今回の配信ライブはAK-69の地元である愛知県・名古屋の名古屋城にてライブパフォーマンスを配信。
YouTubeで公開されているトレーラー映像の中で「俺にしかできない名古屋城でのライブで、AK-69史上、ヒップホップ史上、そして配信ライブ史上になかった金字塔を打ち立てる。この名古屋城をバックに誰も見たことのない絵を皆に届けたい」と語った通り前代未聞のスケールを示し、彼のアーティスト人生のストーリーが垣間見えたライブとなった。以下に、ライブレポートを掲載する。
明らかに規格外。生活が激変した混迷の時代に、シーンを代表するミュージシャンとして何ができるか、その答えを採算度外視で実現した配信ライブが「LIVE:live from NAGOYA」である。冒頭で語られる「誰もが苦境の中に立たされている。俺達はエンターテイメントとしてみんなを楽しませなきゃいけない、勇気づけなきゃいけない。AK-69の本質をこのマイクで届けるよ」という宣言が、この日のライブのすべてを言い表している。未曾有の危機に晒されている状況だからこそ、臆することなくアーティストとしての役割を全うする。そんなAK-69のエンターテイナーとしての矜持をまざまざと見せつけられた1時間半。豪華な客演、楽曲の持つ世界観を引き立てる演出、そして何より意志のこもったメッセージを歌いラップし続ける気迫、まさにAK-69にしかできない「超配信ライブ」である。
本ライブが生配信ではなく、収録ライブという形式になったのも必然だったのだろう。大勢の観客を入れた生のライブができない中、どんな方法で臨場感と完成度を兼ね備えた表現を見せるられるか、その答えがこのストーリーテリングされたショーである。音質やカメラワークにもこだわり、CGも駆使して作られれたアートとしての配信ライブを追及したとも言えるだろう。
本編はコロナ禍のニュース映像をジャックするように、ヘリの中にいるAK-69に切り替わるところから始まる。連日繰り返されるニュースを一瞬見せることで、ここがあくまでも現実と地続きの場所であるこそを知らせ、なおかつそれを強引に切り替えることで、リスナーに非日常を引きずり込もうという意図から作られた演出かもしれない。
夜の闇を舞うヘリの中から語られるiPhoneで録ったメッセージ、ヘリからロールスロイスに乗り換えラップする姿からは、誰もやってないライブを見せようという挑戦的な姿勢が伺える。のっけから平時のライブではできないアイデアの応酬。間違いなく、本映像の根幹にあるのは、これまでの通りのライブができないからこそ、今しかできないことをやろうというチャレンジな意志。すなわち「常に挑戦し続ける」というAK-69の哲学である。

セットリストの中心を担うアルバム『LIVE : live』の楽曲は、AK-69が抱く野望とアティチュード、その背景にある愛が綴られた、いわば彼の生き様を詰め込んだ作品である。そしてそれは、やはりライブでこそ完成するものなのだろう。血の通ったメッセージがどこまでも生々しく伝わってくる。
<地方馬がダービーを制する>という彼の表現の源泉をラップする「IRON HORSE」から、「Ding Ding Dong ~心の鐘~」を挟み、同郷の新鋭・ヤングトウカイテイオーこと¥ellow Bucksを招いた「Bussinʼ」へ。いきなり目が離せない超クールなパフォーマンスが続く。とにかく全編を通してフィーチャリング・アーティストとの共演が悉く凄すぎた。「Bussinʼ」から畳み込むように、MC TYSON、SWAY、R-指定の3人でリレーする「Speedinʼ」へ。中盤のIOを迎えたクールなナンバー「B-Boy Stance」や、ZONEを迎えて死生観を歌う「If I Die」まで、いずれも目が覚めるようなハイライトである。
「自分が現役でいることで後輩のラッパー達に良いバトンを渡せる」ーーそれは先日取材した際の彼自身の言葉だが、「If I Die」を歌い終えた後のZONEが口にした「光栄です」という言葉からは、AK-69のキャリアの重みが透けて見えた気がした。天井知らずの野心家でありながら、決して自身の活動だけを見ているわけではない。彼のラップシーンへの眼差しが多面的に表現されているようにも思う。

一転、フレンドリーな空気に変わったのが、”69Homies”(AK-69のファンの呼称)の女性ファンとZOOMで繋がった時。
攻撃的な本性を見せる「FXXk off」、「Ha?」という殺気立った2曲から、”Season”と題された本編のクライマックスへ。「Hard To Remember ‒Season0.5-」、「See You Again ‒Season1-」、「I Donʼt Wanna Know ‒Season2-」、「ハレルヤ ‒The Final Season-」の4曲は、愛した女性への美しくも儚い記憶が歌われていく、大きなスケールを持ったアンセミックな楽曲達だ。
それにしても、人生の悲喜こもごもを表現するようなダイナミックなライブである。思えばAK-69の本質、「LIVE(ライブ)」と「live(人生)」を描いた『LIVE : live』を中心にセットリストを組んでいる以上、彼の人生のストーリーが提示されることは必至だったのだ。中でもこの4曲は、飽くなき向上心で駆け抜けていくアーティストとしての顔とはまた違う、親愛なる人へ向ける表情が垣間見える楽曲だと思う。そして、自身の信念を次代に託すことを綴った「If I Die」、苦境に立たされようとも、何度でも立ち上がる再起を誓う「START IT AGAIN」でフィナーレへ。「命懸けでライブをしている」と語る男による、生き様をそのまま記したドキュメンタリーのようなライブである。

最後は”69Homies”会員だけが見ることのできるアンコールへ。この日初めてサングラスを外し、素顔で届けた「And I Love You So」と「Flying B」。
AK-69が作ってきた音楽は、その時々で変化してきた。だが、彼が歌ってきたことは不変である。それはつまり、20年近い年月の中、彼の信念が揺るがなかったということである。また、同時に彼の野心がまだ燃えているということに他ならないだろう。この日「IRON HORSE」を歌う前に放たれた、「何回も言ったこのセリフ。でも言い飽きないんだ。『いつかまくってやるからな!』」というセリフも象徴的だ。
彼は本ライブに関して、「全国の城史上一番カッコよく城を背負ったと思う」と豪語していたが、伊達や酔狂ではないのだ。AK-69はエンターテイナーとして、どんな時代になっても一番過激で、なおかつ他の誰にもできない方法で勝負する。安易な慰めを語るのではなく、格闘する姿を晒すことでリスナーを鼓舞していく。「俺は挑戦し続ける、だからお前らも戦え」、きっと彼が伝えたいメッセージはそれだろう。
<リリース情報>

AK-69
『LIVE : live』
配信日:2020年8月2日(日)
CD発売:2020年8月5日(水)
【通常盤】(CD)2800円(税抜)
【初回盤】(CD+DVD)3800(税抜)
=収録内容=
1. LIVE : live
2. No Limit ~この映画のあらすじなら知ってる~
3. Bussin feat. ¥ellow Bucks
4. Speedin feat. MC TYSON, SWAY, R-指定
5. B-Boy Stance feat. IO
6. Guest List
7. Skit -Toast To That-
8. もしよければ
9. Ha?
10. Hard To Remember -Season 0.5-
11. See You Again -Season 1-
12. I Dont Wanna Know -Season 2-
13. ハレルヤ -The Final Season-
14. Skit -Procession-
15. If I Die feat. ZORN
16. Hard To Remember -Season0.5- Remix feat. Eric Bellinger ※BONUS TRACK
・DVD内容
No Limit ~この映画のあらすじなら知ってる~
Bussin feat. ¥ellow Bucks
Speedin feat. MC TYSON, SWAY, R-指定
Guest List
Hard To Remember -Season0.5-
See You Again -Season 1-
I Dont Wanna Know -Season 2-
ハレルヤ -The Final Season-
If I Die feat. ZORN
Lonely Lion feat. 清水翔太
You Mine feat. t-Ace
Making Movie
Official HP:https://ak-69.jp/