像は、どんな言葉にも代え難いほどの凄みを放っていた。あるときは壮大な宇宙が描かれ、まるで観客が本当に宇宙旅行をしているような錯覚に陥り、あるときはメンバーの美しい表情がドアップで表示。またあるときには、「Shanti Shanti Shanti」のようなサイケなアートが巨大な画面で展開され、否が応でも別世界へとトリップしてしまう。

Photo by Taku Fujii

Photo by Taku Fujii

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide

Photo by Taku Fujii
メタルダンス・ユニットの本質を示しつつ、音楽的進化も見せる
ここまでの曲順を目にしてお気づきかもしれないが、初日公演の”LIGHT SIDE”ではアルバムの前半パート(日本盤におけるDisc-1)を中心に進行。ここに、過去の人気曲が挿入されていくのだが、その選曲も非常に興味深いものがあった。特にこの日はニューアルバムからの楽曲の間に「ヤバッ!」が披露されたのだが、新作で提示した躍動感、ダンサブルな側面にスカテイストの「ヤバッ!」が加わることで、BABYMETALが”メタルダンス・ユニット”としての存在意義を改めて主張しているようにも感じられた。そんな中、「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」のような新曲ではさらなる音楽的進化を見せてくれる。本当にすごい存在になったものだと、この日はライブを観ながら何度もその事実を噛み締め続けた。

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide
ライブ後半は「ギミチョコ!!」「メギツネ」といったおなじみのナンバーで、フロアをさらに加熱させていった。アリーナの真ん中近くまで移動するステージ上で、「幕張―っ!」と呼びかけ、MOAMETALは小悪魔的な笑みを浮かべつつ観客をダンスで煽り続ける。
”光”と”闇”がひとつになり、BABYMETALは”最強”に……白装束の神バンドに加え黒装束の神バンドのツインバンド編成で、さらにステージにはフラッグを背に抱えた5人のシルエットが。メンバー2人に加え、これまでライブをサポートしてきたアベンジャーズ3人が一堂に会するスペシャル編成で、「Road of Resistance」を披露したのだ。まさに”最強”と呼ぶにふさわしい演出はサプライズ以外の何ものでもなく、オーディエンスは大興奮。声が枯れんばかりのシンガロングを響かせ、さらに心をひとつにしたところで初日公演は幕を下ろした。

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide
1月25日公演セットリスト
01. FUTURE METAL
02. DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)
03. Elevator Girl
04. Shanti Shanti Shanti
05. Oh! MAJINAI (feat. Joakim Brodén)
06. ヤバッ!
07. Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)
08. ギミチョコ!!
09. メギツネ
10. Night Night Burn!
11. THE ONE
12. Road of Resistance
「DARK SIDE」を軸にした26日公演
26日公演は初日公演から一転、”DARK SIDE”を軸にしたセットリストで進行。BABYMETALは過去にも”DARK SIDE”と銘打ったライブを2018年に展開したが、今回は”LIGHT SIDE”と対であることが大前提であり、数ある表現のひとつとして受け取ることで、以前とは違った解釈ができたはずだ。
アルバム後半(日本盤Disc-2)の幕開けを飾るトライバルなインスト「IN THE NAME OF」でフロアの熱量を高めていくと、ステージにはシンボルマークを象った杖を手にしたBABYMETALとアベンジャーズ3人が登場し、中央に集まっていく。まるでこれから、邪悪な黒ミサが始まるのではないか……そう思わずにはいられないほど、前日とのギャップに驚かされる。そこからまばゆい照明の中、印象的なコーラスのリフレインが響き始め、ステージにはSU-METAL、MOAMETAL、アベンジャーズのシルエットが浮かび上がる。この流れで勢いよく「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」へとなだれ込むと、会場は早くもクライマックスと呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せた。

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide
「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」ではフィーチャリングアーティストF.HEROも映像で客演。サビではお祭り騒ぎとばかりに、オーディエンスが手持ちのタオルをプロペラのように頭上で回し続ける。そして、新作からの楽曲が3曲続いたあとに人気曲「KARATE」が繰り出されると、フロアの熱気はさらにヒートアップ。初日の多幸感溢れる空気感とは異なり、2日目はシリアスさを軸にしつつも緩急に富んだ、今のBABYMETALだからこそ表現できる世界観が展開されていった。特に、この日はSU-METALやMOAMETALの目元のみを映す撮り下ろし映像が曲間に挟まれ、それらが程よいスパイスの役割を果たしていたのも印象的だ。

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide
年齢的にも成長した今のBABYMETALだからこその1曲「Kagerou」では、MOAMETALによる妖艶なダンスも見どころのひとつ。続く「BxMxC」ではヒップホップやトラップにメタルをミックスさせたモダンなトラックと、挑発的なリリック&ヴォーカルにメタルの新たな可能性を感じずにはいられなかった。このように、1曲1曲で異なるチャレンジに挑んだ新作『METAL GALAXY』は、本当に”メタルの銀河の旅”を具現化した作品なのだと気づかされる。

Photo by Taku Fujii

Photo by Taku Fujii

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide

Photo by Takimoto ”JON” Yukihide
メタルコアとV-ROCKの融合といえる「シンコペーション」を経て、次に披露されたのが久しぶりの「ヘドバンギャー!!」。イントロの時点で悲鳴のような歓声が鳴り響き、特製のマイクスタンドを手にしたSU-METALが原曲以上に力強く、そしてディープさが増したボーカルで観客を魅了し続ける。曲後半のカオティックな展開ではフロアが阿鼻叫喚の盛り上がりを見せ、改めてこの曲がずっと待ち続けられていたことを証明する結果となった。
さらなる高みへ昇華させた「イジメ、ダメ、ゼッタイ」
カオスな盛り上がりを経て、「Starlight」でライブは佳境へ。

Photo by Taku Fujii
SU-METALのハミングに続いてパワフルなバンド演奏が加わると、ステージ両サイドのウィングや花道などに散っていたMOAMETALとアベンジャーズ3人が一斉に走り出す……なんともうれしいサプライズじゃないか。曲中盤の”バトルパート”ではMOAMETALやアベンジャーズたちが戦う様もフィーチャーされ、その一挙手一投足に対して客席から喜びの声が鳴り響く。SU-METALの歌声もリリース当時からは想像もできないほどの強さ、儚さ、美しさを兼ね備えたものへと進化し、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」という楽曲を、そしてこの曲が持つメッセージをより強いものへと昇華させた。こうして以前の”DARK SIDE”とは異なる、明らかに「2020年のBABYMETALだからこその”DARK SIDE”」を完璧な形で表現し終え、メンバーはステージをあとにした。
1月26日公演セットリスト
01. IN THE NAME OF
02. Distortion (feat. Alissa White-Gluz)
03. PA PA YA!! (feat. F.HERO)
04. KARATE
05. Kagerou
06. BxMxC
07. シンコペーション
08. ヘドバンギャー!!
09. Starlight
10. Shine
11. Arkadia
12. イジメ、ダメ、ゼッタイ
2日間を通して、”光の世界”と”闇の世界”をまるで旅するような感覚で楽しむことができた今回の2DAYSライブは、アルバム『METAL GALAXY』が提示する”メタルの銀河の旅”をさらに具体的な形で表現したものだった。と同時に、結成から10年近くを経て今のBABYMETALが最高地点に到達しつつあることを証明する結果でもあった。
だからこそ、26日公演のエンディングに告知された今年結成10周年を迎えるBABYMETALの”最終楽章”「METAL RESISTANCE EPISODE X」の意味が気になってならない。その詳細は”FOX DAY”=4月1日に発表される予定だが、彼女たちにこの先どんな未来が待ち受けているのか期待と不安が入り混じる中、今は新たなる”お告げ”を静かに待ちたい。