自分たちのオリジナリティをストイックに追求し続けるドミコが、タワーレコードおよびFLAKE RECORDSにて新作ミニアルバム『VOO DOO?』を限定リリースした。

独特の緩急のある曲調と唯一無二のサウンドは健在だが、これまでのメジャー作品には無かった新しい一面も垣間見える作品となっている。
今作のリリースに際して、作詞作曲を担当するさかしたひかる(Vo, Gt)にインタビューを決行した。

―今作は元々あったドミコの良い意味での気だるさとキメの緩急は残しつつ、新しい一面も出そうとしているのかなと感じました。タイトル『VOO DOO?』の由来はなんでしょう?

さかした:パッと思いついたので由来もあまりないですね。全部曲が出来上がった後にタイトルを決めたんですけど、大体アルバムのイメージを想像して……。なんだろう、魔術的なというか、ちょっとスルメっぽいアルバムになって欲しかったので、そういう癖になりそうなっていうスラングも込めてつけました。

―今作のコンセプトはありますか?

さかした:ないですね。毎回アルバムを作る時に、設計図を構想しても途中で気が変わっちゃうので、あまり考えないように勢いで作っていて。その中でちょっと方向性が見えたらそれに沿う感じです。その場の思いつきが多いですね。実際のレコーディングに入ってからもこの曲はやっぱ違うなとか、もうちょっとこういう曲あったほうがいいなって思うこともあって。そういう思いつきのためにレコーディング期間を分けてあったりします。行き当たりばったりでやりたいんで。


―今作も、最初のデモや収録曲順と変わっているんですか?

さかした:そうですね。録っても使わないものもあったし。最終的には、自分で構想しているよりも上のものがいっぱい閃いて来ちゃうんで。じゃあそっちの方がいいだろって感じでどんどん変えました。長谷川(Dr)と合わせてみて違うこともあるし、曲の音作りもフレーズもアレンジもメロディも曲の展開も、曲自体のチョイスも、最後までどうなるか分からない感じでした。

・ギター&ヴォーカルとドラムが炸裂するツーピースバンド、ドミコのMV

―収録曲でいうと、1曲目にインストの「おばけ」があります。インスト曲ってドミコでも最近なかったですよね。

さかした:昔の自主制作アルバムでは全14曲中インストが3曲あって、1曲目がインストだったりもしたんですけど、その時以来ですね。デビューしてからの3作は結構がっちり歌が入ってギターソロすらもないくらいで、余裕も無かったなと思っていて。そんな詰め詰めなアルバムだったんで、今回は曲数は少ないけどより余裕も持たせていて。これは意図したってよりも、だんだん趣向がそういった感じに戻ってきたというか、そういう時期だったというか。シンプルにそんな感じですね。


”抜き”を作っておきたい

―空間系のエフェクターメインで結構音作りがこだわっていて、「おばけ」から世界観がガツンと出ている感じがしました。何か作りたい世界観があったんでしょうか?

さかした:こういう曲をアルバムの頭に置いたのは、今までのイメージとは違うかなと思ったからです。アルバムの中で最初にできたのがこの「おばけ」と「化けよ」2曲かな。結構エフェクティブなパターンは好きですけど、曲全面に表れているのは珍しいですね。ライブだとかなりアレンジを変えて、エフェクトを多用したアレンジはかなり多いです。「化けよ」が先行で出たときは、今までのガレージっぽい曲を知ってる人たちがいつもと違うと感じるかなぐらいにしか思ってなかったです。「化けよ」みたいな曲も聴いていれば段々受け入れられると思うんで。いつもと違う感じでやってやろっていう感じもなく、面白いからこれやってみようくらいの気持ちです。

―7曲目の「地動説」も、これまでには無かったマイルドな丸いサウンドですよね。

さかした:これは狙っていて。ブロッサム・ディアリーの柔らかい感じをイメージして作ってみました。

―「地動説」みたいな曲を作ろうと思ったのは、やってみようと思ったのか、それこそ行き当たりばったりみたいな感じなんでしょうか?

さかした:うーん、両方ですね。
アルバム全体として”抜き”を作っておきたいなっていうのはあったんです。元々この曲は自分でストックしていた、フワーッとしてそんな力まない曲で。アルバム全体見た時に、結構力んだ作品だなと思ったので、一応これを入れてみたっていう感じですね。

―「さなぎのそと」は、以前の『soo coo?』に収録されていた「さなぎのなか」を連想しちゃうんですけど、自分でリンクする世界観とかは意識していたりされます?

さかした:いや、してないですね。曲名はレコーディングが終わって最後につけるんですけど、なんとなく歌詞も「羽ばたいて」とか書いているし、まぁ「さなぎのそと」でいいかなーくらいで(笑)。全然そんな深く意味を込めないんですよね。

―曲の歌詞もタイトルも、さかしたさんの独特な言葉選びのセンスがあると思うんですけど、そこは特別意識がありますか?

さかした:例えば普通の言い回しを使うにあたって、引っかかる単語と引っかからない単語はあると思うんですよね。メロディを歌ったときの気持ちいい流れとかを意識しつつ、日本語として引っかかるものってどれだろうって選んでいます。

―基本的に曲を作る時って、曲と歌詞どっちが先なんですか?

さかした:詞は最後です。基本オケを作って、メロディができて、アレンジもできたら最後に歌うとき、この曲の雰囲気だとこんな感じかなって嵌めて歌詞を付けます。僕はまるっきり歌と詞を分断して作っているんです。基本的に、歌詞に自分の意思も投影させないんですよ。
こう歌っているからこういう思想なんだろうなっていうのが、必ずしも当てはまらない場合が多い。どちらかというと、一つの箇所を聴いてどんな人にも当てはまって、それぞれが都合よく捉えられる歌詞を目指して書いています。だから「化けよ」とかも、化けようって自分一人で言っているのか、第三者に言っているのか、どちらでも聴けるように敢えてそうしているんです。だからあまり断定はしないんです。

―自分たちがかっこいいと思っている曲に言葉を当てはめる中で、社会に対するメッセージは込めないんですか?

さかした:ないですね、まったく面白みのないバンドですよ(笑)。特にメッセージ性もないし、本当に自分がやりたいことやっているだけ。一個の作品を作って終わり!って感じですね。その後は知らないし、作ったこともあまり覚えていない。そこから先の話はもうみんな好きに想像する方が面白くなる気がするので。

入り乱れて一見ルーツが分からないっていうところが一つの芯としてある

―さかしたさんと長谷川さんで曲作るにあたって、音楽性やバンドの方向性で一致していることって多いんですか?

さかした:二人とも特に無いんですよね。強いて言うなら自分らのオリジナル感がある曲を作りたい。オリジナリティなかったら、やる意味ないですからね。
ルーツが分からなそうなのが面白いと二人とも思っているので。こういうのやりたいよね、ああいうのやりたいよねっていう想像の範疇で出てくるものって、何かに似ているもののことが多いじゃないですか。デモとかストックする上で良くないなって思うものは、大体何かに似ていたり、聴いていた曲の影響が分かるんですよ。逆に、ルーツが分からないけどカッコいいものは割と曲に残していって。そうやって曲を作っているので、引用は今までしなかったんですよね。アルバムを出していくにつれて、ドミコらしさが確立できたので、そこのタイミングで引用してみたら面白いなと思って、今回初めて引用をやってみたんですよね、「さなぎのそと」はテレヴィジョンのフレーズを丸々弾いているんですよ(笑)。丸々引用しているけど雰囲気をガラッと変えているから、結構違う側面を見せられたりできて面白いです。

―そういう遊び心がプラスでできる余裕ができた作品なんですね。自分たちのオリジナリティを大事にしているということですが、他の音楽に激しく影響を受けることはないんですか?

さかした:影響を受けることは受けるんですけど、直接的なエッセンスより、噛み砕いて、出てくるときには分からないものにしておきたいなと思うんです。ジャンルや時代に沿った音楽は、コンセプトがしっかりして分かりやすいしかっこいいと思うんですけど、ドミコの場合は入り乱れて一見ルーツが分からないっていうところが一つの芯としてある。引用したとしても、そこがぐちゃぐちゃでわからないっていう感じがドミコっぽいなって。

―最近、曲を作る上で何かインプットしているものはありますか?

さかした:音楽で考えたら曲を聴くぐらいしかないですね。
カルチャーとかも疎いし、時代、歴史とかもあんまり……。なんかいいなーってくらい。音楽以外があまりなくて、映画も集中力がないのであまり見ないですね、『スター・ウォーズ』が好きなくらい。漫画もアニメも見ないし、小説も大学の授業以来読んでない。結構音楽のみになっていますね。音楽もYouTubeでライブを見たり、サブスクで聴いたり。でも最近音楽をチェックしている中で共感を抱くアーティストって僕はあまりいないですね。基本的に自分の好きな音楽を掘っているので、リアルタイムの音楽はあまり聴いたりはしないです。

―すごく好きになったバンドがいたらそれを繰り返して聴くと。

さかした:いつの時代なのか、どのアーティストだったりかも分からないようなライブを見たりするので、このバンドがめっちゃ好きってそんなにないですね。ディアハンターとかテン・イヤーズ・アフター、バトルスも聴いたりしますけど、すごく共感して影響されてという感じではないかな。あ、ニールヤングとかペイブメントは長谷川が好きですね。1個大きなものを挙げられないのは、自分たちの曲に現れていないパターンが多いからで。

―でもそういう要素が複雑に入り乱れた結果、オリジナリティに繋がっていくんですね。逆にドミコとして音楽をやっていく中で、一貫して繋がってやり続けてきた部分はありますか?

さかした:なんだろう……。なんかあるかな……。あると思うんすけど、分かんないですね。聴いている人の方が分かりそう。オリジナリティの追求も、ドミコらしさみたいなものも結構曲が溜まってきたら、自分たちは感覚で分かるんで。らしさってなんだって考えながら曲を作るフェイズもだいぶ前に終わったんですよね。……なんだろう、いいなって思ったものをドンドン残そう、それならアルバムも作ろうみたいな感覚で。ほんともう農作業と変わんない(笑)。第一産業と変わらないような感覚で作って、気に入ったから世に残すっていうサイクルなので。あの人の気持ちを救いたいとか、そういう感情がないから。良くも悪くもそこに無関心な感じが一貫しているかもしれないですね(笑)。

―ドミコの曲はライブでオーディエンスが盛り上がっているのが見えると思いますが、ステージからはどう見ているんですか? ステージの2人との温度感のギャップとか感じたりするんすか?

さかした:特に見ていないですね。演奏中は足元をいじったり忙しいし、バーっと見て楽しそうだなとかそれくらい。もちろん迷惑行為とか見たら、銃で撃つかもしんないですけど(笑)。でも同じところで合図して声出すとか、自分もやったことないので、そういう発想はないですね。ライブは何をやっていてもいいと思うし、酒を買いに行ってもいいだろうし、別に予習とかも必要ないと思うし。ほんと自由にしてほしいなってずっと思っているので。最近はそういう人が多くなって、すげー自由な空間になりつつあっていいなと思うし。いろんなパターンの人がいて面白い。

―最近はコロナウイルスの影響で、ライブハウスのイベントが中止になったり自粛しろっていう雰囲気もありますよね。ライブという場がなくなることでエネルギーが溜まっていますか?

さかした:ないですね、ライブを別に自分の発散って思ったことがないんで。ミュージシャンにとっては春休みみたいな感覚です。こんなにライブが無いのいつぶりだろう?ってぐらい。もちろん生活していくために絶対必要なんで、危機感もある人はいっぱいいるだろうけど。最近ウイルスが蔓延しているっていう危機感は頭にはありますけど、同時に非現実的な感じがするんですよね。別にライブがやれないことに対してはそんなにストレスもないですね。状況的には普通やなっていう(笑)。作曲もライブも両方大事ですけどね。この状況的には何もしないほうがいいんじゃないかと思うんですけどね。

―では、今さかしたさんを突き動かすモチベーションはどんなところなんでしょう? これまで曲に込めるメッセージもないし、ただ農作物を育てるように曲もちゃんと作っていきたいっておっしゃっていましたけど。

さかした:モチベーション的にもそこが一番なんですよね。自分でフレーズができた瞬間とか、これは曲になりそうだなっていうメロディができたとき、いち早くボイスメモに残したい、早く自分のものにしたいっていう欲求が生まれるんですよね。写真を撮ってアルバムにするみたいな感覚に近いのかもしれない。とにかく残したい。形のないものだから、留めておかないと無くなるんじゃないかみたいな気持ちがあって。とりあえず自分でいいなと思ったものを残したい、この一心ですね。

<INFORMATION>

ドミコが愛でる「農作物のような楽曲たち」とフリーダム

Mini Album『VOO DOO?』
ドミコ
発売中
タワーレコード & FLAKE RECORDS 専売商品

収録楽曲
01 おばけ
02 化けよ
03 びりびりしびれる
04 噛むほど苦い
05 問題発生です
06 さなぎのそと
07 地動説

タワーレコード
https://tower.jp/item/5017183/VOO-DOO-

FLAKE RECORDS
http://www.flakerecords.com/rcminfo.php?CODE=32710

ドミコ(domico) / びりびりしびれる(BIRIBIRISHIBIRERU) (Official Video)
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