元でんぱ組.incのメンバーである最上もがさんが、うつ病であることを告白しました。徐々に日本でも、アーティストや芸能人たちがメンタルに関することを語るようになってきています。また、メンタルに関することだけでなく、政治に関わる話題にも、検察庁法改正案に反対の意を表明するアーティストや芸能人が多数現れるなど、これまで日本社会ではタブーとされていたことに変化の兆しが見えはじめています。
しかし、何かが変わろうとしている過渡期には、様々な誤解や偏見、単なる知識不足などから、軋轢や分断を生じてしまうことも多々あります。最上もがさんは「うつ病ってすごい理解されにくくて、傷が見えるわけじゃないし、入院するまででも僕はないから伝わらない。甘えてると思われるし、『あの時はできてたじゃん』っていうことができなくなって、笑えなくなっちゃって、人前に出るのもすごいしんどい時もあった」と語っています。この連載でも過去にうつ病や双極性障害について取り上げてきましたが、大事なことですので、再度この病に苦しんでいる人と接する際に知っておいて欲しいことを書いておきます。
まず、うつ状態のときには体を動かすことも非常につらく、それは「そのくらい誰にでもあることだ」というレベルではないのです。ですので「怠け者」「甘えるな」と非難してはいけません。また、やたらと「頑張れ」「元気を出せ」と励ますこともよくありません。そして、これは落ち込んでいる友人等に対してはよくやることかもしれませんが、うつの人を「気晴らしに誘う」ことも避けた方が良いでしょう。家族や友人から気晴らしに誘われると、断っては悪いと考えたり、「せっかく誘ってくれているのだから楽しまなければ」と義務的に考えたりして、結果的に疲れ切ってしまい、状態が悪化してしまうことがあります。
2017年にデビューし、2019年には全米ロック・チャートで4曲がトップ10入りし、「BBCサウンド・オブ2020」の3位にランクされるなど、期待を集めているアーティスト、ヤングブラッド(YUNGBLUD)。その音楽性は非常に個性的かつ多様で、ジェンダー・フリュイド(流動的なジェンダー)なそのルックスや発言も注目されています。
そんな彼は政治的な問題に対しても積極的に発信していて、若者の貧困、銃規制、女性への暴力などがテーマの曲もあります。そして、メンタルヘルスに関することも、その活動の中で重要なテーマになっています。「Kill Somebody」では、うつについて歌い、「original me」では自分が抱く劣等感と向き合い、弱い自分も自分との一部として受け入れる、自己肯定について歌っています。
そんな彼の、昨今の社会状況について歌った新曲「Weird!」の歌詞には次のような一節があります。「頭が変にならないようにしよう きっと大丈夫だから 今がおかしな時代ってだけ」。これまでにもこの連載で書いてきましたが、徒らに自分のせいだと自虐的に受けとめてしまったり、環境や社会に過剰に適応しようとしてしまったりするのではなく、社会や時代の方がおかしいのではないか、と疑ってみることはとても大事なことです。そして日本でも、政治やメンタルに関することがよりオープンに語られるようになっていくことを期待します。
【参照】
最上もが、うつ病を告白 でんぱ組脱退理由語り涙
日刊スポーツ新聞社 2020/05/15 09:13
http://a.msn.com/07/ja-jp/BB146mPz?ocid=se
ヤングブラッド、ルックスも音楽性もジェンダーも全ての壁を破壊し続ける異色アーティストの魅力
udiscovermusic.jp 2020。
https://www.udiscovermusic.jp/columns/who-is-yungblud
「Weird!」の歌詞・対訳を公開!
UNIVERSAL MUSIC JAPAN 2020.04.29
https://www.universal-music.co.jp/yungblud/news/2020-04-29/
<書籍情報>
手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』
発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029
本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。
手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。
Official HP
https://teshimamasahiko.com/
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