ピアノ、ギターをやっていたグリフィンが出会ったエレクトロニック・ミュージック
ーグリフィンの最初の楽曲デビューは2016年ですから、この3~4年でずいぶんと環境が変わりましたよね。
グリフィン:大きく変わったね。僕は小さい頃からずっと音楽が好きだったんだけど、大学に行って電気工学を学んでたから、元々は音楽を仕事にしようとは思わなかったんだ。それがダンス・ミュージックにハマってしまって。自分でもプロデュースするようになって、インターネットを通じて楽曲を発表したら、ライブの出演依頼をもらうようになって。そこから発展していくものがあって、自分が音楽をやっていくヴィジョンを持つようになった。今やアルバムまでリリースできて、世界中でライブもできるようになったんだ。3年前には考えられなかったことだよ。自分自身どんどん進化できてるし、ここまでの道のりは楽しかったし、この先どこに向かっていくのか楽しみでしょうがないんだ。
ー小さい頃にクラシック音楽のピアノをやっていたんですよね。そこからの楽器の歴史を教えてください。
グリフィン:7歳の時にクラシック音楽のピアノのレッスンを受けるようになって。そこから音楽理論も学んだし、試験も受けたし、ハイスクールに入る11歳まで続けてたんだ。ギターを手にしたのは12歳の時だね。ロック・ミュージックにスゴくハマったんだ。ガレージで友達と一緒に演奏してたよ。ギターの場合、ピアノのようにきちんと教わったわけじゃなかったけど、ピアノをやってたおかげもあって、すぐに弾けるようになった。そこからグリフィンの音楽ということで、シンセとかエレクトロニック・ミュージックのサウンドをやることになるんだけど、前にやってたピアノやギターとエレクトロニック・ミュージックを融合させたいっていうのは常に思ってたんだ。この二つの世界を結びつけるのがグリフィンの音楽の目標でもあったんだよ。
ーピアノやギターをやっていた時、好きだったミュージシャンはいますか?
グリフィン:ピアノの方は、ショパン、フランツ・リストみたいな本当のクラシック音楽だね。ギターの方は、父が僕にギターを買ってくれたのがきっかけだったし、いとこがThriceというロック・バンドのヴォーカルだったのも大きかった。小さい頃からいとこのライブはよく観に行ってたんだ。そこでインスピレーションをもらって、ギターをやりたいって思うようになった。
グリフィンが最初に弾いたギターは?
ー最初に弾いたギターは?
グリフィン:一番最初のギターは、フェンダーのストラトキャスターのサンバースト。今もスタジオにあって、実際にレコーディングでも使ってるよ。噛みつきが良い音をしてるんだ。尖った音をしてるから、エレクトロニック・ミュージックにもよく合うんだ。
ーライブではギブソンのレスポールを弾いていますよね。
グリフィン:最近はレスポールを使うことが多いね。レスポールのハムバッカーはノイズが少ないから、フェスでプレイするのには向いてるんだ。ライブでよく使うのは70年代のゴールドトップなんだけど、今夜のライブでは黒のレスポール・クラシックを使うよ。
ーギブソンとフェンダー以外に使っているギター・メイカーはありますか?
グリフィン:エレキギターではないね。アコースティックだと、テイラーとマーティンを家で弾いてる。
ーピアノ以外のキーボードは何を使っています?
グリフィン:Dave SmithのProphet Rev2。アナログ・シンセサイザーなんだけど、音が大好きで、ライブでも使ってる。最近まで、アナログでレコーディングをやったことはあまりなかったけど、今はこれでいろいろ実験するのが楽しくなってきた。
ー今夜のライブで実際にプレイする楽器も教えてください。
グリフィン:僕の右手にはAKAI MPK 2の88-Keyを置いて、左手には61-Keyを置いてる。エレキギターはギブソンのレスポール。アコースティックギターもギブソンで、ライブセットの中で弾く場面も出てくる。コントローラーとドラムトリガーもあって。サンプルパッドでサンプリング素材とチョップしたヴォーカル素材をプレイするんだ。
【画像】グリフィンがステージ上で使用する楽器(写真)
ーギターを弾くロック好きだったグリフィンが、エレクトロニック・ミュージックにハマったきっかけは何だったんでしょう?
グリフィン:5~6歳の時、初めてラジオでダフト・パンクを聴いて、「これは何なんだ?!」って思ったんだ。ラジオでかかる他のどんな音楽とも違って聴こえたからね。ただ、その時はそこまでハマったわけじゃなく、大学に行くようになってから、アヴィーチー、スウェディッシュ・ハウス・マフィアといったアップリフティングで、エモーショナルでメロディックなダンス・ミュージックを聴くようになって、この音楽にハマってしまったんだよね。初めてスクリレックスを聴いた時も衝撃的で、どうやってこのサウンドを作ってるんだろう?!と思ったよ。それで、YouTubeでエレクトロニック・ミュージックの作り方を観たんだ(笑)。コンピューターに今でも使ってるAbleton Liveをダウンロードして、自己流で覚えながら曲作りを始めたよ。よく「どうやって曲作りを覚えたんですか?」って聞かれるんだけど、「YouTube音楽スクール」って答えることにしてる(笑)。
エレクトロニック・ミュージックと生楽器を融合する新たなアプローチ
ーエレクトロニック・ミュージックと生楽器の融合はどのようにアプローチしていったんですか?
グリフィン:元々楽器をやってたから、アイデアを形にするのは難しいことじゃなかったんだ。最初は人の曲のリミックスをやってたんだけど、僕の場合、コンピューターに音符を入力するのよりも、ピアノを弾きながらコードやメロディを作っていく方が簡単だったんだ。だから、曲作りはそんな風にして始まった。同時に、シンセ・ドラムに本物のピアノの音が入ったらスゴくカッコ良くなるんだろうなっていうアイデアもあった。

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ー実際の楽曲制作ではギターをどのように使っています? コードやメロディを弾くだけではなく、ギターの音を粒にして使ったりとか、音の鳴りや響きとして使ったりもしていますよね。
グリフィン:そうなんだ。ギターをサウンドのレイヤーとして使ってるのはスゴく大きいと思う。シンセサイザーと同じ音符をギターで弾いて、レイヤーの下に置くんだ。そうするとその組み合わせが面白いサウンドになる。ギターだけの音よりも、ギターと何かが混ざったハイブリッドな音の方がユニークなものになるんだ。
ーサウンドで遊んでいるわけですね。
グリフィン:かなり遊んでると思うね。
ー曲作りの一番最初の段階では、ピアノやギターから作り始めますか? それとも、コンピューターで作り始めますか?
グリフィン:ピアノかアコースティックギターから作ることが多いね。今作ってる新しい曲にしても、ピアノかシンセサイザーだけで作るか、あるいは他の作家と一緒に曲のアイデアをいろいろ出し合ってく感じで作ってる。ギターを弾きながら作ることもあるね。そこから歌詞を書いて、ヴォーカルをレコーディングして、それをスタジオか家でエレクトロニックに仕上げていく。だけど、骨格となる曲はピアノかギターと声だね。
ーシンガーとコラボする時はどのような作り方になります? シンガーがメロディや歌を持ってくることもありますよね。
グリフィン:曲にもよるね。曲によってプロセスもいろいろと違ってくるんだ。アーティストから僕宛に「あなたの音楽が好きです。曲を書いてみたんですけど、どうでしょう?」っていう感じでデモを送ってくることだってある。そこで僕がそのデモを気に入って、ヴォーカル以外をすべて削ぎ落としてアカペラにして、作り直したりもすることもある。あと、アーティストとただスタジオで合流するだけにして、そこでゼロから作り始めるようなこともある。あるいは、僕の作曲チームですでに曲をほぼ完成させておいたものを、ヴォーカルだけ新たにアーティストを呼んで、スタジオでレコーディングするようなこともあるね。
これまでで一番変わったソングライティング
ー今までやってきた中で、一番変わった曲作りは何ですか?
グリフィン:いろいろあるからね。時間がかかることもあるし、いくつもヴァージョンを変えて作ることもあるし。「Feel Good (feat. Daya)」という曲の場合は、最初は教会のオルガンにシンガーのDayaの声が乗っているだけの感じで、いろいろヴァージョンを作ってみたんだけど、なかなか気にいるものが出来なくてね。たまたまデンバー州コロラドでオフの日があった時に、Illeniumに連絡して、「Dayaと曲を作ってるんだけど、行き詰っちゃってね」って言って、曲のアイデアを聴かせたら、「カッコいいじゃん。スタジオに来なよ」って言ってくれて。彼のスタジオまで車で行って、曲に取りかかったんだ。それをDayaに聴かせてみたら、「超カッコいいわね」って言うから、2日後にはLAで彼女と合流して、新しく作ったトラックで2番目のヴァースとブリッジとコーラスのヴォーカルを録って、作り直してみたんだ。紆余曲折はあったんだけど、良い曲が出来たよ。だから、どの曲も作り方が違うんだ。一番変わった曲作りは何か?って言われると難しいけど、メールやSkypeで作ったこともあるよ。それで、ロンドンにいるアーティストと実際に会うことなしに、一緒に曲を作ったこともある。まあ、それが今どきの音楽の作り方なのかもしれないけれど。
ー昨年10月にデビュー・アルバム『Gravity』を遂にリリースしたわけですが、現時点の自分のいろいろな面を見せたかったですか? それとも事前にコンセプトを立てたりしましたか?
グリフィン:まず最初に、「Nobody Compares To You」をリリースたんだ。そこからさらに2曲リリースしたんだけど、ちょっとおかしな時期に突入してしまってね。ヴォーカル・パートを作るのに苦戦してしまって。「Tie Me Down」とかけっこう時間がかかってしまったんだ。そこで行き詰まってる間に、同時に他の曲もいろいろ作り始めてみたんだ。その出来上がった曲をまとめて見た時に、「ワオ、この夏でけっこうたくさん曲を作ったな」って思わされて。そこから、曲をまとめてアルバムを出してみようってことになったんだ。どの曲も、そこにはアイデンティティがあったからね。今までの僕は、曲が出来たらすぐにリリースしたいタイプだったし、シングル・アーティストのイメージがあったと思うんだけど、アルバム・アーティストとしてやっていこうかなと思ったんだ。でも、そこで特にプレッシャーもなしにアルバムを出せたのは良かったと思う。偶然アルバムを出せた感じではあるんだけど、アルバムを出せて本当に良かったよ。今では周りが僕のことをアルバム・アーティストとして見てくれるし、今スタジオで新曲を作ってても、もう次のアルバムのことを考え始めてるくらいだから。
ー最初は人の曲のリミックスをやっていたグリフィンがアルバム・アーティストになったわけですが、ここまでの道のりはどうでしたか?
グリフィン:最高だったね! もちろんリミックスも楽しかったし、今でもやりたいくらいなんだけど、自分の作品の場合、良いものを作ったら作っただけ返ってくるものがうれしい。それに、今は自分が好きなもの、自分がやりたいことに対するアーティストとしての自信もかなりついてきた。みんなに向けてどういうものをリリースしたいのかもわかってきた。曲作りの方も作詞も含めて、すべてのプロセスに関われるから、スゴくやりやすいし、最高でしかないんだ。
ーでも、3年前に会った時から、すでに今やっていることのヴィジョンを持っていましたよね。これはただもう形にしていっただけですか?
グリフィン:そうだね! 自分のやりたいオリジナルの音楽を作るのに少しだけ時間がかかったけど、今の自分はクリエイティブ的にもスゴく良い状態にあると思うね。
ドラマーとギタリスト兼キーボードを従えたバンド編成で演奏
ーライブについても聞きたいのですが、自身でギターや機材を使ってプレイするだけでなく、バンド・メンバーも二人いるんですよね。
グリフィン:ライブでは、僕の他にドラマーとギタリスト兼キーボードがいる。スペンサー・ピーターソンがドラマーで、ウィル・ウォールデンがギターとキーボードを担当してるんだ。スペンサーと最初に一緒にやったのはコーチェラ・フェスティバルで。それまでのライブ・ステージは僕一人だけで、それはそれで楽しんでやってたんだけど、自分のライブをもっと大きな規模にして、よりファンとつながりを持てるようなものにしたいと思ってたんだ。それで、コーチェラでスペンサーに2曲くらいドラムを叩いてもらったら、かなり良くてね。そこからさらに彼と一緒にライブをやるようになったんだ。で、『Gravity』のプロジェクト、ライブ、アルバムをやるってなった時に、さらにライブの要素を強くしたくなってね。そこでウィル・ウォールデンが出てくるんだけど、彼は元々僕のギター・テックで、バックステージで僕のギターを調整したりしてたんだ。ある時、ロンドンでサウンドチェックをやってる時に、僕がギターを弾いてると、ウィルがそこに乗せてリフを弾いてくるんだ。そこでピンときたんだよね。すぐに「僕と一緒にステージに立った方がいい」って言ったよ。「ステージ裏にいる必要はないよ。ステージに立ってほしい」って。それで今のバンド・メンバーが揃ったっていうわけさ。このメンバーでのライブ・デビューは去年の11月28日で、『グラヴィティ』のライブ初日だったんだ。
ーライブ当日、ウィルは緊張していました?
グリフィン:緊張はしてたけど、いいライブを見せてくれたね。それに、ウィルの親父は70年代にロック・バンドをやってたわけだから、彼は親父の血を受け継いでるんだよ。彼は素晴らしいパフォーマーだし、自分でバンドもやってる。初日からこのメンバーで自然にライブができたのは良かったね。それ以来、ずっと一緒にステージをロックしてるよ。ちなみに、海外でこのメンバーでライブをやるのは今夜が最初になるんだ。スゴく楽しみだよ。
ー今夜のライブの後、夜中にはDJセットもやりますよね。ライブとDJセットとの違いは何でしょう?
グリフィン:ライブは90%が僕の音楽なんだけど、DJセットだと60%になるのかな。DJセットの方は、パーティ向けとは言いたくはないんだけど、もっと楽しめるクラブノリというか。ライブの方は、もっとアーティスティックだし、アルバムの曲を中心にプレイしていくね。もちろんバンドでやるわけだから、ずいぶん違う体感できると思うよ。でも両方とも楽しいし、好きだけど。両方チェックしてもらえたらと思うね。
ー2019年はアルバムのリリースもあって、グリフィンにとって大きな年になったと思いますが、2020年はどのような動きをしていきますか?
グリフィン:2019年は最高だったし、スゴく忙しい1年だった。今振り返ってみても、スゴく自分で誇れるような年になったと思う。アーティストとして成功も味わえたし。だから、今年は少しだけ落ち着いてやりたいかな。去年は寝る時間もあまりなかったからね(笑)。アメリカでヘッドライン・ショーを2つやったし、ヨーロッパでもスゴくいろいろやったし、アジアでも少しやった。自分のキャリアの中でも良い年だったし、感謝の気持ちもスゴく生まれた。今回ってるアジア・ツアーを終えた後、次は何をやろうか考えてるところだ。日本にも今年また戻ってきたいね。僕の母は日本人だし、今夜のライブには日本のいとこも観に来てくれるんだ。日本にはファミリーがいるし、日本は国としても大好きなんだ。だから、次回の来日もすでに待ち遠しいくらいなんだ。
<INFORMATION>

『Gravity』
グリフィン
ユニバーサル ミュージック
発売中

Photo by cherry chill will.
GRYFFIN(グリフィン)
米サンフランシスコ出身、LA在住。良質なメロディのエモい楽曲を武器に、ピアノ、ギター、シンセサイザー、ドラムパッドなど多彩な楽器を操ってサウンドを作る、新世代ダンス・ミュージック界の代表格、グリフィンことダン・グリフィス。マルーン5「Animals」やイヤーズ&イヤーズ「Desire」のリミックスにより早くから注目され、「Tie Me Down」の大ヒットやコーチェラなどフェスでのライブの評判によって人気も急上昇。昨年10月には初のアルバム『Gravity』をリリース。ビルボードのダンス/エレクトロニック・チャートでも1位を獲得している。
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