ローリングストーン誌とのインタビューに答えたアンドリュー・ヤンは、新型コロナウイルス対策として、民主党幹部とベーシックインカム計画について話し合ったことを明らかにした。

アンドリュー・ヤンは大統領民主党予備選挙から離脱したが、全てのアメリカ成人に1人当たり毎月1000ドルを与えるという彼の代表的な計画が、かつてないほど支持されている。


新型コロナウイルスの影響で一気に景気が後退し、自営業者や非正規雇用者の生活が苦しくなると見られる中、様々な政治的立場の議員がパンデミック対策として現金支給に賛成の声を上げている。アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(民主党、ニューヨーク州代表)、トゥルシー・ギャバード下院議員(民主党、ハワイ州代表)、ミット・ロムニー上院議員(共和党、ユタ州選出)らはみな、パンデミックによる経済損失の対策として、何らかのベーシックインカムの導入を呼びかけている。ティム・ライアン下院議員(民主党、オハイオ州代表)とロー・カンナ下院議員(民主党、カリフォルニア州代表)は被害を受けたアメリカ人を対象に、各々のニーズに応じて最大6000ドルを現金支給することを提案。ロムニー上院議員は、成人国民に対して一律1000ドルを支給する案を発表した。

コロナウイルスの最中、自ら推し進めてきたアイデアが議員たちに支持されて感激だ、と言うヤン氏。非公式ながら、議会で民主党幹部らとユニバーサル・ベーシックインカムについて話し合ったと述べた。また、大統領選挙の離脱後に立ち上げた団体Humanity Forwardも、複数の政策担当者と接触しているという。「国民の生活が崩壊する前に可決できるかもしれないことを嬉しく思います」と、本人も語っている。

月曜の午後、ヤン氏はローリングストーン誌の取材に応え、なぜベーシックインカムでアメリカ国民が生活できるようになるのか、もし自分が大統領ならどんな対策を実行するか、そして将来再び公職に立候補する可能性について語ってくれた。

ーCOVID-19パンデミックの対策として、ユニバーサル・ベーシックインカムが正しいと思う理由は何ですか?

アンドリュー・ヤン:考えてみてください、今働いている数百万人ものアメリカ人が大打撃を受けることになるんです。業種は多岐にわたります――Uberの運転手にウェイトレス、キャビンアテンダント、ホテルの従業員、犬の散歩係にパーソナルトレーナー。これだけ大勢のアメリカ人がこれから収入を減らされる、もしくはまるっきり失ってしまうんです。


疾病予防管理センター(CDC)は先日、2カ月間50人以上の集会を避けるように、と言いました。ニューヨーク市は全てのレストランとバーを閉鎖したばかりです。経済的波及効果は壊滅的で、かつ広範囲にわたります。

ですから、天を仰いでこう言う他ありません。「一体全体、こんな状況でどうすればアメリカの何百万世帯の生活を支えられるというのか?」 コロナウイルスの前から、すでにアメリカは過去最低の財政不安を抱えていました。アメリカ人のほぼ半数が、突然の400ドルの出費に対応できないと言っています。国民の78%が毎月の給料でなんとか食いつないでいるんです。ではどうすればいいのか?

何らかの抜本的な行動を起こさない限り、需要と経済活動は大幅に縮小し、歴史的大恐慌を迎えることになるでしょう。そうした状況を踏まえると、需要を支えてアメリカの各家庭がなんとか生活できるようにするには、抜本的な対策を講じるしかないんです。全員の手に現金を、可及的速やかに渡すこと。これ以外に現実的な方法はありません。

ーもし今あなたが大統領だったら、コロナウイルスに特化したベーシックインカム救済プランとしてどのようなものを策定しますか?

ヤン:私なら成人1人につき一律1000ドル、18歳未満の未成年には500ドルを、3カ月間支給します。
勤労所得税額控除もいいとは思いますが、必要とする人全員が対象になるとは限りませんし、こうした危機ではあまり悠長に構えてもいられません。取りこぼしの弊害は莫大です。取りこぼすくらいなら配り過ぎる方がマシです。とにかく「大人は1000ドル、子供がいるなら追加で500ドルもらえますよ」と言うことで、より多くの人々がこの嵐を乗り切ることができます。

ー今回のパンデミックの影響を受けた人々からはどんな声が上がっていますか?

ヤン:あらゆる政治思想の人々が進み出て、現金でなくてはだめだ、と言っています。皆さんが正しい結論に達するのを見て、私も嬉しいです。皆さんの判断は正しい。私自身も達成感を感じています。誰かが現金支給を口にする度、私の名前が挙がるんですからね。この点に関しては誇りに思います。今回のような危機に見舞われた際、国が最も効果的な解決法を選べるように私がお膳立てしたんじゃないかな、と思っています。

ー主要な政策に関して、AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)とミット・ロムニー議員が最後に同調したのはいつぶりでしょうね?

ヤン:初めてだと思いますよ。
あらゆる政治的立場の人々が歩み寄って、政治の枠を超えて合理的に問題を解決していこうとしている。鳥肌ものですよ。

ー議会の方から、あなたやあなたのチームに、そのような法案策定の打診はありましたか?

ヤン:チームの方に打診がありました。私も非公式ですがいくつか相談を受けています。民主党幹部とも連絡を取っています。今夜CNNに出演したときにもお話するつもりです。私が主催するHumanity Forwardという組織も、可決に向けて動いています。私も、当たれるところは全て当たっています。

ー金利をほぼゼロにまで下げる、という連邦準備金制度理事会の決定には批判的でしたね。なぜですか?

ヤン:仮に私がウェイトレスで、勤め先のレストランがコロナウイルスのせいで閉店したとしましょう。ゼロ金利が一体私に何をしてくれるというんです? 銀行に行って、金を借りろとでも? 私には何の足しにもなりません。企業でも、労働者でも、大半の業界でも同じです。
もし私が自営業者だとしても、かけずり回ってあらゆる可能性を当たって融資を得ようなんて思いません。資本にアクセスできる人はたいてい数百万ドル、あるいは数千万ドル、あるいはそれ以上の収入がある大企業です。金利を下げたからといって、平均的な労働者は何の影響も受けません。恐らく平均的な中小企業もそうでしょう。

ーあなたが提唱しているユニバーサル・ベーシックインカムについて、すでに行われている、あるいは試験運用されているところはありますか?

ヤン:ひとつの例はアラスカ州の石油基金です。もう何十年も多くの人々から支持されています。今ここでぱっと思い浮かんだのは、インドのとある民族の例です。彼らはもう何年もカジノの売上を配当にして世帯に分配しているんですが、お金をもらったグループとそうでないグループを比較してみると、健康や教育、精神医療や家庭内暴力が着実に、しかも大幅に改善していることがわかりました。今我々は危機の真っ只中ですから、何としてもこれをやるべきです。困っている人にお金を渡すんです。私が以前からこれを推してきた理由は、危機であろうとなかろうと、どんなコミュニティも救ってくれるからです。

ーこのようなUBI救済プランのツケを後になって払わされるのではないですよね?

ヤン:ミット・ロムニー上院議員は経験豊富なビジネスマンです。
彼は、経済崩壊でどんな結果になるかよくわかっています。経済や社会が崩壊したらどれほどの代償を払うことになるのか?

ミットも知っている通り、人々に渡した現金はそのままトイレットペーパーや食料、Netflixの代金として支払われ、経済を循環していきます。お金は消えてなくなったりしません。経済活動で消費されるんです。使ったお金は、恐らく何倍にもなって手元に返ってくるでしょう。トリクルアップ経済は実在するんです。

ー最後の質問です。今も、将来的に公職に立候補しようとお考えですか? 以前、ニューヨーク市長選への立候補を口にされていましたが?

ヤン:それも可能性のひとつとして考えていますが、目下の目標は、1人1000ドルの緊急対策を議会で可決させること。正しい方向へ導くために、できることは何でもやっています。まさに今、あらゆる手を尽くしています。

編注:この記事は2020年3月16日、ローリングストーンUS版に掲載された記事を翻訳したもの。アメリカでは3月25日、連邦議会上院が経済支援策を賛成96、反対0の満場一致で可決。
総額2兆ドル(約220兆円)規模の新型ウイルス対策における家計支援として、年収7万5000ドル(約825万円)以下の大人1人につき1200ドル、子供1人につき500ドルが直接支給される。
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