米民主党の大統領候補であるジョー・バイデン氏が副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を選んだことは、様々な意味で歴史的快挙だ。
地方検事のころから、ハリス議員はセックスワーカーの敵としてもっぱらの評判だった。2008年、彼女はサンフランシスコにおける売春の非犯罪化を目指した投票法案「提案書K」に声高に反対した。彼女は提案書Kを「完全にばかげている」とし、「手をこまねいてポン引きや売春婦を呼び寄せるようなもの」と主張した。
州司法長官時代のハリス議員はBackpage.comへの訴追に一生懸命だった。これはエスコート嬢がよく使っていた募集広告サイトで、セックスワーカーたちによれば顧客を事前に選別して自分の身を守るツールとして使っていたという。2016年、彼女はサイトの所有者らをマネーロンダリング、売春斡旋、売春斡旋共謀など数々の容疑で起訴した。同サイトは性的人身売買の中枢で、被害者の中には子どももいる、と彼女は主張したが、サイトはもっぱらエスコート嬢が同意の上で売春を行うのに使われていた。
「プラットフォームを利用していた女性たち、それも黒人女性たちは、生計を立てるためにあそこでお金を稼いでいたのです」。
【画像】オンライン上で活動するセックスワーカーの悩み(写真2点)
その後、Backpage.comは閉鎖されたもののオンラインでの性的人身売買撲滅にはいたらず、事実上セックスワーカーは同サイトを収入源や顧客の選別に使うことができなくなり、危険にさらされた。セッククワーカーたちはハリス議員がBackpage.comへの訴追攻撃を進めていた際、それがいかに有害であるかを議員に伝えようとコンタクトを試みたが、無駄骨に終わったそうだ。「議員のオフィスに電話したり、スタッフと話をしたりしました。手紙も書きましたが、一度たりとも折り返しの電話などは返ってきませんでした。途中で電話を切られたことも1度あります」。SWOPサクラメント支部のエグゼクティヴディレクター、クリステン・ディアンジェロ氏は昨年HoffPostの取材でこう語った。
2019年、ハリス議員は売春に対する立場を軟化させた
さらにハリス議員は、物議を醸した反性的人身売買法SESTA/FOSTA法の発起人の1人だった。SESTA/FOSTA法はWEBサイトのパブリッシャーにプラットフォーム上に掲載される売春広告の責任を与えることで、オンラインでの性的人身売買を取り締まることを目的としていた。だが、セックスワーカーたちはSESTA/FOSTAが逆効果だと訴え続けていた。同意のない売春の防止にはならない一方、同意の上で売春をしていた人々が街に出て客を拾わねばならなくなり、身を危険にさらす羽目になったという。
【画像】殺されたセックス・セラピスト、ハリウッドの光と影に翻弄された人生(写真4点)
SESTA/FOSTAで「みんな以前ほど安全ではなくなっています」とマックラッケン博士も言う。「まさに大打撃です。この州ではCOVID-19のせいで生計を立てられない人が大勢います――オンラインでコミュニケーションすることも、リソースをやり取りすることもままならないのです――SESTA/FOSTA法の直接的な影響だと考えざるを得ません」
2019年、ハリス議員はニュースサイトRootに対し、売春に対する立場を軟化させたと述べた。売春の非犯罪化を支持するかという質問に対し、「そうだと思います」と答えた。だがこの発言のあとに続いた内容を、一部のセックスワーカーは大きな警句と受け取った。サンフランシスコ地方検事時代の売春に対する見解について、ハリス議員はこう述べた。「私は当時、売春婦の逮捕をやめ、代わりに客やポン引きを取り締まるべきだと訴えていたのです……当時は売春に関与した男性や、売春で金儲けや搾取をしていた男性ではなく、女性が犯罪者として扱われていました」
この発言を聞いた一部のセックスワーカーは、彼女が支持しているのは完全な非犯罪化ではなく、部分的な非犯罪化だととらえている。いわゆる北欧モデル――多くの北欧諸国で採用されているためこう呼ばれる――は買春を犯罪とみなす一方、売春する側は訴追しないというアプローチだが、売春の完全な非犯罪化ではないと言われている。非犯罪化とは売春を職業として合法化すること。それによって医療や法的権利といった道が開けてくるというのだ。
部分的な非犯罪化ではセックスワーカーの安全を守れない
部分的な非犯罪化ではセックスワーカーの安全を守れないとする研究もある。「北欧モデルの裏には、売春が選択した職業ではなく、強制された職業だという考えがあります。これが偏見をあおり、権利を妨げているのです。需要型モデル、部分的非犯罪化、呼び名はいろいろありますが、いずれも解決にはならないのは分かっています」とマックラッケン博士も言う。「安全にも、プラスにもならないでしょう」
売春の非犯罪化は民主党の予備選挙でも争点となり、バーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員らが何らかの形での非犯罪化を支持する立場を表明した。こうした理由から、ハリス議員の方針転換が本気だとは思わないセックスワーカーも中にはいる。「本当に非犯罪化を支持するためには、まず第一にこうした政治家が責任をもって売春への見方を改め、受け入れなくてはなりません。売春と人身売買を結びつけるのをやめていただかなくては」とMF Akynos氏は言う。「でも、政治家はそれをしたがらないんです」
公正を期すために言えば、ハリス議員は他の様々な問題での改革に乗り気の姿勢を表明している。麻薬改革に取り組んだ経歴を熱心にアピールする一方、昨年は全米レベルで大麻を合法化し、有色人種の大麻起業家に連邦政府から助成金を支給することを求めたMORE法を起案した。さらにローリングストーン誌が取材したセックスワーカー全員が、ハリス議員の姿勢にかかわらず、来る11月にはバイデン候補に投票すると言った。その一方で、売春に関するハリス議員の最近の発言を、セックスワーカーの権利擁護に「かこつけた」ものだという思いを払拭できずにいる。
from Rolling Stone US