フェスティバル側は3月にパンデミックが全米を直撃した際すみやかにイベント延期を発表したが、購入者はチケットの払い戻しを拒否されたと原告側は訴えている。
フロリダ州南地区連邦地方裁判所に提起された訴状によると、ウルトラ・ミュージック・フェスティバルの払い戻しポリシーが不当かつ不公正であり、「原告団に2020年のフェスティバルのチケット代金の損害を与えた」と主張。原告団に対する損害賠償金の支払いおよび、またはチケット購入者に対するチケットの全額払い戻しを求めている。
訴えによると、3月6日にマイアミ市が2020年のウルトラ・ミュージック・フェスティバル開催中止を発表した後、フェスティバル主催者はチケット購入者にメールを送信し、購入済みチケットは2021年または2022年のフェスティバルで有効だと通知した。主催者からは特別オファーやチケットパッケージ、グッズのディスカウント販売が提案されたが、払い戻しに関する言及は一切なかった。訴状によれば、当初チケット購入者にはチケットの振替希望日を選ぶために30日の猶予を与えられたが、購入者が乗り気でなかったため、主催者は再三にわたり期日を先送りした、と訴えている。
ウルトラ・ミュージック・フェスティバルは、新型コロナウイルスのパンデミックが全米を襲った際、真っ先に延期が発表された主要な音楽イベントの一つで、サウス・バイ・サウスウェストやコーチェラなどのメジャーフェスティバルもこれに続いた。ウルトラの中止発表以降ライブ音楽業界の大部分が休業状態で、アーティストも自宅からのライブストリーミングに活動の場を移している。
ウルトラ・ミュージック・フェスティバル利用規約の払い戻しポリシーによると、主催者はチケットの全額または一部払い戻し、または払い戻し不可の決定を下す権利を有しており、政府行為など主催者の効力が及ばない理由でイベントが中止になった場合、独自の裁量により「チケット購入者に対する全額または一部払い戻し」、イベントの開催日程延期および、またはチケット購入者への同等の「補償」提供を行なうことができる、と規定されている。
だが原告側は、こうした条項を「施行不可能な、一方的なオプション契約」だとしている。ウルトラ・ミュージック・フェスティバルの利用規約には、主催者がイベントを延期した場合、チケット購入者は払い戻しの権利を失うとも定められている。主催者は1年のブランクを延期とみなしているが、原告はこうした措置は事実上のキャンセルだと主張している。
また、利用規約の中の「事前の通知なく、利用規約の一部を変更、追加、削除、補足、修正、改訂、または改編する」という一節は、条項に対する制限が一切盛り込まれていないため、「誤解を招き、完全に無効」だと訴えている。
「危機の負担をチケット購入者に転嫁する権利はウルトラ・ミュージック・フェスティバルにはないと思う」
訴状には2名の原告の氏名が記載されている。マイアミ在住のサミュエル・ヘルナンデス氏は3000ドルでチケット6枚を購入したが、訴状によると、同氏が払い戻しについて問い合わせたところ、メールの指示に従うよう言われた。3月20日に2枚のチケットの振替を申し込んだが、残る4枚に関しては手続きしていない。ワシントン州グレイランドのリチャード・モントゥーア氏も現金での払い戻しについて問い合わせたが、本人は主催側からの返答は一切なかったと主張している。彼は後日、振替申込の期日が4月9日に迫っていることを告げるメールを受け取った。チケットを無駄にしたくないあまり、4月7日に申込を行なったが、その後期日延長を告げるメールが届いたと訴えている。訴状によれば、いずれの原告も払い戻し金は受け取っていない。
「COVID-19が世界経済の隅々にまで影響を及ぼしたことは我々も理解しています。ですが、今回の危機の負担をチケット購入者に転嫁する権利はウルトラ・ミュージック・フェスティバルにはないと思います。購入者の中には、フェスティバルに参加するために数百ドル支払った人もいますが、COVID-19のパンデミックのせいでその権利を行使することができなくなった、あるいはこの先できなくなる人も出てくるでしょう」。今回の訴訟で原告側の弁護を担当するソーダー・シェルコフ法律事務所のジョー・ソーダー氏は、ローリングストーン誌に宛てた声明の中でこう述べた。「我々は依頼人および原告構成員への現金払い戻しを求める所存です」
コメント取材の依頼に対し、ウルトラ・ミュージック・フェスティバル主催者からの返答は得られなかった。
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