PassCodeメンバー個別インタビューのラストを飾るのは高嶋楓だ。

高嶋自身、「体力はある方だと思う」「安定感を出していきたい」と語っているように、派手さはないものの、彼女の存在もまたPassCodeのステージを支える上で絶対に欠かせないピースのひとつとなっている。
彼女が持つふんわりとした独特な空気感に多くのファンが虜になっていく一方、柔らかな笑顔の裏で彼女もまた自身のさらなるレベルアップのために努力を重ねている。

インタビューの最後、彼女は普段あまり表に出すことのない力強さを我々に示してくれた。大阪・堺にあるちっぽけな事務所から始まった4人のストーリーは、これからさらに光を帯びていくのだ。

【動画】チャート首位を獲得したPassCode「STARRY SKY」ミュージックビデオ

―この自粛期間はどんなふうに過ごしてますか。

家でできることを始めようと思って。最初の頃はドラマを観たりゲームをするだけだったんですけど、最近はPassCode以外の人の曲で踊ってみようと思って練習したり、あとはベースを始めてみたり(笑)。

―ベースを始めたのはなぜ?

一昨年のツアーで、MCをつなぐためにバンドをしようってことになって高嶋がたまたまベースをやることになったんですけど、そこで「ベース、ちょっとカッコいいかも」って思うようになって、それまではベースをちゃんと聴くことがなかったんですけど、それをきっかけに重要視するようになって、このタイミングでノリで始めてみました。

―じゃあ、ベースを買ったんですか。

買いました(笑)。めちゃくちゃ安い初心者セットみたいなのを買って、ちょっと練習できたらいいかなぐらいの感じで。

―実際に練習してみてどうですか。

私、リズムが苦手で、ベースはリズムが大事だから大変な楽器だなって思いました。


―ベースの聴き方って変わりました?

そうですね、今まではベースを中心に聴くことはなかったんですけど、自分で弾くようになってからは「あ、こういう感じで弾いてはったんや」って新しい発見があります。PassCodeの曲は全然弾けないですけど。

―でも、うまく弾けないとしてもベースの聴き方が変わるだけでパフォーマンスにもいい影響が出そうですね。

なんで今までベースをちゃんと聴いてこうへんかったんやろって後悔してます。カッコいいですよね。

―なんだか有意義に過ごしてますね。

そうなんですかね。「もっと何かやらなきゃ!」って感じでいろいろ始めたから、最初は全然有意義に過ごせてなくてずっと焦ってました。

―ライブができないことは別として、かっぴさん(高嶋の愛称)は根がインドア気質じゃないですか。だから、こういう生活もあまり苦ではないのかなと思ったんですけど。

みんなも家にいるからこそっていう安心感はありますけど、この期間が長すぎるとちょっと苦になってきますね。でも、「ライブができない!」ってずっとウジウジしてたら時間がもったいないからいろんなことに挑戦できてるし、自分についてもグループについてもいっぱい考えられるから大切な時間になってるなって思います。


危機感の背景

―かっぴさんのイメージって柔らかくてふわっとした雰囲気ですけど、PassCodeとしての活動が長くなってくるにつれて、内面にも変化が生まれているのかなと思うんですが。

変化、あるんですかね……。

―大人になるにつれて、いろいろと考えることが増えていきませんか。

ああ、そうですね。前まではその日が上手くいけばいいやって感じで過ごすことが多かったんですけど、最近は将来のことをずっと考えてたり。すごく生々しい話になるんですけど、「今年これぐらいまでいけないと来年がヤバくなる」みたいな危機感が芽生えてます。

―「これぐらいまでいけないと」っていうのは?

PassCodeは毎年ツアーをやるんですけど、それを絶対にソールドアウトさせないと、次の年は大きくなっていけない、とか。「日本武道館」という場所を口にしてからは焦りが出てきて、「大丈夫かな?」って考えてます。

―なるほど。

なので、今年はけっこう頑張りどきだと思ってたんですけど、ライブができないじゃないですか。だから、在宅コンテンツでファンの方を飽きさせないようにして、なおかつ新しくPassCodeのことを好きになってくれる方を増やすにはどうしたらいいかなっていうことを考えてます。

―これまでSNSはそんなに積極的に使ってる感じではなかったですもんね。


そうですね。「更新したいときにすればいいや」って感じだったんですけど、今は「更新しよ!」って。

―この自粛期間がきっかけになって、PassCodeというものに対してより自覚的になってきたんですね。

考える時間が増えたからこそ、自分のこととかグループのことをめちゃくちゃ考えるようになったから、こういう期間があってよかったのかなって思います。

―自分についてはどんなことを考えてるんですか。

改めて、ライブがないと何もない人間なんだなって。だから、もっと中身のある人間になっていかないとと思ったり。ベースとかダンスを始めたことでそれが身になればいいなって思ってます。

―PassCodeについてはどう考えてますか。

うーん、どうやろう……? ライブが始まるのがいつになるかわからないじゃないですか。うーん、なんて言ったらいいんやろう……。

―最近はかっぴさんからも意見するようになったという話を聞きましたよ。


あ、たしかに。今までは何か聞かれたとしても、「みんながよければそっちでいいんじゃない?」って感じだったんですけど、だんだん自我が芽生え始めて(笑)。「こっちのほうがPassCodeにとっていい選択や!」とか思うようになって、それが口から出るようになりました。

―それは何かきっかけがあったんですか。

なんですかねえ? 年ですかねえ?(笑)

―あはは! 

でも、PassCodeに加入して7年目ということもあって、PassCodeの将来について……PassCodeを長く続けるためにはどうしたらいいんやろとか、答えは出ないんですけど、そういうことについて考えることが多くなったから、自分の意見もちゃんと口に出して言っていこうと思ってるのかもしれないです。

安定感があるだけではダメ

―明確な答えが出ないまでも、日々物事を考えるなかで、自分が理想とするPassCode像というのが徐々に固まってきているのかもしれないですね。それが様々な場面で自分の意見として出てくるのかなと……そんな大層なものでもないですか?

いや、改めてこうやって自分が考えてることを人に話すと、自分ってやっぱりこういう考えなんだなって思い知らされます。

―まあ、普段こういうことって話さなそうですもんね。

まったく話さないです(笑)。

―では、「PassCode CLARITY Plus Tour 19-20」について話を聞かせてください。

今までで一番難しかったです。ZENITH TOUR(「PassCode ZENITH TOUR 2017」)はメンバーの不調を乗り越えてもっといいライブをしていこうとか、その場その場で生まれる壁を乗り越えていく感じだったんですけど、今回は安定感のあるライブがずっと続いて。
でも、安定感があるだけではダメで。バンドの方からもライブ後にいろいろアドバイスをもらうなかで、「安定感があるだけじゃダメだし、なんも面白くない」って言われたんですよ。自分では全力を出してるつもりのライブでも、周りからは「もっとできるやろ」って。だから、「どうしたらいいんやろ」ってライブが終わるたびに悩んでました。

―その答えは出ましたか。

そうやって言ってもらった次のライブでは、「もっと表情を豊かにしたらいいんかな」とか、「もっとバンドと目を合わせたらいいんかな」とか、少しずつ変化を入れていったりしたんですけど、「よかった」って言われるようなライブは全員が「めっちゃよかった!」って感じたライブで、自分だけが「今日めっちゃできた」っていうものじゃないんですよね。だから、答えを見つけるのは難しいなと思って。結局、「グルーヴ感なのかな?」みたいな話をずっとしてました。

―その集大成が新木場Studio Coastでのツアーファイナル2デイズだったんじゃないですか。

そうですね。悩んできた分、爆発できたというか。本当に集大成ですね。


―あの2日目のライブが現時点でのベストな形なんじゃないかと思ったんですけど、どうでしょう。

1日目があまり納得のいくライブじゃなくて、そんな状態で次の日に挑んで。一日一日の話じゃなくて、2日でひとつのライブという感覚だったので、結果的にはよかったと思うんですけど、2日目のようなライブを1日目でもしたかったなっていうのが心残りです。

―2日目アンコールでのMCで流した涙はどういうものだったんですか。

自分がどういうライブをすればいいのかわからなくてずっと悩んでいたから出た涙なんですかねえ……。今までPassCodeをやってきて、「こんな曲じゃ売れないよ」っていろんな人から言われてきて、アイドルのイベントに出たら「バンドのイベントに出ればいいのに」って言われたり、その逆もあったり。でも、自分たちを信じて続けてきた結果、ああいう日になったから、「続けてきてよかったな」って感じで出たものでもあるのかもしれない。

―安心の涙、か。少なくともZENITH TOURのファイナルで流した涙とは違うんですね。

違います! あの日は「苦しかった~」の涙です。不満だらけの涙でしたね。

メンバーも認めた成長の証とは?

―去年、『CLARITY』のリリースタイミングでひなさんとちゆなさんに話を聞いたときは、かっぴさんが一番変わったって話してましたよ。

本当ですか? 自分のことが正直、あまりよくわからないんですよ。メンバーの成長はよくわかるんですけど。でも、そう言ってもらえてありがたいです。

―2人はかっぴさんの表情について特に評価してましたね。

うれしい。お客さんの顔をよく見るようになって、自分も笑ったりすることが増えたからかもしれないですね。

―振り付けのKOHMEN先生は、かっぴさん一人でも負けないぐらい大きな振り付けが魅力だっておっしゃってました。

先生の振り付けでメジャーデビューからずっとやらせてもらってるから、体に馴染んできて踊りやすくなってますね。だから、新しい振りが来てもすぐに自分の中で消化できるようになったし余裕が出てきたので、今はすごく楽しいです。

―ダンスを楽しんでる様子は伝わってきます。

今はただ、面白いことを提供したいなって思ってて。だから、今、自分に何ができるやろって考えて、ダンスの映像をあげたりしてSNSを盛り上げようとしています。

―CLARITY Plus Tourで得たものが何だったか言葉にできますか。

答えはわからないけど、忍耐強く頑張る(笑)。

―これまでと同じじゃないですか!(笑)。

いや! 今までは壁があったからそれを乗り越えていくって感じだったんですけど……まあ、一緒ですね(笑)。

―その想いがより一層強くなっているということなのかもしれないですね。では、新曲「STARRY SKY」の解説をお願いします。

えー、そんなん初めてする(笑)。「STARRY SKY」は、えーと、その、TVドラマ『隕石家族』のタイアップとしてつくられた曲で、サビは前作の「ATLAS」とか「Ray」みたいに聴きやすいんですけど、それ以外にも(今田)夢菜のシャウトだったり、PassCodeの特徴でもある転調がたくさん織り交ぜられてて、PassCodeらしい自信作になりました!

―レコーディングが大変だったそうで。

久しぶりにシャウトを録ったんですけど、今田夢菜はすごいなって改めて思いました。私は「Taking you out」でもシャウトをやらせてもらってて、ライブだとアドレナリンが出て勢いでできちゃうところがあるんですけど、レコーディングブースの真剣な空気のなかでするシャウトがすごく難しくて、最初はまったくできなくて苦戦しました。

―シャウトはだんだん板についてきたように見えますよ。

YouTubeで「シャウト 出し方」で検索して勉強してます(笑)。

―かっぴさんはちゃんと練習するんですね。

私は不安なのでけっこう練習しちゃいますね。

―かっぴさん的な理想のシャウトはあるんですか。

夢菜のシャウトが最近高めなので、平地さんからは低めのシャウトをするように求められてて、うまく掛け合いができるように意識してます。

―シャウトと通常の歌を並行してやるのは大変ですね。

特に今回はキーが高いので難しかったです。シャウトは低く、歌は高くっていうのは大変ですね。

―この曲に限らず、平地さんからの要求は高くなってるんですか。

そうですね。昔はあまり言われなかったんですよ。何回か録って終わりっていうことが多くて。でも今回は、「ここは切ない感情で歌ってみて」とか、もっと具体的になると「大きい広場で歌ってる感じで」とか、よくわからないことを言っていただくので頑張って想像しながら歌ってます。

―さきほど、「自分のことはわからない」とおっしゃってましたけど、レコーディングを重ねていく中で自分の成長は感じることはないですか。

ライブで歌っていくうちに喉が鍛えられて、高い声を力強く出せるようになったので、昔よりはマシになったと思います。自分の歌声がずっと好きじゃないので、いつもレコーディングが終わったあとはグズってます(笑)。

「自分には何もない」の強み

―そのほか、自分に対して褒めてあげられる部分は?

メンバーのなかで一番体力がある気がします。ライブの終盤になるとみんなしんどそうなんですけど、自分は意外と余裕だったりして。(大上)陽奈子からも「後半のしんどいときにかえちゃん見ると元気そうやから自分も頑張ろうって思えた」とか言ってもらえるので、体力はあるほうなんだと思います。

―体力づくりはやってるんですか。

最近はできてないですけど、ランニングをしたり、体幹トレーニングもしてます。その成果が出てるならうれしいです。でも、歌声にまだ全然表現力がつかなくて。

―それは何年もいい続けてますよね。まだ光は見えないですか。

でも、平地さんからは「オートチューン映えする声だから、そういう声があるのはうれしい」って言われるんで、感情のないロボットみたいな声でもいいのかなって最近は思ったりもするんですけど、歌が上手な方を見ると「自分ももっと感情を乗せたいな……」って思います。

―この自粛期間でいろいろなことを考えてると思うんですけど、新たな目標みたいなものは生まれたりしませんか。

うーん、ライブができなくなって感じたのは、メンバー一人ひとりの力を伸ばしていきたいなって。ライブでのパフォーマンス力はもちろん、南だったらラジオのパーソナリティをやってるし、それぞれが得意なことを増やしていけたらPassCodeにとっていいんじゃないかなと思います。

―YouTuberになりたいっていう話をチラッと聞きましたけど。

YouTuberは普通に好きなんですよ(笑)。だから自分もやってみたいっていう気持ちはあるんですけど、そう簡単に始められることではないから難しそうだなと思ってます。

―武器のひとつになりそうな気はしますけどね。

そうですね。今はYouTuberさんが強いから、そういう場所でもPassCodeのことを知ってもらえるようにアプローチしていけたらPassCodeを好きになってくれる人も増えるとは思います。

―編集の技術はないんですか。

パソコンは持ってないんですけど、リハーサル映像を携帯で編集して、文字をつけたりして一人で楽しんだりはしてます。YouTuberごっこというか。でも、あげないです。恥ずかしい。

―出せばいいじゃないですか! 

ええ~、見せたいな~。今後はそういう新しいことにも挑戦していきたいですね。

―自分だけで楽しんでるんじゃなくて、表現できることは外に見せていかないともったいないですよ。

たしかに。

―以前、かっぴさんは「自分には何もない」とか、「全部が平凡」って話してましたけど、そういう気持ちは今もまだありますか。

軸は変わらないんですけど、昔ほどは病んでないし、自分でも役に立つときがあると思って過ごしてます。

―気持ちの持ち方次第ですよね。

そうですね。ポジティブシンキングにしていったら変わっていきました。「自分には何もないからこそ、ライブでは事故を起こさない」とか、いいふうに考えるようにしてます。

「武道館」という目標に向けて

―かっぴさんの持ち味でもある安定感ですね。性格的に、前に出ていくよりも縁の下の力持ち的なほうが性に合ってたりするんですか。

そうですね。昔から「自分を見て!」みたいな感じが苦手というか、そういうことをやってこなかったんで。まず、PassCodeとして人前に立ってること自体が昔の自分からすると不思議やし、今のポジションが自分には合ってるのかなって思います。

―メンバー全員、パフォーマンスのレベルが上がってますよね。

上がってきてるからこそ悩んじゃうというか。ほかのメンバーがすごく成長してると焦るし、自分ももっとやらないとっていう気持ちになります。ちゃんと体を鍛えて、安定感を出していかなとなって思います。

―自粛期間が明けて、普通に活動できる状態になったらどうしたいですか。

とりあえず、みんなに会いたいです。武道館という目標を宣言しているので、それに向かって頑張っていきたいです。

―たしかに、ファンからするとメンバーがいろいろ発信してくれていることで会えているような気分になってるけど、メンバーからするとそうではないですもんね。

みんなの顔をライブで見ないと会えた気にならないんですよ! でも、楓は自粛期間でレベルアップしたと信じてるんで、明けの一発目のライブが楽しみです。

―その自信はどこから湧いてくるんですか。

日々の訓練です!……嘘です(笑)。

―いや、それは嘘じゃないですね。

なんか……今はめちゃ自信あるんですよ。ライブができるようになったらいいライブができると思ってます。

―おお~。そこまで力強い言葉をかっぴさんから聞いたのは初めてのような気がします! 現実的な話は抜きにして、自粛明け1発目のライブはどこでやりたいですか。

KT Zepp Yokohamaがいいです。もともと今回のツアーファイナル(「PassCode STARRY TOUR 2020」)の会場やったんですけど、オリンピックの影響とかで札幌公演がズレたことでファイナルにはならなかったので、自分たちが挑戦しようと思ってた場所から始めたいなって思います。

<INFORMATION>

「STARRY SKY」
PassCode
USM JAPAN
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初回限定盤
PassCode高嶋楓が語る、グループの安定感担うひたむきさ


通常盤
PassCode高嶋楓が語る、グループの安定感担うひたむきさ
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