日本語、韓国語、英語を巧みに操るトリリンガルラッパー&シンガー、ちゃんみなが、2020年9月9日に全4曲収録のニュー・シングル『Angel』をリリースする。ラテン調のギターリフが印象的なサマーチューンの表題曲をはじめ、”堕天使”をテーマに、徐々に堕ちていく物語性のある本シングル。
これまで休むことなく突っ走ってきた彼女が、自分を見つめ直す期間にもなったというコロナ禍。ちゃんみなに1年ぶりとなるインタビューを行った。

ー新型コロナウイルスの影響で、LAでの制作が飛行機の離陸数時間前に中止になったり、韓国でのお仕事も延期になってしまったりしたそうですね。本来であれば、2020年はどんな計画をしていたんでしょう?

本来であれば、より大きな会場でのライブを目指して頑張ったり、私の計画よりは早かったんですけど韓国進出が決まっていたり、そういう予定がありました。年明けくらいから、なんか今年は自身の活動においてやばいことが起きる気がするって言っていたんですよ。そしたら違う意味でやばいことが起きちゃって……。最初は私も混乱していたんですけど、今はこの時期があってよかったなって思います。

ーコロナ禍中は、どのような感じで過ごされていたんでしょう。

4月はひたすらぼーっとしていたんですよ。ツアーも中止になってしまって。映画も観ないし、音楽も聴かないし、作らなかった。インプットもアウトプットも一切しなかったんです。
思い返してみると、デビューしてからずっと走っていたんですね。下手したらデビューする前から無になる時間がなかったので、自分の中で整理したりデトックスすることがすごく大事な時間になりました。

ーこの期間、ちゃんみなさんが刺激を受けたアーティストはいない?

申し訳ないことに一切ないんですよね。私もそうだし世界的にそうだと思うんですけど、ちょっと音楽から離れていたと思うんです。刺激的なものを観たくない人が多かったと思う。それで我々アーティストが焦る必要もないし、それに合わせて休むべきだと私は思っていて。どうせまた刺激的なものを欲しがるから、そうなった時自分たちもそういうものを出したい気持ちになると思うんです。だから無理してそっち側に寄る必要もないし、自分のターンが来るまで待っていればいいと思っていました。

ー「Angel」のMVを観て、これちゃんみなさん? と思うぐらい変貌を遂げていてびっくりしました。

そうそうそう。すごく痩せたんですよ。いつでも最高の状態でスタートを切れるように、健康管理や体力作りのために走っていたので。


ーもともと走るのは得意だったんですか?

走るのは気合いですね。最初は邪念を飛ばすために走っていたんですけど、だんだんランナーズハイみたいになっちゃって。今日も走らないとなみたいな習慣になっていったんです。公園のコースをぐるぐる回っていたんですけど、1周目はるんるんなんですよ。2周目もその勢いで、3周目、4周目になりしんどくなってきて、5周目を越すと、このまま7周いこうってなり、8周、10周と目標が増えていって、木と木の間をゴールに見立ててそこまで走る。ゴールしたときの達成感はすごくて、生きているなって感じがしますね。

ー本当に走ることが目的になっていたんですね。

ひたすら同じところを同じ曲を流して走っていました。K-POPだったり、洋楽だったり、自分の曲だったり。同じ曲をずっと聴いて走ると無駄なことを考えないで済むんです。あと考えていた悩みがなくなるんですよ。たったの30~40分で、しかも体にもいい。
ダメなことないじゃんって。

ー勝手な印象ですけど、前お会いした時より朗らかな感じがしますね。

ほんとですか!

ー前はちょっと尖っていたというか。

突っ張っていましたもんね(笑)。今すごくデトックスされて、自分の健康も気遣えています。おかげさまで。

ーこの期間、絵や小説も書かれたそうですね。どんなものを表現していたんでしょう。

私は曲を作るとき、感情をそのまま音に具現化しているんですけど、それを絵でも具現化しました。その時期に描いた絵は「Angel」のMVで飾られています。

ーそれは自分の内面が絵に出ている?

すごく出ています。

ー小説はどんな感じの作品だったんでしょう?

自分の哲学をめちゃくちゃ詰め込んだ小説ですね。
主人公とメインのキャラクターが4、5人いて。実は全部自分なんですけど、それぞれの特徴を尖らせている感じ。友だちをモチーフにした子もいて、哲学的な小説になっています。

ちゃんみなが語る、21歳の等身大の自分


ーまさに、自分をみつめなおすような作品なんですね。オフィシャルインタビューで「音楽をやることは自慰行為みたいなこと」だとおっしゃっていましたが、音楽制作を観られるというのは、どういう心境なんでしょう。

恥ずかしいわけじゃなくて、見ていけば? って感じです。私は何においてもジャッジされることが好きじゃないんですよ。でもジャッジされる仕事でもあるし、されているのが現実なわけで、それをあまり気にしてない。音楽をしているときは、結構わがままなところはありますね。

ーコロナ期間は人と距離を取らなきゃいけなかったわけで、その反動でもっとコミュニケーションしたいとか、会いたいとなってもおかしくないと思うんですけど、そういうこともなかった?

あまりなかったです。誰が本当に会いたい人で、誰が別に会わなくてもいい人がはっきり分かったということはありましたけど、やっぱり1人が好きなんだなってことが分かりましたね。あと、放っておいてもアートとか表現に手を出しちゃうところとかがわかったというか。


ーマラソンもそうですけど、自分の中に目標を作って、そこに対して努力して前に進んでいる感じが、ちゃんみなさんらしいなと思います。

そう、それがないと結構きついですね。止まっている感じが好きじゃないです。性格的に休憩できないんだろうなって思いますね。

ー「Angel」は、自分でも理解できないような曲になっているそうですね。

今まで監督目線で俯瞰から見て書いていたんですけど、「Angel」は自分がストーリーの渦中にいる状態で書いたんです。混乱しながら書いたというか。絵にも繋がるんですけど、自分の感情を色に映し出した時、ハッピーだけでも私の中に7色の種類があるんですよ。いろいろな種類のハッピーがある。それをなぐり書きしているから、カラフルだし、いろいろな色があったりする。汚れた部屋っていうイメージなんですよね。

ー日常における具体的な出来事があったことで生まれた曲でもあるんですよね。


あったんですけど、自分でも何があって、何を思っているのか分からないんですよね。この曲に関しては。改めて私は独りよがりな性格だと思いました。薄々分かっていたけど、いざ人と関係を持つってなった時に、振り回そうとしているんだけど、私は振り回されない。振り回されているフリをしているときもあるけど、別にあなたがいてもいなくても変わらない、私は私だなってことがわかったというか。

ーそれに気づいたときは、どんな気持ちだったんですか?

冷たい言い方をしてしまうと、しょうがない、っていうのがシンプルな答えでもあって。逆によく言えば、ぶれない人で良かったなとも思うんですよ。

ー今作のテーマを堕天使にしたというのは、どうしてなんでしょう。

シングルの軸が見えたとき、歌っている主人公がだんだん堕ちていっているなと思ったんです。「Angel」は一体何があったのかを説明している全体のダイジェストみたいな感覚で、奥ゆかしいというか、自分の欲を一切出さない感じの曲。「Very Nice To Meet You」から嫉妬だったり欲だったり人間の愚かなものがちょっと見えていき、「Rainy Friday」でトーンが一気に落ちて諦めに陥っていく。そして「As Hell」で堕ちていく気持ちよさを見出す。人間的にというか、全体的に堕ちちゃっているなって思ったときに、あー堕天使だなって思ったんです。

ちゃんみなが語る、21歳の等身大の自分


ー堕ちていくことの心地よさって、あまり意識したことがないですけど、たしかにそういう快楽もあるのかなと思いました。

諦めることによる気持ちよさもあるんですよね。どうでもいいやってなった時って気持ちよさを感じたりする。それは本当の終わりでもあると思うんですけど、そうなってしまった感じを表している作品ですね。

ー改めて4曲を聴き返してみて、どう思いましたか。

すっきりしたーと思いました。あと、上手く表現できた作品になったなと思いましたね。久しぶりにクリエイトをしたので、すごくすっきりしたし、自分が思っているものをそのまま出せたことが、何より1番デトックスになったなって感じがします。

ー前回インタビューをさせてもらった際、感情を表すには韓国語が1番あっているとおっしゃっていました。今回は韓国語を使っていないですよね。

本を読み出して日本語のボキャブラリーが増えたことで考えていることや言いたいことを上手く言えるようになったんです。前までは、韓国語の方が表現しやすいなとか、英語の表現がいいなとか、そこに逃げがちではあったんですけど、日本語でしっかりレベルアップできたのかなと思います。

ーどんな本を読まれることが多かったんですか?

いろいろな本を読みましたけど、心理系の本が多かったかもしれないです。シェイクスピアとか定番の物語もいろいろ読みましたね。心理学に興味があって、女性脳はどういう仕組みになっているとか、男性脳はこうだとか、自分が知りたかった。一人っ子の子はこうなりがちとか、そういうのを見たり、あー私これ当てはまるかもと思ったり、気持ちの持ち堪え方とか、どうしたら落ち込みにくいとか、そういう本が多かったですね。

ー精神の筋トレをした期間でもあるとおっしゃっていましたよね。今話したことと繋がっている?

本当に心の筋トレをいっぱいしました、21歳は。

ー心の筋トレってどうやってやればいいんですか?

傷と向き合う。放置しないことですかね。

ーそれってやっぱりぐさりとくる作業なわけですよね。

来ますよ。痛い痛いってなります。

ーひたすら耐えるんですか?

ひたすら耐える。祈る。耐えて、祈って、大丈夫だから絶対折れない、負けない、たまにしんどいのをしっかり受け止めるの繰り返し。大変でした。立ち直りに向かっていくか、行くところまで墜ち切るか、どっちかですよね。どっちも経験しました。

ー今作はサウンド面に関して、3人のプロデューサーがトラックメイクをしています。そこに一貫性みたいなものをどうやって生み出したんでしょう。

おもしろいのが、1曲目「Angel」はRyosuke "Dr.R" Sakaiさんのトラックで、「雨の夜にはおいでください」って私の歌詞がJacob Gagoさんの「Rainy Friday」と雨で共通している。JIGGさんの「Very Nice To Meet You」は「Rainy Friday」と繋がっている曲で、雨って単語は一言も出ていなくて「As Hell」も雨って単語は出ていないんですけど、JIGGさんが「As Hell」のトラックの最後に雨の音を入れてきたんですよ。「どうして入れたんですか?」って聞いたら、「いや、なんか雨の音入れようかなと思って」って。何その偶然! ちょっと雨の音上げて! ってことで音量をあげてもらったんです。

ちゃんみなが語る、21歳の等身大の自分


ー音に関しては、常に最新のトレンドを取り入れていたいと、前回の取材のときおっしゃっていました。そこは変わらずですか?

今回に関してはある程度お任せました。インプットしてなかったからこそ、私は感情だけで書きたいと思って。キックの音とか、そういう細かいところは任せましたね。

ー前回は20歳であることを意識した作品でしたが、現在21歳であることは意識されたりしますか?

21歳は私にとって恋愛が多い、女性としての事件みたいなものの多い1年だったんです。なので、そうしたものをテーマに歌いました。前回の取材で、何が自分に起こるのか、何を傷として捉えるのか、何をうれしいと思うのか気になるって言ったと思うんですけど、あーこの角度から来るんだ! っていうことが結構あったんです。20代に入って、あーここで傷つくんだ私とか、新しく発見することも多い歳になっていると思います。

ーちゃんみなさんは、10年単位で未来を計画しているっておっしゃっていました。コロナによって世界が変わってしまいましたが、思い描いていた未来は今どう考えていますか?

あまり予定は狂ってないというか、無茶なプランではないし、今のところ巻き返しもできている。今は21歳を楽しんで、22歳も楽しむために愛も悪も受け止めて、作品にできるようにしているところです。

ー前と雰囲気や考え方もアップデートされていて、今回も非常に刺激的な取材でした。

本当に女の子って変わっていくんですよ。怖いことでもあるんですけど、楽しいですよ。これから先がめっちゃ楽しみです。

Photo by 大橋祐希

<リリース情報>

ちゃんみな
『Angel』

発売日:2020年9月9日(水)
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