2016年のサービス開始以来、セックスワーカーたちに愛用されてきたサブスクリプション型ソーシャルメディアプラットフォーム「OnlyFans」。クリエイターたちがファンに直接コンテンツを販売できるとあって、2020年3月の新規会員登録数は前月比で75%も増加した。
カーディ・Bやブラック・チャイナといったメインストリームのセレブリティの参入に加え、ビヨンセが「Savage」リミックスの中で触れたこともOnlyFansの人気に火をつけ、OnlyFansでアカウントを立ち上げて手っ取り早く稼ぐのが一種のトレンドになるほどだ。
そして今、OnlyFansの人気はさらに拍車がかかることになりそうだ。クリエイターとしては初めて、女優兼シンガーのベラ・ソーンがたった1日で100万ドル(約1億円)を売り上げたのだ。ソーンは限定コンテンツを1カ月20ドルで販売し、1週間足らずで200万ドルを稼いだ。
ソーンの思わぬ大成功のニュースは全米で話題になった。ソーシャルメディアでは大勢の人々が、彼女のコンテンツ見たさにOnlyFansに登録したとジョークを飛ばした。OnlyFansにとっても間違いなく格好の宣伝材料になった。ただし、ソーンの偉業を面白く思わない集団がいた。長年OnlyFansを愛用し、プラットフォームのメインストリーム化を複雑な気持ちで見守ってきたセックスワーカーたちだ。
公正を期すために言うと、ソーンは昨年アダルトサイト「Pornhub」向けにNSFW(職場での閲覧注意)映像作品を監督し、すでにアダルト業界は経験済みだ(彼女の代理人にコメント取材を依頼したが、返答はなかった)。セックスワーカーたちをいら立たせているのは、OnlyFansを始めたのはショーン・ベイカー監督(数々の賞を受賞した2015年の映画『タンジェリン』の監督)の次回作の役作りのためだった、というロサンゼルスタイムス紙のソーンの発言だ。「彼女が得る視点は、大半のOnlyFansのコンテンツクリエイターの経験とは似ても似つかないでしょうね」と、セックスワーカーのEllamourneは言う。
ソーンの成功に対する称賛の声が、とくに気に障ったセックスワーカーもいる。ラッパーのRubi Roseをはじめとする有色人種のセレブリティがOnlyFansに参入した際はさんざん叩かれたからだ。「(Roseが参入した時は)みんな『イカサマ』と大騒ぎしたでしょ」と、OnlyFansのコンテンツクリエイターSavannah Soloは言う。「でもベラ・ソーンは『役作り』のために参入して、とんだ大儲けしてるのよ」。ソーンや他のセレブがOnlyFansで大儲けしたことが報道されれば、OnlyFansで知名度を上げるのは簡単だと勘違いされるてしまう、とセックスワーカーらは懸念している。だが実際はほとんどの場合、骨の折れる地道な作業だ。「みんな手早く稼げるとかなんとか思ってるけど、実際は違うの」と、セックスワーカーのAllie Eve Knoxも言う。「常にコミュニケーションして、常にオリジナルコンテンツを制作して、常に『最先端』でなくちゃいけないの」
OnlyFansのメインストリーム化に対する「怒り」とは?
OnlyFansのクリエイターは、カメラマン、マーケッター、ソーシャルマネージャー、会計士、技術サポートチームをすべて1人でこなさなくてはならない。その結果、かなり手間を要することもある。手っ取り早く稼ぐにはヌード画像をOnlyFansに掲載すればいい、という考えは、社会の女性蔑視や売春への偏見にもつながる。
OnlyFansのメインストリーム化に対する怒りは、競合への不安にもある程度原因があるだろう。同プラットフォームの人気があまりにも短期間で爆発したため、市場が飽和状態になってしまったと懸念するセックスワーカーも多い。パンデミック中に収入が減ったというセックスワーカーもいる。以前ローリングストーン誌が報じたように、OnlyFansがセックスワーカーを締め出しにかかっている問題もある。OnlyFansは否定しているが、一部のセックスワーカーの話では、同プラットフォームのマーケティングにも反映されているという。「OnlyFansはセックスワーカーをホストしていることを宣伝しなくなりました。フィットネストレーナーとか、新進気鋭のシェフとか、モデルとかばっかり」とSoloは言う。「私たちの稼ぎの20%をきっちりもらっていくくせに、私たちの存在は認めようとしないんです」
だが悲しいかな、セレブの参入をセックスワーカーが問題視する最大の理由は、彼らが売春につきものの社会批判やバッシングを受けることなく、プラットフォームの甘い汁を吸っていることだ。「セレブユーザーは私たちが味わっている偏見を一度も直面せずに済んでいる」。セックスワーカー兼ライターで、Peepshow Podcastの共同司会でもあるJessie Sageはこう言う。「私たちが耐え忍んでいる非難を味わわずして、私たちが育てたプラットフォームで儲けているのよ」
GoFundMeでセックスワーカー共済基金を立ち上げたFKA・ツイッグスのような有名人とは違い、ソーンがOnlyFansでの収益をセックスワーカー支援に充てると公言することはなかった。
「コンテンツにお金を払うことが今よりも当たり前になるかもしれない」
ソーンが同プラットフォームを表舞台に引き上げたことが、セックスワーカーに不利益だと全員が感じているわけではない。「セレブの参入で、OnlyFansも企業責任を強いられることになるでしょうね。技術的なトラブルとか、今抱えている問題のいくつかを修復しなくちゃいけなくなるでしょう」とKnox。彼女はソーンのOnlyFansでの成功をきっかけに、NSFWオンラインコンテンツから金を得ることへの偏見も薄れていくだろう、とも期待している。ひいてはセックスワーカーにも波及し、例えばセックスワーカーに厳しいことで有名なクレジットカード決済業者との取引も容易になるかもしれない。
「もしかしたら、コンテンツにお金を払うことが今よりも当たり前になるかもしれない」と彼女はいう。「『さてさて、ビキニ姿のベラには20ドル、こっちのビーチのトップレス写真には6ドル払おうか』ってね。セレブだろうと、セックスワーカーだろうと、他の誰であろうと、コンテンツでお金を稼ぐことには大賛成よ。たっぷり稼ぎましょう」
カーディ・Bやブラック・チャイナといったメインストリームのセレブリティの参入に加え、ビヨンセが「Savage」リミックスの中で触れたこともOnlyFansの人気に火をつけ、OnlyFansでアカウントを立ち上げて手っ取り早く稼ぐのが一種のトレンドになるほどだ。
そして今、OnlyFansの人気はさらに拍車がかかることになりそうだ。クリエイターとしては初めて、女優兼シンガーのベラ・ソーンがたった1日で100万ドル(約1億円)を売り上げたのだ。ソーンは限定コンテンツを1カ月20ドルで販売し、1週間足らずで200万ドルを稼いだ。
ソーンの思わぬ大成功のニュースは全米で話題になった。ソーシャルメディアでは大勢の人々が、彼女のコンテンツ見たさにOnlyFansに登録したとジョークを飛ばした。OnlyFansにとっても間違いなく格好の宣伝材料になった。ただし、ソーンの偉業を面白く思わない集団がいた。長年OnlyFansを愛用し、プラットフォームのメインストリーム化を複雑な気持ちで見守ってきたセックスワーカーたちだ。
公正を期すために言うと、ソーンは昨年アダルトサイト「Pornhub」向けにNSFW(職場での閲覧注意)映像作品を監督し、すでにアダルト業界は経験済みだ(彼女の代理人にコメント取材を依頼したが、返答はなかった)。セックスワーカーたちをいら立たせているのは、OnlyFansを始めたのはショーン・ベイカー監督(数々の賞を受賞した2015年の映画『タンジェリン』の監督)の次回作の役作りのためだった、というロサンゼルスタイムス紙のソーンの発言だ。「彼女が得る視点は、大半のOnlyFansのコンテンツクリエイターの経験とは似ても似つかないでしょうね」と、セックスワーカーのEllamourneは言う。
「彼女もきっと、私たちと同じ問題に直面するとことになるでしょうね――プライバシーに立ち入ってくるファンとか、詐欺とか。でも結局彼女はセレブだから、特権を行使するのよ。売春の非犯罪化に向けた対話を後押しする気がないなら、がっかりだわね」
ソーンの成功に対する称賛の声が、とくに気に障ったセックスワーカーもいる。ラッパーのRubi Roseをはじめとする有色人種のセレブリティがOnlyFansに参入した際はさんざん叩かれたからだ。「(Roseが参入した時は)みんな『イカサマ』と大騒ぎしたでしょ」と、OnlyFansのコンテンツクリエイターSavannah Soloは言う。「でもベラ・ソーンは『役作り』のために参入して、とんだ大儲けしてるのよ」。ソーンや他のセレブがOnlyFansで大儲けしたことが報道されれば、OnlyFansで知名度を上げるのは簡単だと勘違いされるてしまう、とセックスワーカーらは懸念している。だが実際はほとんどの場合、骨の折れる地道な作業だ。「みんな手早く稼げるとかなんとか思ってるけど、実際は違うの」と、セックスワーカーのAllie Eve Knoxも言う。「常にコミュニケーションして、常にオリジナルコンテンツを制作して、常に『最先端』でなくちゃいけないの」
OnlyFansのメインストリーム化に対する「怒り」とは?
OnlyFansのクリエイターは、カメラマン、マーケッター、ソーシャルマネージャー、会計士、技術サポートチームをすべて1人でこなさなくてはならない。その結果、かなり手間を要することもある。手っ取り早く稼ぐにはヌード画像をOnlyFansに掲載すればいい、という考えは、社会の女性蔑視や売春への偏見にもつながる。
「(売春反対とか)女性蔑視の意見に凝り固まった人たちが普段の会話でOnlyFansを話題にし始めると、今まで以上に私たちを攻撃する口実を社会全体に与えることになる」と、パフォーマーのJane Wildeも言う。
OnlyFansのメインストリーム化に対する怒りは、競合への不安にもある程度原因があるだろう。同プラットフォームの人気があまりにも短期間で爆発したため、市場が飽和状態になってしまったと懸念するセックスワーカーも多い。パンデミック中に収入が減ったというセックスワーカーもいる。以前ローリングストーン誌が報じたように、OnlyFansがセックスワーカーを締め出しにかかっている問題もある。OnlyFansは否定しているが、一部のセックスワーカーの話では、同プラットフォームのマーケティングにも反映されているという。「OnlyFansはセックスワーカーをホストしていることを宣伝しなくなりました。フィットネストレーナーとか、新進気鋭のシェフとか、モデルとかばっかり」とSoloは言う。「私たちの稼ぎの20%をきっちりもらっていくくせに、私たちの存在は認めようとしないんです」
だが悲しいかな、セレブの参入をセックスワーカーが問題視する最大の理由は、彼らが売春につきものの社会批判やバッシングを受けることなく、プラットフォームの甘い汁を吸っていることだ。「セレブユーザーは私たちが味わっている偏見を一度も直面せずに済んでいる」。セックスワーカー兼ライターで、Peepshow Podcastの共同司会でもあるJessie Sageはこう言う。「私たちが耐え忍んでいる非難を味わわずして、私たちが育てたプラットフォームで儲けているのよ」
GoFundMeでセックスワーカー共済基金を立ち上げたFKA・ツイッグスのような有名人とは違い、ソーンがOnlyFansでの収益をセックスワーカー支援に充てると公言することはなかった。
代わりに、自ら運営する製作会社とチャリティに充てるつもりだと述べた。「セレブがずけずけプラットフォームに乗り込んで、セックスワーカーの境遇には目もくれず、途方もない大金を稼ぐのを見てると、まさにしっぺ返しを食らった気分だわ」と、セックスワーカーでOnlyFansのコンテンツクリエイターAussie Rachelも言う。
「コンテンツにお金を払うことが今よりも当たり前になるかもしれない」
ソーンが同プラットフォームを表舞台に引き上げたことが、セックスワーカーに不利益だと全員が感じているわけではない。「セレブの参入で、OnlyFansも企業責任を強いられることになるでしょうね。技術的なトラブルとか、今抱えている問題のいくつかを修復しなくちゃいけなくなるでしょう」とKnox。彼女はソーンのOnlyFansでの成功をきっかけに、NSFWオンラインコンテンツから金を得ることへの偏見も薄れていくだろう、とも期待している。ひいてはセックスワーカーにも波及し、例えばセックスワーカーに厳しいことで有名なクレジットカード決済業者との取引も容易になるかもしれない。
「もしかしたら、コンテンツにお金を払うことが今よりも当たり前になるかもしれない」と彼女はいう。「『さてさて、ビキニ姿のベラには20ドル、こっちのビーチのトップレス写真には6ドル払おうか』ってね。セレブだろうと、セックスワーカーだろうと、他の誰であろうと、コンテンツでお金を稼ぐことには大賛成よ。たっぷり稼ぎましょう」
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