先月初め、米フォートローダーデール出身の35歳バフィー・モンゴメリー氏は、昼間マッサージ師、夜はプロのマーメイド(正式名称は「水中パフォーマー」)という2つの顔を持っていた。

だが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、月末にはどちらの肩書も失った。
「仕事をたくさん抱えていたのは文字通りほんの一瞬。次の瞬間には何も残っていませんでした」と本人。

新たに失業者となった多くのアメリカ国民同様、バフィーも他に収入の可能性を探った。Uber EatsやPostmatesの配達員として登録し、次にZoomでヨガ教室を始めた。だが、自分と同じように失業している人々からお金をもらうのは気が引けた。「それで、Hな人たちからお金をいただくことにしたんです」

バフィーは、風俗業界でいう押し寄せる新規参入者――通称「民間人」――の1人だ。パンデミックで急増する失業のあおりをうけて風俗業界に群がり、WEBカムチャットやカスタム映像の撮影、特典Snapchatや会員限定チャンネルの購読を販売している(多くの場合、これらを組み合わせている)人々のことだ。彼女の友人たち(ウェイトレスやバーテンダーがほとんど)も同じように失業に遭い、風俗業界に期待のまなざしを向けているという。

「信じられないくらい大勢の人たちから、どうすればオンライン風俗を始められるかという質問を受けています」と言うのは、セックスワーカー兼ライターのジェシー・セイジ氏。オンラインマガジンOn Our Moonに、COVID-19時代の風俗に関するコラムも書いている。「(質問の大半は)以前から興味はあったけれど怖かった、という内容です。今はもう失うものはないという感じなんでしょうね」

会員購読サービスIsMyGirlのCEO、エヴァン・サインフィールド氏の話では、この2週間半で出演者の新規登録数が3倍に急増したそうだ。
そのうちの2/3は風俗業界未経験者で、ほとんどが最近解雇または一時解雇されたのでは、と推測している。「(オンラインで風俗コンテンツを販売するのに)必要な条件なんかありませんよ。たいして求められるものはありません」

新規参入者が風俗チャットパフォーマーの仲間入りをすることは、意外でもなかろうが、ネット風俗のベテランたちにとっては面白くない。自分たちは何十年とまではいかなくとも、長い年月をかけて存在価値を高めてきたのだから。テレフォンセックスオペレーター兼チャットパフォーマーとして経歴の長いHey_Heidi氏は、慎重に言葉を選びつつも、こうした流れには同調しかねると言った。「こういうにわか連中がやってきて、収入を奪われるんじゃないかとみんなすごく心配しているわ」

利用者はチャットする時間もプライバシーも確保できなくなっている

実際のところ、ライブチャット業界は大変な時期を迎えている。既存のパフォーマーたちは新規参入者との競合に加え、他業種のセックスワーカーとも張り合わなければならない。ネット上はエスコート嬢やポルノ女優などであふれかえっているのだ。さらに、サインフィールド氏はサイトの売上が30~35%増えたというが、すべてのセックスワーカーがそのような状況とは限らない。「顧客も失業中ですし、仮に失業していなくても全体的に経済への不安がありますから、そんなにお金を落としてくれません」とセイジ氏も言う。彼女の顧客には既婚者が多いので、以前よりチャットする時間もプライバシーも確保できなくなっている、とも言った。「つまり、需要減と供給過多の2つが同時に発生しているというわけです」

このように入り組んだ状況にも関わらず、ライブチャットはローコスト・ハイリターンだという考えが人々を業界へ駆り立てている。
だが、こうした考えはベテラン風俗嬢を侮辱するだけでなく、真実からも程遠い、とHeidiは言う。「超重労働だってみんな気づき始めたところじゃないかしら」と彼女。「自分で売り込みして、宣伝して、映像を作って、スケジュールを設定する。多分みんなこう思ってたんじゃない? 『WEBカメラの前で一人エッチするだけでいいんでしょ』って」

Heidiいわく、似たような新規参入は2008年の金融危機の際にも見られたそうだ。だが危機が一段落した後もそのまま業界に残った人はほとんどいなかった。今回も経済が立て直されれば、似たようなことがまた起きるだろうと彼女は見ている。「みんなあっという間にいなくなるのよ。思ったほど稼げなくてね」

バフィー自身も、これを身をもって体験した。StreammateとCamSodaというサイトで数週間頑張ってみたが、どちらのサイトでも稼ぐことができず、個人的に顧客を獲得するのも苦労した。一度、顧客になってくれそうなユーザーがコーチを申し出て、彼女に様々な衣装を着用させた。乳房が丸見えの衣装を要求されたので彼女が抵抗すると、男は一銭も払わずに姿を消した。一番大変なのは、自分と同じ境遇のパフォーマーがわんさといる中で、顧客候補者の関心を引くことだと彼女は言う。


「ここまで私はあまり運がなかったみたい。でもだからといって諦めるわけじゃありません」と彼女は言う。「外に出られるようになるまであと6カ月かかるなら、多分これを続けるでしょうね。マッサージのほうがずっと楽でした。それにずっと楽しかった」

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