アトランタ出身のラッパー、ガンナ(Gunna)が大ヒット中の最新アルバム『WUNNA』について、パンデミックにどう対処しているか、行く場所もないのにがっちり身なりを整える理由を語る。

ガンナは、次のアルバム『WUNNA』でリスナーにワンナのことを紹介するつもりでいる。
ワンナは発音しやすいとは言い難いフレーズ(”Wealthy Unapologetic Ni*gga Naturally Authentic  金持ちの悪びれもしないニガー、生まれながらのホンモノ”)の頭辞語であると同時に、彼の星座に基づいたオルター・エゴでもある。アルバムのカバーでは、このガンナの新たな分身はピクサー映画にでも出てきそうな宇宙人の格好をし、ブロンドのドレッドロックスをなびかせ、とろんとした眼差しをしたまま、占星術のチャートのなかに吊り下げられている。そんなワンナが見る者を見つめ返す様子は、心がざわつくようでも、滑稽でもある。私たちの知らない何かを知る、キマってしまった一コママンガのようだ。

5月22日にリリースされた『WUNNA』にはヤング・サグやリル・ベイビー、トラヴィス・スコット、ロディ・リッチも参加

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二つ名というのはラップにおいてさして珍しいものではない。エミネムにはスリム・シェイディがいるし、T.I.にはティップがいる。フューチャーがつくりだした人格の数々があればウータン[・クラン]くらいの大きさのグループを始められるだろう。電話越しに聞くかぎり、ワンナとガンナの違いは、ガンナのほうがリラックスする余裕があるというところのようだ。アトランタのどこかでガンナは自己隔離生活を送っていて、世界のほかの場所と変わるところはない。スタイル上の先駆者であるヤング・サグの影から抜け出すのに数年を費やしたのち、彼は自分の実力だけをたのみに絶えずツアーに明け暮れるアーティストへ成長し、独力でストリーミングをまわすまでになった。フェスのラインナップやクラブイベントに刺激が欲しい? なら呼ぶべき奴はわかってるはず。ラップアルバムに客演が要るなら、ガンナはいつだって頼りになる奴だ(もし駄目だったら彼の教え子も頼りになるだろう[訳注:リル・ベイビーのこと])。
2020年だけでも、ガンナはリル・ウージー・ヴァート、ミーガン・ジー・スタリオン、ナヴ、カミラ・カベロの作品に参加。モヤモヤした気だるいデリバリーで彼らをアシストした。

ガンナがニューアルバムに――更に言うと、彼のファンたちに――なににもまして望むのは、シンプルにこんなことだ。「しばらくここにいるつもりだ、ってみんながわかってくれたらいい」。「だから俺に慣れておいてくれ」。

ーこのパンデミックのあいだどう過ごしてました?

ガンナ:かえって家でいろいろまとめる機会になったよ。だからほんとに有意義な時間を過ごせた、この時間を有意義なものにできたね。

ーアトランタはどうですか? いつもどおりに戻りつつありますか? ショッピングモールは開いてるって聞きましたよ。

ガンナ:深刻な状況だと思ってる。とてつもなく深刻。だから外出はしてない。モールになんか行きやしないよ。
俺はまだ隔離期間中だ。見た目ほど安全じゃないのはわかってる。いつもどおりに戻るなんてまだ思えないよ、そう訊かれてもね。

ー隔離期間中に見て一番よかったものは?

Netflixを見てた。見たのは 『オザークへようこそ』と『ブラックリスト』。腰を下ろしてきちんと映画を見る機会なんてほんとになかったんだ。久しぶりだった。それだけでも楽しかったな。

ーあなたの好きな気晴らしに、ショッピングがあると思います。今やニーマン・マーカス[訳注:アメリカの百貨店チェーン]が経営破綻して、店も閉まっている。どういうふうに買い物をしてます? どこで買い物を?

ガンナ:正直、行く場所がないから買い物もしてない。しょっちゅうクローゼットに入っていっては新しいものを手に取るんだけど、着ていく場所もない。
ほんとに、モールまで行くのはなにか用事があるときだけ。用事がないときは買い物をしすぎないようにしてる。だからこの機会に、これまで買ってきたもののなかから、着る機会がぜんぜんなかった新しい服をおろしたんだ。だから新しい服をまだ着れてるってわけ。

この投稿をInstagramで見る❕WUNNA❕(@gunna)がシェアした投稿 - 2020年 5月月2日午後12時22分PDT
ーInstagramを見て気づいたんですけど、いまもあなたは毎日バッチリ決めた服装をしてますよね。フルワードローブで着飾っている。全世界が同じような服を着ていて、家の中でパジャマを着ているいま、なんで服を着るのがそれほど大事なんでしょう。

ガンナ:だってそれが俺だから。子供の頃から1日に2、3回は着替えてたよ。理由はわからない。母さんに聞いてくれ。ずっとそうしてきたんだ。
だからいまもそうしてる。君が俺に会いに来るときには、わかるだろ、俺はこういう服を着る。それが俺の人生のやり方なんだ。服が大好き。かっこよく見えるのも好き。俺が毎朝起きては着替える理由はそれにつきると思う。

ーツアーやクラブへの出演がなくなって、仕事に影響ありましたか?

ガンナ:とても。ツアーが仕事のアーティストだから。出演予定はほんとにぎっちり。ショウも控えてたんだ。そこが俺にとっての変化だね。チルしてるよ。
2年は家に帰ってなかったから。こんなに長く休んでるなんて。君らの仕事に対してなんの気持ちがあるわけでもないけど、俺だってスタッフに給料を払わないといけないボスだ。みんなこの状況を切り抜けようとしてる。

ー客演を増やしているのはその影響を埋め合わせるためですか?

ガンナ:ほんとにたくさんの客演をやったね、まだ精算中だよ。だから、結局のところ、まだ支払い待ちの客演がある。この状況が終わるまでのあいだにも、支払いのある客演がいくつかあるはずだ。つまり、いまのところ客演で生計をたててるってことだね。

ーニューアルバムの制作を開始したのはいつですか?

ガンナ:去年の終わりだったはずだ。ジャマイカに飛んで、3週間くらいレコーディングをした。そこで『WUNNA』というタイトルを思いついて、アルバムに収録されてる曲の大半をつくったんだ。

ージャマイカはどうでした?

ガンナ:楽しかった。
ヴァイブがあった。あそこには友人がいてね。ガールフレンドも数人いた。楽しく過ごしたよ。ライヴやらなにやらについて心配するなんてこともなかったし。自分と家族のために休みをとったのもそのときだ。

ージャマイカへの旅がアルバムのタイトルに与えた影響は?

ガンナ:すごくリラックスして楽しく過ごしていたから、いつもと違う自分でいるようだった。『WUNNA』というタイトルを思いついたのは、俺が双子座だから。双子座は二面性があるってよく言うだろ? まるで二人目の自分みたいな気分だったんだよ。この二人目の名前はたまたま思いついた。

ーパンデミック前、ジャマイカに行くよりも前の生活はどのくらい忙しかったですか? コンスタントにツアーに出て、レコーディングしてたと思うんですけど。

ガンナ:ほんとにめちゃくちゃ働いていた。集中していたよ。一番取り組んでいたのはライブだったんだけどね。自分がどうしたいかが定まってなかったんだ。ただ曲だけがあった。俺は町にいようがいまいがいつもスタジオに入ってる。だから曲はあったわけ。どうやってその曲を発表したいか、本当にわからなかったんだ。出したいタイトルがたくさんあったものだから。たとえば『Drip Season 4』。これはいま作ってる最中だ。『Drip or Drown 3』については、リリースしたいかどうか、制作に集中するのがいいか、別のことにとりかかるのがいいか、自分でもわからなかった。最終的には別のことをやることにしたんだ。それが俺の選択だった。

ー「Skybox」をリード曲にしようと思ったきっかけは?

ガンナ:あの曲が気に入ってた。ジャマイカで制作した曲だ。俺のDJ[訳注:「Skybox」のプロデューサーはTaurus]があのビートをたまたまつくってくれて、いまやそいつは俺のスーパープロデューサーのひとりだ。いまは引き篭もって俺のためにビートをつくってくれているよ。あれは俺たちにとって特別な時間だった。ああいう曲をリリースしたかったし、彼のお披露目になればと思ったんだ。みんなが彼のサウンドと、俺たちが一緒になったサウンドに慣れてくれるようにね。

ーアルバムの制作で一番大変だったことは?

ガンナ:制作で一番難しかったのはアルバムをリリースすることだった。リリースに一番いいタイミングを探して、すべての線がひとつによりあわさっていることを確かめる。これはアーティストとしてやらないといけない大事なことのひとつだ。タイミングを見計らい、全部の戦略を練るんだ。

ー「Dollaz On My Mind」は傑出した曲のひとつですが、この曲はヤング・サグをフィーチャーしています。いまふたりにとってこの曲がぴったりだった理由はどのあたりでしょう。

ガンナ:彼がやる曲ならなんだって俺は合わせられるし、彼も俺のやるどんな曲にも合わせられる。お互いによくつるんでいて仲がいいから、一緒に曲をやることもできるんだ。でも、もし彼がビートをプレイしても、俺が同じ曲で思いつくだろうフロウと同じフロウを使うことはないだろうね。それでも俺たちは協力して、あの曲をヒットさせることだってできる。

ー昨年、あなたと[リル・]ベイビー、フューチャー、そしてヤング・サグが『Super Slimey 2』をリリースするかもしれない、という話がありました。まだ可能性はありますか?

ガンナ:もちろん。

ー全部がいつもどおりに戻り始めたときにはなにをするか、計画を教えて下さい。

ガンナ:ああ、ツアーをするよ。海外に行って、戻ってきたらアメリカをまわる。そのときにはもうひとつアルバムを出していたいね。それがいまのところの計画だ。
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