追悼エディ・ヴァン・ヘイレン。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリスト、トム・モレロは高校時代に初めて聴いて以来、ヴァン・ヘイレンを最大の影響力の一つと公言してきた。
「もし宇宙人が降りてきて、地球の運命を決めるためにバンド同士の戦いを挑んできたとしたら、初期のヴァン・ヘイレンをチャンピオンに推すと思うよ」とモレロは2013年に語っている。故エディ・ヴァン・ヘイレンのプレイから学んだこと、ヴァン・ヘイレンのライブを初めて見た時の衝撃、そして息子とバンドの音楽を共有した時の感動的なエピソードについて語ってくれた。

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エディ・ヴァン・ヘイレンは、史上最も偉大で、最も独創的で、真に先見の明のあるミュージシャンの一人だった。彼はロックンロールの歴史において、他に類を見ない巨人だ。そして、ギタリストのラシュモア山では、彼は首から上がポールポジションになっている。

彼が実践したギターの再解釈は、神から授かったインスピレーションの聖書だった。彼は何世代にもわたるギタリストたちにインスピレーションを与えてくれた。彼の卓越した音楽性のおかげで、ロックというジャンルをより深く楽しむことができただけでなく、エレキギターで今までの常識を覆してくれた。俺のような若造が、エディ・ヴァン・ヘイレン以前には考えられなかったような楽器の可能性を探り始めるための種を蒔いてくれたんだ。

ギターに対する献身的な姿勢

俺が最初に聴いたのはデビューアルバム(『炎の導火線』)だった。シカゴのラジオでは「悪魔のハイウェイ(Runnin with the Devil)」「暗闇の爆撃(Eruption)」「ユー・リアリー・ガット・ミー」が流れていた。当時はYouTubeのリファレンスもなかったから、何が起こっているのかもわかりやしない。


エディ・ヴァン・ヘイレンはとてつもない即興演奏家で、ギターの新しい奏法をいくつも生み出してきたが、エレキギターで可能なことのリアリティが本当に引き裂かれた瞬間は「暗闇の爆撃」だった。ジミ・ヘンドリックスは言わずもがな、彼以前(60年代)のスキッフル・バンドやホワイト・ブルース・ギタリストたちも素晴らしかった。その後、サイケデリックな美しさとパワーがすべてを開放した。その間にも偉大で革新的なギタリストたちはいたけど、エディ・ヴァン・ヘイレンによって全く新しい時代に突入したんだ。なぜなら、彼に影響を受けた人たちのほとんどが……エディ・ヴァン・ヘイレンは、こんな有名な発言を残していたと思う。「俺は革新的な楽器奏法によってストーリーを語っている。俺の真似をしている連中がコピーしているとき、あいつらはジョークを口にしているんだ」というね(笑)。確かにそう感じたよ。誰かがライトハンド奏法をやってると「先人がいるんだから、君は下がったほうがいいんじゃないか」と思ってしまう。

1978年、ブラック・サバスは前座のヴァン・ヘイレンを連れてツアーを回った。エディ・ヴァン・ヘイレンがやりたい放題に暴れたあと、ステージから降りてきたデイヴィッド・リー・ロスはこう言った。「次はあなたたちの出番です」。
どんなバンドもこれより酷い言葉を聞いたことはないだろう(笑)。そこで何もかも決まったんだ。

俺が(ギターの)演奏を始めたのはちょっと遅かったんだ。エディ・ヴァン・ヘイレンは、ローリング・ストーンズのカタログをかき回すだけでは到達できない、新しいレベルの志を与えてくれた。近づくためには努力が必要だった! たくさん練習したよ。 ギターのために時間を費やすのは、俺にとって非常に刺激的だった。

俺はエディ・ヴァン・ヘイレンのソロやそれ以外を習得しようと励んだ。彼のギターに対する献身的な姿勢は、クラシックの音楽家に通じるものを感じさせた。「ギターを低めに構えて、ドラッグをやって、髪を切って……」という類のものではない。エディ・ヴァン・ヘイレンが最高レベルのミュージシャンズ・ミュージシャンであることが、俺にとって本当に魅力的だった。ロックのいちファンとして、それを心から誇りに思っていた。

彼はジャズだろうとクラシックだろうと、地球上のどんなミュージシャンでもつなぎ合わせることができる。
即興演奏のスキルとロックンロールのソングライティングの両方で、地球上のどんなミュージシャンとも肩を並べることができた。それに彼は何年間か、あらゆるギター雑誌の表紙を飾っていた。12カ月間に7、8回も表紙を飾っていたこともあった。王位への挑戦者がいなかったからだ。

息子とバンドの音楽を共有した時のこと

俺は1984年のツアーまで、彼のライブを見たことがなかった。当時は大学時代で、ギタリストにならなければという使命感に燃えていた時期だ。彼とバンドの力が最高潮に達している姿を生で見るために……俺やみんなが待ち望んでいた瞬間はギターソロで、一晩のうち15分間、ただひたすらその素晴らしさを伝えるだけのクリニックだった。彼はギターを魔法のように操り、数え切れないほどの革新的な技を繰り出し、そのすべてが呪文のように織り交ぜられていた。あれはクレイジーだった。彼はソロを弾く時、ただ一人でステージに立っていた。普段のコンサートだったら「OK、トイレ休憩の時間だ」って感じなんだけど、エディ・ヴァン・ヘイレンの場合はみんなの目が釘付けになっていた。俺たちの世代におけるモーツァルトが目の前にいることを誰もがわかっていたからだ。


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(2015年10月に)ハリウッド・ボウルで開催されたヴァン・ヘイレンの最終公演も観に行った。彼はすぐそこにいて、演奏能力もピークを迎えているように映った。ロックンロールとは何か、エレキギターとは何かを再定義した故郷LAの夜に、エディ・ヴァン・ヘイレンの素晴らしいプレイを見ることができたこと、新しいファンや彼のキャリアを追いかけてきた人々が彼に愛を示している光景は本当に素晴らしかった。

(エディの死は)心を打ち砕くような悲劇だ。俺の息子は9歳だけど、とても才能のあるエレキギター奏者なんだ。ちょうど一緒に座って、ヴァン・ヘイレンの最初のレコードのA面を通して演奏したところだった。俺がかつてラジオで知った「You Really Got Me」や「Running With the Devil」を、新しい世代が演奏している。それを聴いた時は最高だったよ。

息子と「Eruption」を聴いていたとき、あいつは「パパ、誰もこんなの弾けないよ」と言った。「そうか……」と俺は答えた。息子はこう続けた。「無理無理、絶対こんなの弾けないって」。
俺は言った。「お前の言うとおりだ。誰だってこんなふうに弾くことはできない」。

※聞き手:Patrick Doyle

From Rolling Stone US.

Myself & The E Street Band covering ”Jump” by Van Halen https://t.co/63Xd8hU6mp— Tom Morello (@tmorello) October 7, 2020
https://t.co/QjAj45KED8 Apex talent. An unparalleled titan in the annals of rock n roll. One of the greatest musicians in the history of mankind. Rest In Peace, King Edward— Tom Morello (@tmorello) October 6, 2020
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