chelmico、実に絶好調である。カルチャーシーン全体にその作品性に満ちているクリエイティブなロマンの魅力が波及している『映像研には手を出すな!』(NHK総合)のオープニングテーマ「Easy Breezy」は日本のみならず海外のリスナーからも熱い反響が寄せられている。


それに次ぐ2020年第2弾デジタルシングル「Limit」は全国展開しているフィットネスジム、JOYFITとのコラボソングだ。ビート、ラップ、MVの内容と、全方位にわたりキレキレに攻めまくっているこの曲について、chelmicoの2人に語ってもらった。またJOYFITとMVの監督を務めた田辺秀伸からのコメントも掲載する。

─新曲「Limit」の話の前に、アニメ『映像研には手を出すな!』(NHK総合)のオープニングテーマ「Easy Breezy」の反響がなかなかすごいですよね。海外からの反応も含めて。

Mamiko:「映像研」パワーはすごく感じてますね。You Tubeのコメント欄も海外の人がすごく多くて。

Rachel:湯浅政明監督は海外にすごくファンが多いから。その影響もあると思いますね。

─あとはクリエイターたちの反応の熱量も高いですよね。

Rachel:そう、一緒に仕事したことがある人とかの反応も今までの曲で一番大きいかも。

─2020年の幕開けとしてバッチリっていう。


Rachel:パッカーン!って扉が開けた感じがしますね。

Mamiko:よかったよねぇ。

─chelmicoの海外に対する意識はどうなんですか?

Mamiko:あんまり考えたことないんですけど、でも、今回は湯浅さんの作品だから海外のリスナーにも届くと思って曲タイトルは絶対に英語にしようと思ったし、そういう意味では今回初めて海外を意識したと言えるかもしれない。

Rachel:今までもなんとなく英語が入ってる曲はあったけど、タイトルからガッツリ英語で歌詞も英語のワードを繰り返す曲は初めてで。

─海外でライブをすることの興味は?

Rachel:やりたーい!

Mamiko:それはけっこう前から言っていて。「今年どこかのタイミングでないかなぁ?」って思ってます。

Rachel:まずはアジアでやりたいよね。台湾、タイ、中国とか。

Mamiko:ヨーロッパも行きたいよね。アメリカのフェスも出たい。

Rachel:うん。コーチェラとかサウス・バイ・サウスウエストとか出たいよね(笑)。


─コーチェラは去年Perfumeが出たところから、今年はきゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんと初音ミクがラインナップされている流れを鑑みて、ガールズポップとテクノロジーをかけ合わせたアーティスト性が求められているのかなという傾向を感じつつ、そこから派生する文脈が生まれてくるのであれchelmicoも夢ではない気もしますよね。

Rachel:なくはなさそうですよね! なんでもいいから出たいな(笑)。

「トラックも歌詞もMVもかなり攻めてるのでJOYFITさん懐が深いなと」

─今日の本題の「Limit」ですが、全国展開しているフィットネスジム、JOYFITとのコラボソングというなかなかレアなタイアップで。

Rachel:お話をいただいたときはビックリしました。

Mamiko:「私たちで大丈夫ですか!?」って。

Rachel:スポーツ系では全然ないので(笑)。

─でも、今回のプロジェクトのテーマが「もっとゆるくて自由でマイペースなジムとの付き合い方もあっていい」ということで、chelmicoに白羽の矢が立ったと思うんですけど。

Rachel:そうなんですよね。まだジムに行ったことはないけど行ってみたい人のためのキャンペーンでもあると思うので。そういう意味では自分たちの環境に近いところがあって。なので、歌詞も自分たちに寄せて書いたらJOYFITさんが丸まるOKしてくれました。トラックも歌詞もMVもかなり攻めてるのでJOYFITさん懐が深いなと思って。


─たしかに全方位に攻め攻めですよね。まず、ビートが全然タイアップ曲然としてない(笑)。

Rachel:ですよね(笑)。JOYFITさんのクリエイティブに対する理解がハンパないなと思って。本当に大好きになりました。

─ジム通いってリアルにしたことないんですか?

Rachel:私はないです。

Mamiko:私は去年のツアーに向けて週イチで通ってたんですけど、ツアーが終わったら月イチになっちゃいましたね(笑)。予定がピンポイントで入ったりするから、パーソナルトレーニングだしなかなかスケジュールを組むのが難しくて。

─ちなみにどんなメニューをこなしてるんですか?

Mamiko:プランクという体幹を鍛えるトレーニングですね。歌に必要な筋肉をつけようと思って。それでだいぶ変わったと思います。私、本当に体力が全然なかったので。


Rachel:まみちゃんすごく変わったと思う! 歌が上手くなったなって思う。

─発声も変わるだろうし。

Mamiko:変わりますね。息切れしなくなりました。

─chelmicoの曲は言葉を詰め込む系のラップも多いしね。

Mamiko:そう。あとMCが2人しかいないので、すぐに自分の出番がきちゃうんですよね。

─それは最初からでしょ(笑)。

Rachel:MCが4人くらいいるとちょっと休憩もできるけど、2人だから休めないもんね(笑)。私も家でトレーニングしてるんですよ。それこそ、プランクとか。毎日1分やってます。
1分だけだったら続けられるなって。

Mamiko:すごい!

Rachel:自分でもすごいと思ってる(笑)。

─chelmicoも裏ではけっこうストイックな面もあるというエピソードが紐解かれちゃいましたね。

Rachel:(ハッとして)いや! 全然何もやってないですよ!

Mamiko:毎日酒飲んでますよ!

Rachel:ライブのセトリとか事前に決めないでライブやるもんね!(笑)。

─リハもしないし?(笑)。

Mamiko:リハなんて1回もしたことないですね。雰囲気だけでやってます!(笑)。

楽曲制作のプロセス

─それは冗談として、楽曲制作の行程としては、まずダークな高速ダブステップとフューチャーベースが融合したようなこのアグレッシブなビートから組み立てていったんですよね?

Rachel:そうです。運動するときに適したBPMにしたくて。そしたらトラックメイカーのryo takahashiのモードがこういう感じだったという。

Mamiko:あとは強気になれるビートにしたかったですね。

Rachel:ここで「楽しもう! イェイ!」みたいなノリだと嘘っぽくなっちゃうなと思って。


Mamik0:クールだし攻めてますよね。そもそもサビがないですからね。

Rachel:サビなしの曲はchelmico史上初かも。

─今までのシングルやリード曲の中でも一番攻めてる。

Mamiko:一番攻めてまね。

Rachel:今までだったらアルバムに入ったとしても絶対にシングルにはならない曲ですね。

─換言すれば今だからこそこの曲をシングルで切れるという。

Rachel:そうですね。これまでリリースしてきた曲で音楽的な幅がすごく広がったし、この曲をリリースすることでもっと幅が広がる気がします。

─で、2人のラップスキルも確実にまた向上してますよね。

Rachel:Ryoくんのディレクションもあって、今までやったことないアプローチに挑戦できたのも大きかったですね。あとはレコーディングしていくも自分たちで「これ」というテイクの判断ができるようになったのもありますね。

─だから、楽しみながらスキルアップしてるというchelmicoこの感じがJOYFITもシンパシーを覚えたんだろうし。こじつけるわけじゃないけど。

Mamiko:たしかにそこはマインドとして共通してると思いますね。

─MVのインパクトもかなりのもので。

Rachel:監督は田辺秀伸さんなんですけど、最初にプレゼンしていただいた段階から独特で。監督は最初から「この世界観でいきます!」という感じでした。

▼chelmico × JOYFIT コラボソング「Limit」 YOU TUBE

─この曲自体がクリエイティビティを全開にすることを求めてると思うんですよね。

Rachel:そうであってほしい。監督にはつねに私たちの予想を裏切ってほしいから。今回も田辺さんに見事に裏切ってもらいました。ありがたいです。

「今はとにかく攻めたいと思っている」

─あとは、このMVもそうだけど、底知れない緊張感とユーモアの共存というのがchelmicoの大きなキーワードだと思っていて。この曲はそれが極まってると思う。

Mamiko:今はとにかく攻めたいと思っていて。

Rachel:意図的にね。前より頑固になって意志表示してる感じがありますね。

─なんでそうなったんですか?

Rachel&Mamiko:なんでだろうね?

Rachel:そういう気分なのかな?

Mamiko:勢いをつけたいのかもね。

Rachel:でも、それも「Easy Breezy」も影響してると思う。自分たちがいいと思ったアプローチが実際に人に届いている充実感があるし、だからこそさらにもっと好きなことをやろうというモードなのかも。前から好きにやらせてもらっていましたけど、前よりももっと好きにやらせてもらおうと思ってます。ビートも普通のループものはしばらくいいかなという感じで。ループだけど他と違う要素を入れたいなと思ってます。

─3月からツアーが始まりますけど、ライブ表現に関しても変化や成長を感じてる部分も大きいんじゃないですか?

Rachel:ありますね。細かいことを気にするようにもなって。前はとにかくパフォーマンスをするみたいな感じだったんですけど。

Mamiko:そう。まずはちゃんとラップする。そのうえでがんばってステージの使い方を考えるくらいの感じでした。

Rachel:ライブのアベレージも上がってきたから、もっとライブをよくするためにどうすればいいのか考えられるようになったんですよね。

Mamiko:最近は細かいパフォーマンスについて2人で話し合ったりしてます。

Rachel:ライブをよくしたいとはぼんやりとずっと思っていたけど、ちゃんと話し合いの場を設けることですごくプラスになってるよね。

─これから会場のキャパも間違いなく右肩上がりになっていくわけじゃないですか。そうするとエンターテイメント性とどう向き合うかというテーマも生まれてくると思うんですよね。

Rachel:やっぱりRIPSLYMEにずっと憧れてきたので。RIPSLYMEのライブってメンバーに扮した別の人がなりすましたり、武道館のステージに剣道の道着で出てきたり(笑)、大きな演出からちょっとした振り付けまで粋なエンターテイメント性が詰まっていて。そういうところにはずっと憧れてますね。

Mamiko:ライブ中に火とか出してみたいし(笑)。

Rachel:会場が相当大きいところじゃないと出せないよね。

Mamiko:あと、次のツアーの東京と大阪の追加公演ではバンドセットで臨むので。

─バンドセットって初めてなんですか?

Mamiko:いや、初めてではないんですよ、それが。なぜか初ワンマンをバンドセットでやったんですよ(笑)。

Rachel:今思えば、なんでだよって感じなんですけど(笑)。

Mamiko:でも、今回はめっちゃ楽しみですね。

Rachel:かなりヤバいことになりそう。Shin Sakiuraにバンマスを務めてもらって。私たち2人+バンドメンバー5人の計7人でステージに立ちます。

─chelmicoのビートを生演奏に変換するのリズム隊とか大変だろうなぁ(笑)。

Rachel&Mamiko:いやー!

Mamiko:そこはがんばってもらって(笑)。

─2020年、どんなことを実現させたいですか。

Rachel:いくつかあるんですけど、期間限定ではないラジオのレギュラーがほしいですね。

Mamiko:それ私も言おうとした!

Rachel:あとはスカパラの歌ものゲストをやりたいですね!

─それ、ずっと言ってますよね(笑)。

Mamiko:結成当初から言ってます。めちゃくちゃやりたいです。あとは、やっぱり海外かな? 

Rachel:海外に行きましょう!

田辺秀伸監督&JOYFITコメント

・「Limit」ミュージックビデオ 田辺秀伸監督コメント

「体を一緒に楽しく動かしましょう!」というアプローチではなく、
体を動かすことへの抵抗と意識のなさを逆説的アプローチで企画しました。
気が触れたように笑顔で体を動かすジョイフィットインストラクターを背負って歌う気だるそうな空気感のchelmicoの二人。
この双方の極地的な差を出すことで、逆説的に体を動かすことへのフォーカスを意識しました。健康を意識させるために、不健康な画を植え付ける的な。
またChelmicoの二人は運動とかけ離れたスーツスタイルのセットアップで衣装の角度からもインストラクターの皆さんとの差別化を図りました。
また空間は赤と青のHOT&COOLを連想した二色で画面に登場する演者さん達によりしっかりと目が生き、見せたいことを明確にしたビジュアルを目指しました。
インストラクターさんの笑顔がすぎる逆無表情や、ヘアメイクを作り込むことで国籍不明し運動することに普遍的な価値観を表現しました。
日本国内だけの価値観ではなく、世界の共通認識としての価値観の逆輸入的な見え方になればいいなと思いました。
どこか中毒性を感じてもらい、さまざまなキャラクターとクールに歌うChelmicoのコントラストを楽しんでいただけらと思います。

・JOYFITコメント

プロモーション企画を練っている段階で、アンケートやインタビューをしていたのですが、今までフィットネスジムに通ったことがない人の意見や止めてしまった人の意見、フィットネスジムに対しての外側からのイメージなどを深掘りしていきました。
その中で出てきたのがフィットネスへの「義務感」というワードでした。
日本のフィットネス人口を増やすためにはフィットネスへの「義務感や抵抗感をなくしたい!」というのが今回のコアのコンセプトになり、企画が具体的に進んでいきました。
どうやってこの課題を解消すれば良いか考えた末に出てきたのが、「ゆるさ」でした。

=どうしてchelmicoに行き着いたのか?=

「今回の企画(ゆるさ)にぴったりの二人組がいます!」ということで紹介を受けて、恥ずかしながら当時は詳しく存じ上げなかったんですが、「〇〇〇茶の人か!」となり、それから彼女たちの雰囲気だったり世界観を知っていくうちに、等身大のありのままのリリックや、彼女たちの挑戦している姿勢なども、JOYFITとリンクするところがあり、私も「今回の企画はchelmicoさんにお願いしたい!」ということになりお願いしました。
出来上がってきた曲を一番最初に聴いた時は、ありふれた言葉かもしれませんが、良い意味で「裏切られた!」って思うほど想像していたものと違う楽曲が上がってきて正直驚きました。笑
ですが、chelmicoさんの新しい挑戦を、同じく常に挑戦をしている「JOYFIT」の楽曲として仕上げていただけたことに今では大変感謝しています。

株式会社 ウェルネスフロンティア
PR部 清水

JOY FIT特設サイト「JOY for FITNESS」!
https://joyfit.jp/campaign-fblp/joyforfitness-project2020/

<INFORMATIOMN>

chelmicoが語る「届いてる充実感」からの攻めモード、次の一手は?

「Limit」
chelmico
ワーナーミュージック・ジャパン
配信中

「chelmico 感謝祭 Tour 2020」
2020年3月1日(日) at 横浜 F.A.D →延期
2020年3月7日(土) at 福岡 DRUM LOGOS →延期
2020年3月8日(日) at 熊本Be.9 V2 →延期
2020年3月14日(土) at 岡山 YEBISU YA PRO
2020年3月15日(日) at 京都 MUSE
2020年3月20日(金・祝) at 札幌 Sound lab mole
2020年4月4日(土) at 仙台 CLUB JUNKBOX
2020年5月8日(金) at 大阪 BIGCAT
2020年5月10日(日) at 名古屋 ReNY limited
2020年5月15日(金) at 東京EX THEATER ROPPONGI(BAND SET)
2020年5月16日(土) at 東京EX THEATER ROPPONGI(BAND SET)
http://chelmico.com/
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