7月28日、TEAM SHACHIが初の無料無観客ライブ配信「TEAM SHACHI TOUR 2020~異空間~:Spectacle Streaming Show ”ZERO"」を開催した。

本来であれば、4月にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で披露されるはずだった内容をライブ配信用にブラッシュアップ。
非常によく練られたパフォーマンスと演出を画面の向こうの視聴者へ届けることに成功し、結果としてのべ5万5千人がこの一夜限りの、彼女たちのターニングポイントとなるショーを目撃することとなった。

今回、充実の2時間半を走りきった4人に「"ZERO"」を振り返ってもらったのだが、そこから伝わってきたのは、想像以上に強固なTEAM SHACHIとその仲間たちによる連帯感だった。

―まずは、7月28日に行われた、TEAM SHACHI初の無料無観客ライブ配信「TEAM SHACHI TOUR 2020~異空間~:Spectacle Streaming Show ”ZERO"」の感想から聞かせてください。

坂本遥奈:やっぱり、「ライブって楽しいな」と思いましたね。無観客は初めてだったので「どんな感じになるかな」というのはあったんですけど、ブラス民とバンド民とめちゃめちゃ豪華なゲストの方々と、一緒の方向に向かってパフォーマンスできたことが楽しかったです。

大黒柚姫:まず、楽しかったっていうのが一番で、おうち時間を経て、メンバーそれぞれがTEAM SHACHIに向き合う時間がいつもより増えたなかで、この大事なターニングポイントとなるライブを迎えたので、それぞれの想いがしっかり出せたんじゃないかと思うし、自分でも納得のいくライブになりました。

―ターニングポイントというのは感じましたか。

大黒:そうですね。もともとやってた春のツアーの東京公演を渋谷公会堂でやるはずで、それがTEAM SHACHIに改名して今までで一番大きな会場だったのでそこに力を入れてたんですけど、それが延期になったことで今回のような形になって。だから、ファンの方を待たせた長さの分だけ期待値も上がっていたと思うし、力が入った大事なライブでした。

―最初からこのライブはターニングポイントになると感じてたんですか。

咲良菜緒:もともと渋公が決まった段階で、「ここを山にしてツアーを組もう」って決めてたんです。
そこから延期が続いて、もともと予定していた形からは変わったんですけど、延期になった分、内容をより強化したというか。ターニングポイントにする、結果を残すっていうのはみんなが共通して持っていた意識だから、ちゃんと目指したとおりにできたんじゃないかと思ってます。

―では、この流れで菜緒さんの感想をお願いします。

咲良:ライブ自体5カ月ぶりで、無観客ライブも初めてだったので、緊張っていうよりは「合ってるかな??」って。

―ああ、なるほど。

咲良:正解がわからないから、本当に初心者の気持ちでした。自分たちがやってることに対する不安はないんですけど、「これって形として間違ってないよね?」っていう自問自答みたいなものがあって。でも、実際にライブを終えた今は「ホッとした」って感じかもしれない。心配ではあったけどたくさんのお客さんが画面越しで観てくれたし、コメントやTwitterでの反応や感想もよかったから、私たちの中で「無観客ライブ」の成功例のひとつとして残せたんじゃないかな。

―「合ってるかな?」という感覚をもうちょっと説明してもらえますか。

咲良 ライブDVD視聴や、今までのようなお客さんがいる状態でのライブ映像同時中継とも違って、あくまでも画面越しでみている人自身がメインだとお客さんに思ってもらいたかったんです。DVDや同時中継の視聴とかだとサブって感じがするじゃないですか。
あくまでも会場にいるお客さんがメインでそれを覗き見してるような感覚というか。そうじゃなくて、観てる人たちが「自分たちに届けてる」ってより感じられるようなものにしたくて。でも私自身が視聴者としてそれを体験したことがなかったから、「合ってるのかなあ? 伝わるかなあ?」っていう不安がちょっとありました。

―結果として大丈夫だったという。

咲良:そう! 「よかった~!」って。

ライブに至るまでの自粛期間、4人は何をしていたのか?

―帆華さんはどうですか。

秋本帆華:終わっちゃったのがもったいないって思えるライブができたと思います。3月からライブをやってなかったので、すべてをこの日に集中して、力や想いを注ぎ込むことができたから自分たちもすごく納得のいくライブができたし、スタッフさんたちも一緒に喜んでくれてたり、達成感を味わってくれたのがすごくうれしかったです。そういう感覚も久しぶりだったし、やっぱりライブが好きなんだなって思いましたね。ライブの内容に関しても、MCUさん、ヒダカトオルさんといったこれまでお世話になってきた方々と一緒に作り上げることができて、そういうところでもTEAM SHACHIの輪を感じられるライブができたと思います。

―不測の事態だったとはいえ、最初から完成形を思い描けていたというは大きいですね。ツアーがすべて終わったあとに無観客ライブをやろうという流れになっていたとしたらああはなってなかったかもしれない。
ここで集大成的なライブを配信で多くの人に見せられたというのは、今、TEAM SHACHIというグループを知ってもらうという点でもすごく意味があったと思います。このライブに至るまで、自粛期間はどんなことをしていたんですか。

秋本:私は「体力を落とさないぞ!」って思ってました。こんなにライブをしない期間は9年間一度もなかったので、体力を落とさないためにランニングをしてました。

咲良:しかも、ちゃんと”ランニングの距離”なんですよ。

秋本:そう、「10キロ走るまで帰らない」っていうのをやってたんですけど、2回ぐらい「距離を見ないで走ってみて疲れたら止める」っていうのをやってみたら21キロ以上も走ってて。

坂本:こわいよ!

―軽くハーフマラソンじゃないですか!

秋本:これまでで今が一番体力ついてるかもしれない。

咲良:本当にすごいわ。私がやったら500メートルぐらいだと思う。

秋本:止めるの早い!(笑)

―ほかの3人はどうですか。

大黒:私は、今回の新曲(8月29日に配信リリースされた「SURVIVOR SURVIVOR / MAMA」)がメンバーそれぞれの個性に合わせたパート割になってて、衣装的にも頑張らないと追いつけないぐらい大人な感じだったので、毎日3時間は全身鏡と向き合ってました。

秋本:ええ~!?

咲良:すごい!

大黒:自分のパートをどう見せるかを意識して、お風呂入る前に1時間半、お風呂入った後に1時間半って感じでやってました。


―毎日ってどれぐらいの期間ですか。

大黒:2カ月ぐらい。

―じゃあ、180時間? 

咲良:180時間も鏡の前に立ってたってすごくない!?

大黒:うちに全身鏡がたくさんあって、最初は家族に心配されましたけど(笑)、そのうち放っとかれました。

―具体的には何をやるんですか。

大黒:自分のいい角度を探るんです。それをやりすぎて病みそうでした……。

咲良:鏡見すぎて?(笑)。やってるうちに「お前、誰やねん!」ってなってくるよね(笑)。

大黒:何が正解かわからなくて……。

秋本:でも、配信の映像見たらめっちゃキレイだったし、見せ方がすごくステキだった。

咲良:その努力があったからだよ。

大黒:よかった~。
うれしい。

咲良:私はそういうストイックなこと何もしてなかったかもしれない(笑)。何やってたんだろう? 最初の2週間ぐらいは昼夜逆転して、1日1食になってしまったから痩せてしまって、「あ、これはダメだ!」と思ってそれを正して……なんか、話すのが恥ずかしいぐらいなんもやってない!(笑)

大黒:ブログの更新毎日してたじゃん。

咲良:あ、やってたわ!

大黒:ブログを更新する立場からするとめちゃすごいこと。あれは本当にできない!

咲良:そうだ、2カ月毎日更新してた! 忘れてた! 発表することがライブの中止とか延期しかなくて、タフ民(TEAM SHACHIファンの総称)や、待っててくれているみんなのモチベーションが下がってしまうんじゃないかって心配で……、だからといって他のSNSを毎日更新しても載せられる内容や情報が省略されてしまう気がして、見てる方達にちゃんと私自身や私の言葉を届けたいなって。ブログなら言い回しがダラダラしてたとしてもそれがブログの醍醐味だし、ありのままを届けられるからいいかなと思って書いてました。でも実際毎日更新って外にも出れなかったから書くことがなくて(笑)、今日は何を書こうってめっちゃ考えてたかも。だからあれは本当に私の日記!

大黒:読めば菜緒の一日がわかる(笑)。

咲良:そう、「こいつ、なんもやってないな」って思われちゃうかも(笑)。

「中止・延期のお知らせ以外にも何か伝えないと」

―ハルさんは?

坂本:私は……踊ってました。

大黒:楽しそう!(笑)

坂本:私はTEAM SHACHIをやる前からダンスを習っていて、時間が空くと自然と全身鏡の前に立って踊ってて。でも、1人だと全然楽しくないんですよ。
ダンススクールだといろんな子とお互い高め合って踊るのが楽しいし、TEAM SHACHIでもこの4人とブラス民と一緒に踊ることが楽しいんです。そのことに気がついたので、お母さんにフリを教えてました。

全員:あはははは!

秋本:い~ね~!

大黒:めっちゃおもろい!

坂本:新曲は自粛期間が始まる前に振り落としをしてたんですけど、いつもとは違って大人っぽいフリで、サビもセクシーな感じなのでそういうのを研究しつつ、ママに「MAMA」のフリを教えてました(笑)。それぐらい踊りたいっていう欲がありましたね。

咲良:ヤバいね! 親っていうこと隠してSNSで配信してほしい(笑)。

―ママが「MAMA」を踊るって最高じゃないですか。

坂本:あと、チームとしては「おうち時間LIVE」をYouTubeで配信してました。ライブは実際にできないけど、映像を通じてライブを届けるっていう。最初は本当に未知の世界だったんですけど、それぞれがカメラとライトを使って試行錯誤しながら撮影して、「MVみたいなクオリティだね」って言ってくださるファンの方もいたので、そういうものも形に残せたことはよかったと思います。

―そういった様々な努力をしつつ、思い悩んだこともあったと思うんですが、どうでしたか。

大黒:ポジティブなほうに考えてました。「おうち時間LIVE」もそうだけど、普段ならなかなかやらないことだし、ほかにも自粛期間だからこそできたコンテンツがいっぱいあるんですよ。なので、マイナスばかりではないなと思いました。

―ポジティブですね。

咲良:最初はタフ民(TEAM SHACHIファンの総称)をすごく落ちこませてしまったなって思ってた。自分たちも「これから何をやろう……」って不安に思ったけどそれはタフ民も同じで、ブログにも「会えなくなっちゃった」とか「このために頑張ってたのに」っていうコメントがたくさんあったから、「とりあえず、タフ民の気持ちのケアしなきゃ!」ってことで最初はそれに必死だった! ブログをやってるとコメントの雰囲気でみんなの気持ちの変化がよくわかるんですよ。

大黒:わかりやすかったよね。

咲良:そうやって自分のブログを通してタフ民の気持ちが知れたり、思いをコメントに書き込んでくれてコミュニケーションが取れたのはよかったと思う。今はだいぶこの状況に慣れてきたとは思うけど、当初はみんなの不安な気持ちがすごかったから、できるだけフォローしたい!と思ってた気がする。

―それをできる強さが菜緒さんにあったということですよね。

咲良:だって、タフ民がいなくなったら私たちが悲しい思いをするから。中止とか延期とかのお知らせ以外にも何か伝えないと、いくら好きだとしてもその気持ちを継続できないんじゃないかと思って……、タフ民がいなくなったら私たちもいなくなっちゃうから「一緒にがんばろうよ!」っていう気持ちだったし、カウンセリングみたいな感じでした(笑)。タフ民も最初は「こんなに大変ななか、ブログ更新してくれて……これが生きがいだわ!」って書いてくれてたんだけど、だんだんコメントが明るくなってきたから、「あ、もう元気なんだね!」って思った。

大黒:よかった(笑)。

TEAM SHACHIにとって「未知」のライブ

―ところで、今回のライブっていつから準備してたものなんですか。

大黒:渋谷公会堂をターニングポイントにしようっていう話はツアーが始まる前からしていたので去年からですね。

―無観客という未知のライブをどう捉えていましたか。

坂本:言ってしまえば、ゲネプロと同じような感覚じゃないですか。目の前にお客さんがいなくて、スタッフさんだけがいるっていう。でも、演出家さんとかダンスの先生としゃべってるときに、配信ならではのこと……会場を全部使ったり、映像でしかライブが見られない状況を上手く使ってやれることをやろうっていう考え方に統一して進めていました。

大黒:表情もアップが多いので、普段なら推しの人を見がちだけど、今回はほかのメンバーのことも見られるいい機会なので、「みんなで頑張ろう!」って感じでした。不安要素はあまりなかったです。

―強いですね!

大黒:はい、シャチ(TEAM SHACHI)なんで(笑)。

―あはは!(笑)。でも、たしかにやりづらそうな感じはしなかったし、しっかりこちらにも「届いた」んですよね。今の話を聞いてその理由がわかった気がします。それにしても、オープニングから11曲連続とかやってませんでしたか?

秋本:あ、そっか、最初は11曲連続だったのか。全然MCがなかったもんね。

咲良:改名してからは特にそうで、今までは「私たち、10曲も連続でやってる! すごいじゃーん!」って言ってたんですけど、今は演出とか曲のつなぎとか、今回は生バンドだったからっていうのもあって、もはやそういう感覚もなくなっちゃって、曲がつながってることが当たり前になってるから、11曲連続っていうのも今初めて認識しました(笑)。

―そうなんだ!

咲良:今までのライブは熱量だったりパワーをぶつけるっていうやり方だったから、途中で水飲まないと続けられなかったけど、今はいい意味でぶつけるだけじゃない表現を取り入れることを意識するようになったんですよ。もともとはちゃんと水を飲むタイミングも意識してて。「(セットリストの)こことここは絶対に水飲みたいからつなげないで!」みたいに。

大黒:言ってた!

秋本:セトリに「水」って書いてたもんね。

咲良:でも、今回はそれが一回もなくて、どこで水飲んだのかも覚えてない(笑)。

大黒:飲んだっけ?(笑)

坂本:柚姫がピアノを弾いたときも、私たちはいったん袖にはけて、階段の上から出てくるっていう流れだったんですけど、裏でもずっと歩いてたから気づいたらもう階段を登ってたんですよ。

―え、じゃあ、あそこでも水は飲んでなかったんですか。

坂本:ちょっとは飲んでるんですけど、止まってなかったです。

咲良:マラソンの給水みたいな感じ!

感覚的に「抜く」ことを覚えた強み

―ああ、わかりやすい。それって無駄な力が抜けたから可能になったことなんですかね。

咲良 それもあると思います。いい意味で力の抜き方を覚えたというか。自分が目立つ場所を意識してそれぞれが力を発揮することによって曲が成立するわけで、それと同じように抜く場所をそれぞれが理解してできるようになったんだと思う。

秋本 長年やってると自分に視線が集まるタイミングがわかってくるし、「今、カメラで抜かれてるんだろうな」っていうのも感覚的にわかってきてるよね。

咲良 そうそう。特に今回の配信も「絶対ここ映るでしょ」みたいなシーンがあって、それ以外の場所だと……これはニュアンスを伝えるのが難しいんですけど、力を抜くというよりも”精神的にちょっと抜く”という感じなんですよね。そういう一瞬の間をそれぞれがそれぞれのタイミングでちょっとずつ入れて。誰かひとりが「水飲みたい」ってなったら絶対にその時間をつくらなきゃいけないけど、そういう人がいないってことはそれぞれが同じ感覚で”抜く間”をつくれてるんだと思います。

―「あれ? この子、そろそろ水飲みたいのかな?」みたいにわかるものなんですか。

咲良:「この人、水必要だな」っていうのはイヤモニでわかる! 

大黒:うん、声がね。

咲良:声が枯れてるっていうこと以外にも、「喉、リセットしたほうがいいな」っていうのはわかってて、当然それは本人もわかってるから、アイコンタクトが自然と増えて、「(水を飲みに)いくね!」みたいなやり取りがあるんですよ。これは今に始まったことじゃないけど。

坂本:ライブ中のアイコンタクトは水以外でも自然と身についたよね。「ちょっと歌詞ヤバい!」とか(笑)。あとは、「靴ヒモ!」とか。

秋本:靴ヒモ、あるある!

坂本:あくまでも自分が目立たないタイミングでパッと結び直したり。

秋本:本当にチームだよね。チームスポーツです!

咲良:単純に「楽しいね」っていうアイコンタクトもあるけど、なんか種類があるよね!

坂本:ある! 「みんなの目に炎が見える」みたいなときもあるし(笑)。

秋本:「やったるぜ!」みたいなのはあるよね。

大黒:リハは楽しくアイコンタクトしながらやってたのに、本番になって違うと「何かあったのかな?」って思ったり。

―今回のライブでもそういう場面はあったんですか。

咲良:私、誰とも合わせなかった気がする。私は普段からそんなに合わせないかもしれない……まあ、そんなに送られてもこないんだけど。

秋本:おいっ!(笑)

咲良:わかんないわかんない! 気づいてないだけかもしれないけど!

―今、いい話をしてたのに(笑)。

咲良:でも、もともとアイコンタクトはあまりしないタイプなんですよ。するときは危機的状況かな。

大黒:そう! だから菜緒はめっちゃわかりやすい。菜緒にはリハのときに送って気づかれなかったら本番では止めてます!(笑)

全員:(爆笑)

秋本:一緒! めっちゃわかる!(笑)

大黒:新曲のときは大抵見てくれないんですよ、いっぱいいっぱいだから。

咲良:見ない見ない(笑)。でも、私の次にハルが少ないんじゃない?

坂本:けっこう見るよ。

秋本:ハルはね、自分のパートを歌いながらでも見てくるから(笑)。

坂本:私はけっこう遊んじゃう。でも、菜緒は目が合わなくても何考えてるかわかるじゃん? 今回のライブはいい感じだった。いっぱいいっぱい感がなかった。

咲良:ホント? 

大黒:菜緒は煽りの声でも感情がわかりやすい。

秋本:めっちゃわかるよね~! こないだも「START」のとき、カッコよかった!

―今回はバンド民やブラス民との一体感がすごかったですね。

咲良:うれしい。バンド民はやばかったね。

大黒:カッコよかった!

秋本:バンド民も本来は4月でお別れだったのに期間が延びて。だから余計にチーム感が出たんだと思います。TEAM SHACHIに改名してやりたかった音楽をこのライブで表現できたと思います。

坂本:ラウドでポップでブラスっていうコンセプトを軸にしてやっていくことは改名したときに話してはいたんですけど、リハで初めてバンドの演奏を聴いたときに、「うわぁ、これがラウドだ!」って(笑)。

新曲「SURVIVOR SURVIVOR / MAMA」について

―あれだけ大人数の演者がいて、あれだけのまとまりを出すのってかなり大変だと思うんですよね。4人が4人だけのパフォーマンスに集中したら絶対にああはならないだろうし。

咲良:でも、今回は「ここをこうしたい」っていう説明を特にすることがなくて。でも、この場面ではここをフィーチャーするべきだっていう意思疎通は自然とできてたと思います。お互いのことがわかってる感じがしたし、相性がすごくよかったと思う。

―8月29日に配信リリースされた新曲「SURVIVOR SURVIVOR / MAMA」もオープニングとエンディングでそれぞれ披露されましたね。どういう曲なのか改めて解説してもらえますか。

咲良:「SURVIVOR SURVIVOR」はどういう新曲を渋公でやりたいか考えたときに、動物のシャチはメスが群れを率いるので、私たちもタフ民やいろんな人を引き連れていきたいっていうことで、強い女性を意識してつくった歌詞です。短い曲なんですけど強い言葉ばかりが並んでる「引っ張ってくソング」です(笑)。

―「引っ張ってくソング」(笑)。なんかダサいなあ。

秋本:でも、おしゃれな曲だよね。

咲良:どちらも今までTEAM SHACHIにはなかったダンスミュージックの要素を入れていて。ラウドとポップとブラスを軸にいろんなジャンルの音楽を取り入れて、飲み込んでいきたいっていう感覚です。去年は「Rock Away」でパンクをTEAM SHACHIの色に染めたし、「Rocket Queen feat. MCU」ではゲーム音楽をTEAM SHACHIの色に染めて。

―ああ、なるほど。「MAMA」はいかがでしょう。

坂本:「MAMA」はなんだろう? お母さんみたいな愛で包み込む……ソング!

全員:あはは!

秋本:言いたかったんだねぇ(笑)。

咲良:ママって言ってるけど、これは子供の立場からのママではないっていうのが重要で、ママからの自立宣言でもあるよね。

大黒:そうだね。違う方向性ではあるけど、こ2曲は女性の強さを表現するという面では通ずるものがあるし、TEAM SHACHIらしい曲だと思います。

秋本:2曲ともラップパートをMCUさんが作詞してくださって、ラップといえば坂本遥奈! ハルのラップがめっちゃカッコいいです。

―2曲とも作曲は海外の作家さんによるものなんですね。

咲良:そうなんですよ。だから、私たちも仮歌の段階で「こんな仮歌、もらったことない!」って感じで。歌詞が英語で、ハモリ以外にもコーラスとかガヤがすんごいいっぱい入ってて。洋楽と日本の音楽の違いがこんなにあるんだっていうのがその時点でよくわかりました。でも、全然違う国の音やメロディを入れることはタフ民にとっても新鮮だろうし、こういう洋楽っぽい心地よさはこれからもいっぱい取り入れていきたいです。

―ライブの話に戻りますが、今回の見どころのひとつとして柚姫さんのピアノが挙げられますよね。柚姫さんお手元のアップから始まるっていう演出は配信ならではでした。「これ、誰? まさか? まさか?」と期待させたところで……。

咲良:ゆーずきー!

大黒:それ、全然違う人だったらどうするの?(笑)。

秋本:それはヤバい(笑)。

―溜めて溜めてゲストミュージシャンっていう(笑)。今回、延期になったことでピアノの練習時間は長くなったわけですよね。

大黒:時間はたっぷりあったのでよかったです。

―しかも弾き語りで。

秋本:頑張ったね、ホントに。本番が一番よかったもん。

大黒:うれしい。それまでは緊張しちゃってダメだったんですよ。

―そうだったんだ!

大黒:本番も緊張して震えちゃったんですけど、曲の途中で3人の姿が視界に入ってきてからはめちゃ安心して、そこからは普通に弾けるようになりました。あれはひとりだったらできなかったですね。メンバーがいてくれたからできました。

―そして、ハルさんのプロジェクションマッピングダンスもカッコよかったですね。

坂本:ありがとうございます! 実際に映像と合わせたのはリハーサルと本番の2回だけで、リハーサルで初めて合わせたとき、イヤモニをしっかり付けてたにもかかわらず、メンバーの「遥奈~っ! カッコいい~っ!」ってでっかい声で叫んでるのが聞こえてきて。自分では自分の姿が見えてないからわからなかったけど、メンバーがけっこうなテンションで叫んでくれたから、「あ、私、カッコいいんだ!」って真に受けちゃって。

秋本:そこでわかったの?(笑)

大黒:最初は普通に観てたんですけど、あまりにもすごすぎて声が出ちゃって、しかも一度「カッコいい」って言ったら止まらなくって。

坂本:しかも、普段は「ハル」って呼ぶのに、みんな舞い上がってるから「遥奈~っ!」って(笑)。でも、メンバーのおかげで本番もノリノリでできました。あれがなかったら「合ってるかな~?」ってビクビクしながらやってたと思います。

咲良:めちゃいい感じだった。

「配信でも楽しませることや、”熱量”を伝えることはできる」

―観ている側からは見えないところで、メンバー同士の支え合いがあるんですねえ。ところで、披露する曲はどうやって決めたんですか。

咲良 「バンド民にはこういう曲でこういう音を出してほしい」っていうところから曲が決まることもありました。実際、「ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」をやったのはそういう理由だったし、「眠れないナイ NIGHT!」のアレンジもぜひやってほしかったっていうのもあったし。内容が盛りだくさん過ぎて、最初はまとまると思わなかったです。

―あと、何気に大事なポイントだったのは、最後のMCで「武道館でやりたい」と宣言したことで。

大黒:あの言葉は、私たちが今後どうなっていきたいかっていうことをみんなで話し合った上で入れました。

―発言自体は柚姫さんによるものだったけど、4人の意志を代表したものだったんですね。さて、この先はまだ見えないこともたくさんありますけど、今後の目標はありますか。

咲良:曲を聴いたら、「あ、TEAM SHACHIっぽい」って言ってもらいたいっていうのはあります。きっと、これからの時代は配信ツールを駆使したライブやコンテンツが増えると思うんですけど、形は変わったけどTEAM SHACHIってこういう感じなんだっていう、「こういう感じ」の部分をしっかり凝縮できるようなことを続けていくのがTEAM SHACHIを好きになってもらう一番の近道だと思うし、武道館でやるために一番大事なことだと思ってます。

―そうですね。

咲良:みんなすごく考えるようになったんですよ。「これはこっちのほうがいいと思う」みたいに意見を出し合うことが本当に増えたので、環境が変わったからこそ視点を変えて、考えて、っていうことを続けてたら武道館も夢じゃない!って思っちゃう。あと、柚姫が「早く見つけてほしい」って言ってたよね(笑)

大黒:ホント! なんで私たちはまだ見つかってないんだ!って。

咲良:でも、見つけてもらうためには目立たなきゃいけないからね。目立つために第一印象を濃くすること……第一印象磨きだね!(笑)

大黒:そう!

―このライブの前後で何か変わりましたか。

秋本:配信ライブに対して自信がついたかもしれない。

大黒:そうだね!

咲良:「次もやれる!」って思いました。「配信ライブ、別に向いてなくないわ」って。

秋本:これまでは現地での”熱量”を大事にするグループだったけど、配信でも楽しませることや、”熱量”を伝えることはできるし、自分たちも楽しめると思ったら、もっといろいろアイデアが湧いてくると思います。

―でも、初めての配信ライブでこれだけのことをやってしまうと、今後このハードルを越えるのは大変ですね。

咲良:そうなんですよ~っ!

坂本:それは本当にそう!

秋本:でも、楽しみだね。

―これが基準になるってある意味、幸せなことではありますよね。次に配信ライブをやるときに「これって、あのときよりもいいものなのかな?」っていう話し合いができるわけで。予定どおり渋公公演ができていたらどうだったかはわからないですけど、結果オーライというか、「これでよかったな」と思います。

大黒:来る予定だった人は残念だったかもしれないけど、それ以上のものを見せることができたと思うのでよかったと思います。

坂本:今回は合計で約5万5千人の方が観てくださったので、これはこれで本当によかったです。

咲良:来られない方に観てもらうっていうのが配信の一番の醍醐味じゃないですか。だから、もし有観客のライブをやれるようになったときに、配信ライブを観てくれた人の数を増やすことで「TEAM SHACHIのライブを観に行きたい」って思う人の数も増えるはずなんですよ。それは有観客でライブができるようになったときに絶対に意味のあるものになると思うので、無観客配信を継続していくのは有効なんだろうなって思います。

―ところで、このサイトでやってる菜緒さんの連載ってほかの3人は読んでくれてるんですか。

3人:(急にうつむく)

坂本:存じ上げてはいます……!

―あはは! 読んでないんですね!

秋本:でも、菜緒の趣味ってすごいよね! ゴリゴリの奥のほうまで知ってるのがすごい。

大黒:菜緒は最初、音楽を全然聴かない子だったから、「なんかすごい子になったな……」って(笑)。メタルとかそんな激しい音楽を聴くような子じゃなかった……っていうか、「好きな歌手いた?」っていうレベルだった子が今や海外のアーティストさんまでめちゃ知ってるのがすごい。

―3人からすると一気に開花したって感じなんですね。

秋本:そう思います。

坂本:そういう音楽を好きになってから、ライブとか歌に対する考え方が変わっていってるが見ててもわかるので、菜緒にいい影響を与えてると思います。

秋本:ライブの演出に関しても、「こういうことをやってる人たちがいたんだけど、私たちもできないの?」みたいなことを言ってくれたり。

坂本:そうやって打ち合わせでも率先して意見を出してくれたりするので、頼もしいです。

―なるほど。それじゃあ、菜緒さん、これからも連載がんばりましょうか。

咲良:お願いします!

3人:うちの咲良をお願いします!

TEAM SHACHIが語る、コロナ禍と配信ライブ経て手に入れた「自信」と「希望」

TEAM SHACHI(左から坂本遥奈、秋本帆華、咲良菜緒、大黒柚姫)

<INFORMATION>

「SURVIVOR SURVIVOR / MAMA」
TEAM  SHACHI
ワーナーミュージック・ジャパン
サブスクリプション音楽配信ストリーミングサービスで配信中

『TEAM SHACHI TOUR 2020 ~異空間~:Spectacle Streaming Show ”ZERO”』
TEAM  SHACHI
ワーナーミュージック・ジャパン
10月21日発売

https://wmg.jp/team-shachi/
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