ニューヨークにある有名なパンク・ロック系のセレクトショップ「トラッシュ&ボードビル」の店長兼バイヤーだったジミー・ウェッブ。
ウェッブ自身はミュージシャンではないものの、ショップの顧客だったイギー・ポップ、ガンズ・アンド・ローゼスのダフ・マッケイガン、ジョーン・ジェット、ブロンディのデボラ・ハリーとクリス・スタインなどのロック界の人気者と親交を深め、彼らに頼りにされていた。ウェッブの死が公表されると、きらびやかな人生を送ったウェッブに対して、錚々たるミュージシャンが次から次へと哀悼の意を表した。
デボラ・ハリーは、ローリングストーン誌に「みんな、素敵な友人ジミー・ウェッブを恋しがるでしょう。ニューヨークのユニークで愛おしいキャラクターが一人いなくなってしまったわ。彼と知り合えた私はラッキーね」と、コメントを寄せてくれた。
「ジミー・ウェッブは最高の友だちだった」で始まる文章を投稿したのはセバスチャン・バック。彼の投稿は「1987年から2011年まで履いたキューバンヒールのブーツは全部トラッシュ&ボードビルでジミーから買ったものだ。ブラザー、安らかに眠ってくれ。あんたがいなくなって寂しいよ。あんたは本物のロックンロールの時代を生きた男だった」と続いた。
「胸が裂けそうなほど悲しい。ジミー、あなたはニューヨークの宝だ。いつだって元気を振りまいて、大声で話しながら生きていた」と、グリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロングが投稿すると、マッケイガンがそれに付け足すように「最高に優しい男で、純粋過ぎるほどのパンクロックな男。ジミーは逸話だらけで、俺も家族も彼の大成功物語の末席に参加させてもらえて光栄だし、嬉しい。俺たちはあんたが大好きだ、ジミー。これから寂しくなるよ、ブラザー」と投稿した。
・グリーン・デイのビリー・ジョーとビリー・アイリッシュが対談
ウェッブがトラッシュ&ボードビルで働き始めたのは1999年で、すぐさまショップのトップ店員になり、店長兼バイヤーへと昇格した。完璧にフットするスキンタイトのジーンズと本物のオリジナルスタイルを見抜く目を持った彼は、パンクロッカーとポップスターの服装を近づけた立役者で、ラモーンズからビヨンセ、ジャスティン・ビーバーまで、あらゆる人気者のスタイリングを手掛けた。ウェッブ発案のスタイルはローリングストーン誌、MTV、ヴォーグ誌でも特集を組まれたほどだ。
「彼は唯一無二でした。有名でも、リッチでも、ロックスターでもなかったし、普通の人だったのですが、実は就業時間中は全身全霊で仕事をしていました。自分がスタイリングした相手が最高にカッコよく見えることの喜びや嬉しさが彼の生きがいだったのです。
ロックンロール界のファッショニスタとして活躍する以前のウェッブは、薬物中毒に苦しみ、ホームレスだったこともある。ニューヨーク州ワイナントスキル育ちで、高校卒業後にコネチカットのコミュニティ・カレッジに進学して短期間過ごした。ニューヨーカー誌に彼が語ったところによると、ニューヨークに引っ越してきたとき、「ゲイバーでカクテルを運ぶ」仕事を得たが、「その先の自分の姿が見えたし、それ以上のものになりたかった。踊って暮らしたかったから、家出少年たちとストリートに出た。恐れは一切なかった」らしい。
自称「家出少年」のウェッブはダンスが大好きだった。子供の頃にダンスレッスンを受けていたこともあり、スタジオ54などのクラブに頻繁に通っていた。
トラッシュ&ボードビルに勤務する間に、彼の大胆で斬新なスタイリングとキャラクターがショップの常連や近隣の人々の知るところになる。そして、彼はヴォーグ誌が呼ぶところの「セント・マークス・プレイスの絶対的な町長」もしくは「パンクロック界の非公式ショップキーパー」となった。2017年、彼は自分のブティックI NEED MOREを開き、ここで死が訪れるまで仕事を続けた。
「洋服は全体の見え方が肝心だ」と、2007年にニューヨーカー誌でウェッブが語っている。「一つだけ目立ってしまうと、美しいコートが通りを歩いているとか、クールなパンツが地下鉄に乗っているとしか見えない。それぞれのアイテムのテイストが多少異なっていても、すべてが混じり合えばいい。とはいえ、ボゾラインは超えちゃダメだ(訳註:ボゾとはゆかいなピエロのボゾのこと)。ボゾラインは俺が作った新語だ。絶対にボゾラインを超えちゃダメなんだよ。今の俺はボゾっぽい服装だけど、ボゾと違って完璧におしゃれだ。
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Our friend, Jimmy Webb, a legend and a St. Marks St. legend, stylist of the punks, famous and not, has passed. Im so very sad and well all miss your energetic, warm soul. The city will not be the same without you. pic.twitter.com/RI06gv8f0C— Joan Jett (@joanjett) April 15, 2020
The death of Jimmy Webb will be breaking many hearts today. He was a beautiful man of rare soul and grace with a huge heart. Unforgettable Character. Sweet Temperament. We will all remember!!xxxxx pic.twitter.com/40YyuTZJcX— Mick Rock (@TheRealMickRock) April 14, 2020